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第四話 金の金唐革と真鍮の鍵

第四話 金の金唐革と真鍮の鍵


頭の芯が酷くずきずきと痛み、マリー・アントワネットは銀の盆に載った冷たい葡萄水を一気に煽った。六月の午後の陽光が離宮プチ・トリアノンの窓ガラスを白く焼き、庭園の小道には咲き始めたばかりの淡い黄色の百合が強い甘い香気を放っていたが、遊技室の空気は徹夜のカード遊びで落ちた蝋燭の煤と、貴婦人たちの強い白粉の匂いで淀んでいた。緑色のフェルトを張った机の上には、飲み残しの紅茶のカップが輪染みを作り、金貨や銀貨が乱雑に積み上げられたまま、昨晩の賭けの残骸として放置されている。祖父王ルイ十五世が天然痘で急逝し、夫がルイ十六世として戴冠してから数ヶ月が経ったが、戴冠式で頭上に戴いた重い冠の感触だけが残り、王妃としての役目である世継ぎの兆候など影も形もなかった。重苦しい宮廷の儀礼から逃れたい一心で、彼女は手元のトランプの角を指先で強く折り曲げ、向かいに座るポリニャック伯爵夫人に顔を向けた。


「昨夜のファラオの勝負は、私の負けが込みすぎましたわ。ウィーンにいた頃、兄のヨーゼフが庭の木登りで私に小石を賭けさせた時のことを思い出しますけれど、あの頃の賭け金は干し杏子ふたつでしたのに」

乾いた笑い声を漏らして言うと、薔薇色のリボンで飾られた髪を揺らしながら伯爵夫人が扇子を開いた。


「王妃陛下、ウィーンの杏子とヴェルサイユの金貨では重みが違いますわ。陛下が楽しんでおられるだけで、この離宮は生き生きと輝くのでございますから、帳面の赤字など大蔵卿に丸投げしておけばよろしいのです」

夫人はそう囁きながら、机の端にあった真鍮の小さな呼び鈴を鳴らし、召使いに新しいトランプの束と冷えたサクランボの砂糖漬けを運ばせた。


夕暮れ時になり、本宮殿の王の執務室を訪ねると、部屋の片隅には分解された大きな置き時計の歯車や金具が散乱し、強い機械油の臭いが立ち込めていた。机の上には、署名を待つ羊皮紙の山に混ざって、半分齧られた黒パンと干からびた羊のチーズの残りが油紙の上に転がっていた。ルイ十六世は、戴冠式で着た豪奢な金糸の礼服ではなく、肘に大きな継ぎ当ての当たった灰色の作業着を羽織り、右手の親指の爪を激しくカリカリと擦り合わせながら、細い鉄のやすりを動かしていた。国王となっても相変わらず油まみれで部屋に籠もる夫を見て、この男は王冠の重圧から逃げて趣味に逃げ込んでいるだけで、世継ぎが生まれない責任をすべて自分ひとりに背負わせているのだと彼女は頭に血が上り、床に落ちていた金属の破片を絹の靴の先で乱暴に蹴飛ばした。


「陛下、戴冠式からもう何ヶ月もお経ちになりましたのに、いつまでそうやって汚れた鉄屑ばかりをお触りになるのです。宮廷の誰もが、私の腹の中に次の王太子が宿るのを今か今かと待ち構えているというのに、あなたは一度も夜の寝室で私を抱こうともなさらない」

激しい怒りに任せて吐き捨てた叫びは、静まり返った石造りの執務室の壁に跳ね返り、書類を抱えて入ってきた初老の書記官の足をその場に縫い付けた。


ルイの手がぴたりと止まり、彼はやすりを机に置くと、赤黒く汚れた手のひらを自分の太もものズボンでゴシゴシと擦った。その右手首には、いつもの古い火傷の痕と、昨年の夏に作った擦り傷がくっきりと残り、黒い油染みで縁取られていた。感情の爆発に任せて夫の男性としての誇りを踏みにじるような言葉を口にしてしまったことに気づき、アントワネットは息を呑んで後退りしたが、一度放った言葉を引っ込める術を知らなかった。暖炉の煤けた煙突から吹き込む北風が、机の上の書類の端をパタパタと虚しくめくっていた。


「……戴冠式の油膏を頭に塗られた時から、僕の頭はずっと痛いんだ。教会のオルガンの音が、耳の奥でまだ鳴り止まない」

ルイはアントワネットの瞳を見ようともせず、ただ机の端に置かれた真鍮製の細長い鍵を指先でいじりながら、低く掠れた声で呟いた。


「オルガンの音など、もうとっくに消えておりますわ。陛下が向き合うべきなのは、教会の歌ではなく宮廷の貴族たちです」

彼女は冷たく言い放ったが、ルイは視線を落としたまま、真鍮の鍵の刻み目を指の腹で何度もなぞり続けた。


「教会の鍵は、古すぎて噛み合わせが悪かった。僕が少し削って油を差さなければ、戴冠式の朝に扉が開かないところだったんだ。……それから、プチ・トリアノンの遊技室の絨毯だが、ワインの染みがついているから、召使いに塩を揉み込ませて落とさせた方がいい」

ルイは作業台の引き出しから、かつてアントワネットの寝室に置き忘れていったあの真鍮の蝶番を取り出し、手垢で黒ずんだ表面を親指で撫でた。


夜が更けて自室の寝台に戻ると、豪華な黄金の刺繍が施されたカーテンが下ろされ、部屋の中には沈黙だけが横たわっていた。枕元の小机には、プチ・トリアノンから持ち帰らせた金の縁取りのあるトランプの束と、銀の小箱に入ったサクランボの砂糖漬けが置かれ、微かな甘酸っぱい匂いを漂わせていた。隣に入ってきたルイは、今日も何も語りかけることなく背を向け、ただ敷布の下で親指の爪をカリカリと擦り合わせる音を一定の間隔で響かせた。アントワネットは冷たくなった両手を胸の前で固く握りしめ、自分を縛り付ける王妃という名の重い見えない鎖の感触を噛み締めながら、暗闇の天井をじっと見つめ続けた。


「陛下、明日の朝も、早くから狩りにお出かけになるのですか」

暗がりへ向かってアントワネットが震える声で問いかけると、布団の擦れる衣擦れの音が微かに聞こえた。


「……明日は、鍛冶場で新しい南京錠の鍵穴を仕上げる。森へ行くのは、午後からだ」

ルイは寝返りを打つ気配もなく、ただ短くそう答えると、深く重い息を吐き出して暗闇の奥へと沈んでいった。


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