雑魚の戦法
小説を書いてみようと思い立ったので、AI先生に助けられながら書いてみました。
ほぼほぼ初心者なので、色々とおかしかったりする所は生暖かい目で見ていただけると助かります。
感想や評価をいただければ励みになりますので、よろしくお願いします。
奥の広間は、廃坑にしては天井が高い。
低い鳴き声の主は、一匹ではなかった。黒い犬ほどの小獣が、壁の影に七匹——いや、八匹。F級の雑魚だ。だが数は、質を補う。
「まとめて潰すぞ! 霊力全開!」
浜波が剣に光を纏う。目黒が杖を振り、短い衝撃を放つ。次藤は測定器を片手に横へ回り込み、索敵と遊撃の役だ。
「八体。右壁に二、影に三——!」
最初の二匹は、あっさり倒れる。霊力の刃が魔力の膜を割り、血ではなく黒い霧が散る。三人は息を合わせたつもりでいる。
三匹目で、光が薄くなる。
四匹目で、目黒の杖が遅れる。
「ちっ……まだいる」
「左、回り込み!」
次藤が短く叫ぶ。測定器の針が跳ね、短い刃に薄い霊力を纏わせて横槍を入れる。倒し切りではない。軌道を外し、浜波の死角を埋める役目だ。
霊力は無限ではない。Fの入り口を超えたばかりの身体が、連続放出で熱を持つ。浜波の肩が上下する。小獣は減っても、残った側が回り込みを覚えたように動く。
——押し切りだ。霊力を出して押し切る戦法だ。
『敵の全体を見ろ。脚の一歩目。肩の揺れ。跳ぶ前に、必ず予兆がある』
肩の師匠が、短い声で言う。
陸は後ろにいたまま、剣を低く構える。腹の奥から気の糸を指へ通す。溶かすな。途中で消すな。一点だけに置く。
右端の小獣が、踏み込む。前脚の爪が、床の砂を短く削る。
——今だ。
陸は踏み込まず、間合いだけを詰める。剣先を、喉の継ぎ目へ。糸を、そこだけに通す。
ズブッ。
魔力の膜が薄く割れ、小獣が崩れる。霊力の光は、一瞬も灯っていない。黒い霧が、剣先の周りにだけ散る。
「おい、ゼロが——」
浜波が振り返る隙に、別の一体が目黒の横へ跳ぶ。陸は半歩だけ横へずれ、予兆の二歩目を待つ。肩が上がる。跳ぶ。
剣先。一点。
キンッ——ズブッ。
また一匹。消耗は、指先の震えだけだ。霊力のタンクを空にしていない。気の糸は細いが、通るたびに少しだけ早い。
『雑魚の倒し方を覚えろ。魔力の強い場所は避けろ。薄い継ぎ目を探せ。跳ぶ前に間合いへ入り、一匹ずつ減らせ』
残った三匹が、同時に来ない。来られない。陸が、跳ぶ前の砂の音のほうへ先に立っている。
浜波が歯を噛む。光を再充填しようとするが、息が追いつかない。
「邪魔すんな、ゼロ! 俺らで——」
「後ろ、空いてます」
陸は短く言う。浜波の死角へ回り込む一体を、剣で止める。止めは刺突ではない。爪の軌道を外し、継ぎ目へ置く。三度目の沈み。
「反応、落ちてる。あと二——いや、一」
次藤の測定器が、小さく鳴る。彼女自身も脚を動かし続けている。索敵の目と、遊撃の刃が、まだ切れない。
最後の一匹は、目黒の杖が当たる前に崩れていた。陸の剣が、先に喉へ届いていたのだ。
広間が、急に静かになる。
砂埃と、薄い魔気だけが残る。浜波の剣の光は、もう灯っていない。目黒は膝に手をつき、次藤は測定器を握ったまま肩で息をする。遊撃のぶん、脚が熱いのだろう。
「……なんだ、今の」
「運、じゃねえだろ」
目黒の声が掠れる。さっきまでの笑い方は、残っていない。
陸は剣を下ろす。袖の裂傷が、血で少し重い。それでも、三人より呼吸は浅い。
——見せびらかしじゃない。急所に、気の糸を通しただけだ。
『及第点にはもう少し足りないな。だがな。霊力をぶちまける奴らより、息は長く持つぞ』
師匠が耳を引っ張る。痛い。陸は小さく息をつく。
浜波が陸を見る。敵意と、値踏みが混ざる目だ。
「お前……霊力、本当に0か」
「測定どおりです」
「なら、今のは何だ」
「急所です。魔力の薄いところに、剣を置いただけです」
嘘は言っていない。”気”の名前は理解されないので出さないし、今は目立っても良いことはなさそうだ。
次藤が、ようやく口を開く。
「……ログには、あなたの討伐が四、残ると思います。補助じゃ説明がつかないわ」
浜波が舌打ちする。否定はしない。否定できる根拠が、測定器にはないからだ。
奥の壁に、小さな魔核の結晶が露出している。F級の報酬だ。宝箱ほどではないが、初めての攻略印には足りる。
「分け前は、後で管理局の配分に従う。文句は言うなよ」
浜波がそう言って、先に結晶へ向かう。目黒は陸を見ないふりをして追う。次藤だけが、一度だけ頷いてから歩く。
陸は広間の入口で、剣に付いた黒い霧の残りを布で拭う。魔力の膜を割った感触が、指に残っている。入口付近で浅く通したときより、はっきりしている。
——気の糸は、実戦でも通った。
『次はもっと強い奴とやるぞ。雑魚で満足するなよ』
「分かっています」
浜波が結晶を袋にしまう。目黒が先に通路へ歩き出す。次藤が測定器を一度だけ入口側へ向け、頷く。
——帰路だ。まだゲートまでは、少しある。




