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測定不能のルーキー

小説を書いてみようと思い立ったので、AI先生に助けられながら書いてみました。

ほぼほぼ初心者なので、色々とおかしかったりする所は生暖かい目で見ていただけると助かります。

感想や評価をいただければ励みになりますので、よろしくお願いします。

申請から数日。怪我は、動けるところまで戻っている。


実技会場は、管理局併設の地下訓練区画だ。


魔気は薄い。それでも電子機器は簡素なものが多く、計測ランプだけが妙に新しい。壁には傷の修復跡が幾筋もある。ここも、かつてダンジョンだった穴を再利用しているらしい。


受験者は十人ほど。胸の仮登録番号が並ぶ。陸の番号だけが、赤スタンプ付きの紙切れのままだ。


『霊力測定値:0』


入口でもう一度測らされた。針は動かない。周囲の視線が、また同じ形になる。


「測定例外枠。真島陸」


呼び出しがある。試験官は四十前後の男で、胸のバッジはEだ。


「試験官の遠野だ。Eランク。今日の実技を担当する」


声は低く、事務的だ。感情を乗せていない。


「ルールは簡単だ。俺から攻撃するので、三分耐えろ。流すなり、弾くなり、返すなりしろ。攻撃してもいい。数値は見ねえ。合格は、現場に出せて生き残れる見込みがあるかどうかだ」


試験官——遠野の視線が、陸の固定帯の痕——もう外しているが、まだ白い——に落ちる。


「霊力0での申請は、記録上お前が初めてだ。例外枠自体は前からあるが、通すケースは極稀だ。だがゼロは、俺も初だ」


遠野が、短く息を吸う。


「手加減はしねえぞ。霊力攻撃だから、怪我はするし、運が悪けりゃ、命に関わる。——それでも受けるか」


「……受けます」


『腹から気の糸を通せ。流せ。試験官を倒す必要はねえ。合格点は最小でいい』


肩の師匠が、短い声で言い放つ。誰も見ない。見えないまま、耳の奥だけが熱い。


開始の笛が鳴る。


遠野の掌が光る。霊力が纏う。Fの入り口を超えた力が、短い直線で飛んでくる。弾をイメージした衝撃波だ。清掃現場では見たことがないが、測定器の針が跳ねる音は知っている。


陸は踏み込まない。かといって、後ろへも逃げない。腹の奥——師匠が『気』と呼ぶ、測れない感触——から、細い糸を肩へ通す。衝撃を正面で止めず、肩越しに流すための道だ。


——溶けるな。糸よ、途中で消えるな。


昨夜までの失敗が、指先で疼く。それでも、糸は途中まで残る。衝撃が胸に来る直前、陸は半身を開き、糸を皮膚の外側へ滑らせる。


受け止めるのではない。流す。


ズンッ。


衝撃が鎖骨の外を擦り、壁の修復跡へ当たる。砂が落ちる。陸の足は残っている。膝が、一度だけ震える。


「……ん?」


遠野の眉が動く。次は足払いに似た低い波。陸は重心を落とし、また流す。痛みはある。折れはない。


観客席——というより見学柵——で、誰かが舌打ちする。


「当たってねえのか?」


「ゼロが、Eの初撃を——」


遠野が間合いを詰める。今度は手が近い。霊力を纏った拳だ。弾くつもりなら、ここで終わる。


『一点。拳の関節——薄いところだ。試験官を倒すな。手は寸で止めろ』


陸はパイプの感触を思い出す。資材置き場の夜は、糸が途中で溶けた。鱗に刃が通った夜の感触だけが、指に残っている。


腹から指へ、糸を一本だけ通す。散らさない。


拳が来る。陸は掌で合わせず、指先で関節の窪みを弾く。


コツッ。


小さな音だ。遠野の腕が一瞬だけ軌道を外れる。霊力の光が散る。倒れてはいない。だが次の一撃が、半拍遅れる。


笛が鳴る。三分経過。


遠野は腕を回し、吐息を一つ置いた。


「……合格」


ざわめきが起きる。測定器を持った補助員が、もう一度陸に当てる。針は0のまま。


「数値は測定不能——いや、0。実技は通過とする。規定上は“実技優先枠”で処理する」


遠野が陸を見る。敵意ではない。計算だ。


「お前、新宿のB級の現場にいたな。あの時の清掃員だよな」


「はい。いました」


「公式には、関係ない言われている。俺もそう思う。だが——ゼロが、今の受け流しをした。記録には残るぞ。測定不能のルーキー、としてな」


カードが渡される。薄い。まだ仮の光沢だ。国家ライセンス・F。ギルド登録の本手続きへ進める証。


『ふん。ギリギリ及第点だな。まだまだだ』


師匠が欠伸をする。


「……まだまだ、ですか」


『次は実践だ。試験とダンジョンのモンスターは別物だ。気を抜いたら死ぬぞ』


陸はカードを握り、気を引き締めた。


見学柵の向こうで、申請窓口で笑ったジャケットの男が口を開けている。笑い声は、出ない。


——数値の土俵に、乗った。


だが、まだ乗っただけで実績がない。倒したB級の手柄は自分のものではないのだ。


それでも陸は、初めて、公の紙に自分の名前が戦力として載る感触を知った。


出口で、通知端末が短い音を立てる。F級枠の初回依頼候補が、すでに三件、仮で並んでいる。


『何でもいいからさっさと選べ』


「分かっています」


新宿の地下を上がる。地上の光が、カードの縁で白い。


霊力は、まだ0だ。


——それでも、F級ライセンスは手に入れた。

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