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辞表と申請

小説を書いてみようと思い立ったので、AI先生に助けられながら書いてみました。

ほぼほぼ初心者なので、色々とおかしかったりする所は生暖かい目で見ていただけると助かります。

感想や評価をいただければ励みになりますので、よろしくお願いします。

翌朝。


コンビニのコピー機の前で、スタートのボタンが点いている。


用紙には氏名、所属、退職希望日。理由欄は『一身上の都合』だ。本当の都合は、用紙に載らない。


——残るか。


残っても、空欄のままだ。


陸はボタンを押す。熱い紙が一枚、出てくる。


アスモ・クリーンの事務所で、班長がそれを受け取る。一枚見ただけで、班長の目が先に細くなる。


「……本気か?」


「はい」


「怪我はまだ治ってないだろ。現場に戻るまで待てば——」


「……すみません。自分のやりたいことを、一度ちゃんと試したいんです」


陸は固定帯の腕を下ろす。掌の皮は、昨夜の素振りでまた割れている。


班長は煙を吸う真似だけして、吸わない。ここは禁煙の事務所だからだ。


「管理局がまだ嗅ぎまわっている。辞めても、厄介事は消えんぞ」


「分かってます」


「この後何するか決まっているのか?」


「ライセンスの申請します」


沈黙が落ちる。隣の席の同僚が、キーボードの音を止める。


班長が笑った。笑うというより、息が漏れた。


「霊力0で、国家ライセンスか。……馬鹿かお前は」


「自分でも馬鹿だと思います」


——それでも、辞めるより、強くなるほうを選んだ。


『いい返事だ、弟子』


肩の師匠が満足げに尻尾を振る。


班長は辞表を机に置き、印鑑を探した。見つかると、どすんと押す。


「川瀬には俺から言う。お前は川瀬のとこへ顔を出せ。黙って消えるなよ」


「……分かりました」


出口で、川瀬が立っていた。聞きつけた顔だ。缶コーヒーは、今日は持っていない。


「陸さん——」


「元気でな。妹さんを大切にしろよ」


「はい。……陸さんも、気をつけてください」


陸は頷いて、事務所を出る。新宿の昼が、白い。


ダンジョン管理局・新宿分室の申請窓口は、聴取室より人が多い。


ライセンス希望者の列。ギルド登録の下調べ。測定器のランプが、次々と青や緑に点く。


陸の番が来た。


「国家ライセンス申請。新規。氏名と年齢」


「真島陸。22」


窓口の女性が用紙を差し出す。隣に、ギルド連携の端末がある。申請は管理局、登録はギルド——手続きが霊力測定と実技の二段階だということは、前に調べた。


測定器が来る。冷たい。


針は、動かない。


『霊力測定値:0』


女性の眉が、一度だけ寄る。


「……機械の不調では」


「何度測っても同じです」


列の後ろで、誰かが笑った。


「0ってマジか。一般以下じゃねえか」


「清掃屋が間違えて並んでんだろ」


「Fの入り口が1000だぞ。ゼロで何すんだよ。祈りか?」


笑い声が、短い波になる。窓口の女性は止めない。止める義務はないからだ。


陸は爪を掌に食い込ませる。


『数値で戦う奴らの土俵だ。お前は気にするな』


師匠の声だけが、頭蓋の内側で響く。


「申請は受け付けます。ただし、測定値が基準に満たない場合、実技審査は別紙の通りです。不合格が続きますと、再申請まで冷却期間が入るのでご注意下さい。審査を受けますか?」


「はい。受けます」


「……本気ですか」


「はい。本気です」


女性はため息を一つだけ置いて、印を押した。用紙の端に『測定例外・要実技』の赤スタンプが落ちる。


端末が、ギルド側の仮登録番号を吐き出す。薄い紙切れだ。まだライセンスではない。入口の整理券に近い。


「実技の日程は通知します。それまで、無免許での攻略は違法です。清掃の経験は——」


「あります」


「戦力としては、計上しません」


——知ってる。


陸は紙切れを折って、ポケットに入れる。列の後ろで、まだ誰かが笑っている。


出口の自動ドアが開く前に、師匠が耳を引っ張った。


『嗤わせておけ。お前はもう、入り口に立ってる』


「はい。実技も頑張ります」


『上等だ。明日も修行の続きだ。実技なんかで弾かれるようなヤワな鍛え方はしないからな』


「鬼がいる——」


『猿だけどな』


「……冗談も言えたんですね」


外の光が、陸の傷に触れる。数字は0のまま。辞表は受理され、申請は赤スタンプ付きで通った。


嘲笑の波は、背中に残る。


——それでも、土俵には乗った。


陸は新宿の雑踏へ歩き出す。次は実技だ。測れない気を、測れる奴らの前で、結果に変えなければと気を引き締める。

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