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第15話 正しい請求にも、代償はあります

麦穂月の二十二日、私はアーデン家とレーヴェン家へ正式な清算請求書を送った。


立替金、無断流用された亡母資産、閲覧を拒否された帳簿の保全要求。感情ではなく、項目と期限と根拠を並べた。


数日後、アーデン家の家令アルノーが訪ねてきた。


「このままでは支払いが止まります。どうか、以前のように業者への延期交渉を」


「正規の契約と前金がない依頼は受けません」


「家が倒れれば、若様だけでは済みません。厨房の娘も、馬丁も、帳場の見習いも職を失います」


その言葉だけは、切り捨てられなかった。


アーデン家を支える義務はない。だが、私の請求によって最初に困るのは、私を搾取した当人ではなく、支払いの遅れた使用人かもしれない。


「請求を取り下げることはできません」


家令の肩が落ちる。


「ただし、未払い賃金は私の債権より先に保全するよう、王都労務組合へ申立書を出します。転職を望む使用人には、私の取引先の求人を知らせます。アーデン家の資金繰りは直しません。そこで働く個人が、家と一緒に沈む必要もないからです」


アルノーは長く黙り、深く頭を下げた。


二日後、彼自身は職を失った。ヴィクトルが「クロエへ内情を漏らした」と決めつけて解雇したのだ。厨房見習いのリタも、賃金を一月分残したまま放り出された。


私はエルザの工房へ二人を紹介した。リタは仮採用になったが、アルノーに合う席はすぐには見つからない。


正当な線を引けば、すべてがきれいに収まるわけではなかった。


「請求を止めれば、彼らは職を失わなかったでしょうか」


私が問うと、ゼノスは少し考えた。


「以前の、屋敷を逆さにする案とは違う。オスカーに確認した。未払い賃金を先に保全し、債務者へ異議申立ての期間を置いた上で、我が残債を執行する。手順も選択肢も、人間の法にある」


私は反射的に却下できなかった。合法で、使用人を守れ、父たちを確実に追い詰める。以前の「屋敷を逆さにする」より、ずっと人間社会を学んだ案だった。


「……異議を申し立てられても、資金も期限も握るのはあなたです。書面上の選択肢だけを残して、結論を一つに絞ることになります」


「法に従ってもか」


「合法であることと、正しいことは同じではありません。私が債権を握って選択を奪えば、力の種類が変わるだけです」


ゼノスは不満そうに眉を寄せたが、やがて頷いた。


「難しいな。人間の倫理は、法より細い」


「だから記録だけでなく、人を見る必要があるのでしょう」


私は請求を維持した。元使用人への支援は、対象と上限を決めた一度限りにした。誰も無傷にはできない。だからこそ、自分が負わせる痛みの範囲を見ないふりはしない。


その夜、父バルドがタウンハウスの扉を殴るように叩いた。


「クロエ! 家族を破産させるつもりか!」


私は未払い賃金の申立書を閉じ、立ち上がった。


今度は、正論を言えば終わる相手ではない。

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