愛すべき宇宙人(2)
知的生命体フィデリスが地球に来訪した。
恒星間航行どころか、銀河間航行すら可能な彼らは、地球よりはるかに進んだ高度技術を持っていた。
しかし彼らの正体とは。
今回の課題:SF風画風で描く。
画風では「日常服騒動」と同じ。
こちらを先に作成していたが、画風を変えただけで特別なことはしていないので掲載は後回しにしました。
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小説本文
報告会を終えたシンジは、自らの研究室に向かう。
彼も調査会の一員ではあるが、自らの研究もある。
彼の研究は、フィデリスの動力機構を地球で製造可能な物質で再現することだ。
フィデリスと地球とでは、厳密な意味での、同じ物質、は存在しない。高出力な機構ほど、ほぼ同じ、では済まされないのだ。
シンジが研究室の前に立つと、センサーがその動きを察知して、入室しようとしていると判断、すぐに顔認証が行われ扉が自動で開く。
「シンジさん、おはようございます」
フィデリス人のミディが出迎える。
すでに午後に差し掛かっているが、職場で顔を合わせたときには何時だろうと「おはようございます」というのだという、シンジの言葉を忠実に守っている。
フィデリス人は、収斂進化により地球人に酷似していた。
サメ(魚類)とイルカ(哺乳類)のようなものだ。
もっともサメとイルカが一目で別の生物とわかるように、フィデリス人も地球人と一目で違いが分かる。
黒目しかない目。血が通っていないかのような白い肌。
それが彼女を、地球人ではない。と示している。
彼女は、俺の助手としてフィデリスから派遣された科学者だ。
高高度技術を持つ側が、助手を派遣する。その善良さがフィデリスなのだ。
「おはよう。ミディ。シミュレーションの結果はどうかな?」
「100時間の連続稼働の結果、損耗が基準値より30%増加します。やはり地球の物質で同じ機構をそのまま製造すると、耐久性に問題がありますね」
「ふむ。とはいえ、耐久性を犠牲にすると事故にもつながりかねない。リミッターをかけて出力を犠牲にするか」
「そうですね。なら、出力を30%下げますか?」
「いや、消耗が30%だから、出力を30%下げれば良いというものじゃないよ。シミュレーションを5台並行実行して、それぞれ5%づつ下げてみよう」
「わかりました」
技術は彼らが上。しかし応用力においては地球人が上なのだ。
ミディは、俺の指示通りシミュレーションにデータを入力していく。
手袋をした指がリズミカルにキーボードをたたく。
単純な命令なら音声で指示するが、細かい数値入力は、やはりアナログが確実だ。
そして、彼女の手袋は、実は避妊具だ。
フィデリスに欲望はない。もちろん、性欲もだ。
彼らの生殖は、なんと、手と手を触れあうことで行われる。手のひらと手のひらとを合わせることで、生殖が行われるのだ。
一瞬での接触で妊娠するわけではないが、万一ということがある。
「ずいぶんとお昼も過ぎてしまったな。昼食にしよう。お腹が減って、お腹と背中がくっつきそうだよ」
ミディが緊張した面持ちで端末を操作する。
「わかりました。緊急手術の手配をします」
「え? なんで!?」
「腹部と背中がくっつくなど尋常ではありません。手術が必要です」
彼女の表情は真剣だ。
俺は慌てて訂正する。
「いや、比喩だよ比喩。前にも言っただろ。これは、とてもお腹が減っている。というのを表現する比喩なんだ」
「安心しました。シンジさんのお腹は大丈夫なんですね」
「でも、比喩というものがたくさんあるんですね」
「そうだね。前に、目に鱗が入ってたら大変だと、眼科を予約してくれたね」
なんて純粋なのか。
俺はミディを愛していた。こんなにかわいい生き物を愛さずにはいられるものか。
俺は兼ねてより計画していたことを実行する決意を固めた。
後ろめたさを感じつつも口を開く。
「ミディ。俺と結婚してくれないか?」
「結婚? 地球の制度ですよね? それを私とですか?」
「ああ、君と僕とでだ」
「結婚するとどうなるのでしょうか?」
「いつも一緒にいるということだよ」
「あ、それでしたら今と同じですね。良いですよ」
成功である。
いや、分かっていたんだ。
彼女が断るはずがないと。
しかし、フィデリス人との結婚となると障害も多いだろう。
フィデリスとの結婚など認められるのかと上司に相談すると意外な答えだった。
「実は、君以外にもフィデリスと結婚したいという男女が沢山いてね。法整備を進めようという話が出ているんだよ。彼らに地球の戸籍を発行すれば、法改正の必要もないという意見もあるがね」
なるほど。確かに彼らと接して入れば、彼らを愛さずにはいられない者も多いだろ。
意外なほど結婚は順調に進んだ。暫定的にミディに地球の戸籍が発行されたのだ。
戸籍があるなら、婚姻届けを出すだけである。
そして一緒に住むことになったのだが、彼女はそれを理解していなかった。
「いつも一緒というのは、住む場所も一緒という意味だったのですね。理解していませんでした」
「もしかして、いやだった?」
「え? いやじゃないですよ。知らなかっただけです」
「よかった。嬉しいよ」
こうしてミディとの新婚生活が始まったのだが、こう順調だと欲も出てくる。
俺は、気持ちをミディに打ち明けた。
「子供……ですか?」
「そうだ。君と僕との子供が欲しい」
意を決して打ち明けた俺に、ミディはこともなげに言う。
「わかりました。子供を作りましょう」
「ほ、本当か!」
俺は、喜びに打ち震えた。




