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すてぃーるわーるど  作者: 流海 灯


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16/17

透明画伯 

 そのまま残るというルナと分かれて私達は別の場所を見ることにした。

 あの後、フィリアの演奏を聴いてテンションがとんでもないことになってしまったウル先輩の勧誘を一刀両断したフィリアに、先輩が縋り付くという新たな事件が発生したけど、なんとかルナが収めてくれたので、無事に出発することができた。



「次はどこに行こうか、フィリアはどこか行きたい場所はある?」



 特に思いつかないので隣をすいすいと歩くフィリアに聞いてみる。



「ボクは特に無いかな、リーゼの行きたい場所についていくよ。決まってないなら適当にぶらついて気になった所に入ってみよう。」



 フィリアの言う通り取り敢えず色々眺めながら歩いてみる。

 ふと、他の場所よりもしっかりと囲われたブースが目にとまった。入り口がカーテンで遮られており、中の様子を見ることはできない。ブースの入り口には『似顔絵描きます』と、デフォルメされたカメレオンが描いてある看板がある。その文言と可愛らしい看板に釣られて話を聞こうと思い、フィリアの方を見ると頷いたので、入ってみることにした。



「いらっしゃい、二人とも入部希望かな?」


「あ、いえまだ見て回ってる段階で決めてないんですけど、似顔絵を描いてくれるって書いてあったので気になって。」


「なるほどね、ちょうど良かったよ。閑古鳥が鳴いててウチの画伯も暇していたんだ、中に入ってよ。」



 私達を出迎えてくれたのは爽やかな青年だった。軽快な口調で歓迎してくれて、中に案内される。

 中に入るとすぐにいくつかの椅子が並んで置いてあり、その先に向かい合う様にして一組置いてある。向かい合う椅子の片方の横には小さな机が設置されていて、その上には鉛筆とスケッチブックが置いてある。が、椅子には誰座っていなかった。


 ウチの画伯が暇している、と言っていたからてっきり似顔絵を描いてくれる人が中にいるのだと思っていたんだけど、席を外しているのかな?

 すると案内してくれた男子生徒が呆れながら口を開いた。



「あれ?エリーってばまた居なくなっちゃった?せっかく見学希望の人が来てくれたのに。」



 そう言って懐から何か袋を取り出す男子生徒、ソレをカサカサと振って再び声をかける。



「エリー?エリーの好きな焼き菓子があるんだけど、出てこないなら食べちゃうよー?」



 カサカサと振り続けていると、その音と甘い香りに釣られたのか、何やら部屋の片隅が揺らいだ気がした。目を凝らすと段々と人型のシルエットが浮かび上がってくる。

 男子生徒がズンズンと歩いていって人型の揺らぎの腕を掴んだ。



「はい、捕まえた。エリー、ダメでしょ?せっかくこの美術クラブに興味を持ってくれた人が来てくれたんだから、隠れたりしないの。」



 そのシルエットは男子生徒に捕まってなお透明人間のままだ。目を凝らしていないと見失ってしまいそうになる。



「ごめんね、二人とも。エリーは恥ずかしがり屋で、昔から僕以外の人の前だとあまり姿を現さないんだ。学園に入って少しは改善するかと思ったんだけどね。」



 あまり成果は思わしくないと言うことかな。



「うーんどうしようか……え、なんだい?……うんうん、なる程わかったよ。」



 何やら男子生徒に耳打ちをしたらしい。男子生徒がエリーさんの言葉を翻訳する。



「二人には申し訳無いんだけどこのまま似顔絵を描かせてもらっていいかな?さっきも言った通りエリーは人見知りで姿を見せるとなると似顔絵どころじゃないんだ。だから透明なままで描かせて欲しい、絵の出来栄えは僕が保証するよ。」



 勿論こちらとしては描いてもらう側なのだから文句などあるはずもない。それに本人が嫌がっているのに強制なんて出来るわけ無いしね。



「ありがとう、助かるよ。じゃあエリー頑張ってね…え、側にいてほしいって?僕はこれから来るかもしれない人たちの対応をしないと行けないんだけど……あぁ、ごめんごめん一緒に居てあげるから泣かないで、迷彩が解けちゃうよ。」



 透明な揺らぎの目らしき場所に涙が溜まっていく。男子生徒がハンカチで拭きながら宥めだした。

 

 ふと隣に目を向けると、先程まで何も着けていなかったフィリアの目にぐるぐる模様が入ったレンズの眼鏡を掛けられていた。その眼鏡、前見えてるの?


 こちらからはフィリアの目は見えないし、とても眼鏡としての役割を果たせているようには見えないんだけど。むしろ目隠しじゃない?



「フィリア、なにその眼鏡。」


「ん、ああこれ?これは結構前に手に入れたお宝だよ。何でも月から襲来する透明人に対抗する為に古代文明が生み出した品物らしくてね、あの子も透明なら見えるかなって思ってかけてみたんだ。」



 どうやらエリーさんを見るためにかけたらしい。一応私にも輪郭みたいなのは見えてるけど、あの眼鏡をかければちゃんと見えるんだろうか。



「それちゃんと見えてるの?」


「うーん、まあ一応見えてはいるね。リーゼもかけてみなよ。」



 そう言ってフィリアは懐からもう一つ眼鏡を取り出して私に渡してきた。まだあったんだ……

 かけてみると視界が緑色に支配され、人が赤く強調されて見えた。エリーさん達のほうを見ると、確かに二人いることはわかる。けど赤やオレンジで構成されているからかけていない時とほとんど変わらないし、むしろ他が見えにくくなる分マイナスかも。



「ありがとう、でもこれならかけないほうがいいかも。」



 お礼を言ってから、眼鏡を外してフィリアに返す。フィリアも見えにくいと思ったのか眼鏡を外した。


 そうこうしている内にエリーさんが立ち直ったみたいで、一人ずつ向かい合った椅子に座るように促された。


怪盗少女「(*@ω@)ゞクイッ✧」

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