初めての楽器演奏
不定期で申し訳ない、これからも気分次第投稿予定。
ウル先輩の指示でそれぞれが用意された琴の前に座る。琴は二つなので、初めは誰かが見学になる。
「最初はルナがお手本を見せてあげるのが良いんじゃないかしら?二人のうち片方は見学してもらうことになるけれど、時間はあるし後で交代すればいいわ。」
「ボクは見てるからリーゼが先でいいよ。」
フィリアがそう言ってくれたので、その言葉に甘えて先に座る。ルナの真似をして正座で座ったけど、クッションがあったのでそれ程痛くない。
「まずはこの爪を親指、人差し指、中指に嵌めるの。この爪で弦を優しく撫でるように弾くの、あまり力を入れすぎないようにリラックスしてね。」
隣に座るルナがゆっくりと動作が私に見えるように弦を撫でるように指を動かした。小さなブースに優しい音が響く。
緊張しつつも、見様見真似で指を動かすとツン、トン、と少し乾いた音が鳴った。まだ音を鳴らしただけだけど、初めて楽器で音を奏でられたのが嬉しくて思わず笑顔が溢れる。
するとウル先輩が紙を渡してきた。数字がたくさん書かれているけれど、もしかしてこれは楽譜かな?
「はい、これが初心者用の楽譜よ。弦には数字が割り振られていて、この楽譜と対応しているの。まずは最初の六つの音を弾いてみましょう、ココとココの弦を順番に弾いてみて。」
ウル先輩に指さした弦を先程と同じ様に優しく爪で撫でる。すると、とても短いけれどメロディーが奏でられた。そのまま続きの楽譜もウル先輩に指導されながらゆっくりと弾いていく。
すると横からも音が聞こえてくる、一瞬横を見るとルナが演奏しているのが見えた。どうやらルナは私とは違う楽譜で演奏しているみたいで、私よりもずっと多くの音を奏でている。でも私の音と喧嘩せずに一つの曲として調和していた。
自分が音楽を演奏できているのが楽しくて夢中になって弾いていく。いつの間にか世界が私とルナと二人だけになってしまったみたいに外の雑音は耳に入らなくなり、演奏は続く。
楽譜の最後まで弾き切ると、ようやくガヤガヤとした雑音が聞こえてきた。それほど長い時間では無かったはずなのに久しぶりに帰ってきたかのような感覚に陥る。
「素晴らしい演奏だったわ、初めてとは思えないくらい楽しそうに弾いていたし、リーゼさんの気持ちが良く込められている音だったわね。ねえ、リーゼさん、正式にこのクラブに入らない?貴女の情熱的な演奏、私気に入ってしまったわ。是非一緒に琴を弾きたいのだけれど、どうかしら?」
ウル先輩は小さく拍手をしながら少し興奮気味にこちらに問いかけてきた。こんなに褒められたら二つ返事で入りたくなるけど、生憎他にも見てみたいクラブが多いからどうしようかな。
「ウルペル姉様、リーゼは他にも一通り見てみたいと言っていたのだからあまり困らせないであげて。でも私もリーゼの演奏はとっても好きだから、もし色々見てみて、それでもココが良ければ一緒に入ってくれると嬉しいわ。」
二人から誘われてますます嬉しくなってしまう。でもやっぱり色々見てから決めたいから一旦保留と言うことにしてもらった。
「じゃあ次はフィリアの番だね、はいどうぞ。」
そう言って立ち上がると、フィリアに場所を譲る。フィリアは琴の前に座ると爪を着けた。
琴が大きいのも相まってフィリアがより小さく見える。しかもフィリアの座ってる姿がちょこんとしていてなんだか無性に可愛い。
フィリアは準備を終えると懐から何やらゴソゴソと数枚の紙を取り出した。
あれは…楽譜?
取り出した楽譜らしき紙を広げると、一切の迷いなく演奏を始める。教えようとしたウル先輩とルナは置いてけぼりになっている。
フィリアが演奏を始めた途端、流れ出したのは先程私達が演奏した静かな雰囲気の曲とは真逆の明るくポップな音楽。
これ、最近有名な歌手が歌ってる曲じゃない?たしか四人組くらいで若者に人気って言う…いや、私も風の噂で聞いただけだけど。
圧倒されている私達を置いて、曲はどんどん勢いを増していく。フィリアの演奏はとてつもなく上手く、聴いているだけで思わず身体が動くようだった。
凄く上手い、凄く上手いんだけど選曲ソレ?!
いや、実際どんな曲を演奏しても良いんだろうけど、なんとなくあえて琴とは対極にありそうな感じの曲をチョイスしている気がする。
アップテンポの曲はサビに入って、最高潮を迎えた。ルナとウル先輩はもう開き直って手拍子しだしちゃったし、私も考えるのはやめて楽しんだほうが良いかな?
いつの間にかブースの周りには私達以外の観客も集まっており、一種のライブ会場のようになっていた。
フィリアが演奏しながらも時折観客を見上げると、練習していたのかと思うくらい綺麗な合いの手が入る。
なんだか私も楽しくなっちゃって、途中からすっかり観客の一部になっていた。
♪♪♪♪♪♪♪♪♪♪
やがて演奏が終わると、拍手喝采が巻き起こる。フィリアは手を挙げて応えていて、最後に優雅にお辞儀をして突発演奏会は終わりを迎えた。
アンコールしてる人までいるし…いや、アンコールしてるのウル先輩だった。
そんなウル先輩を宥めるルナを見て、確かに終わっちゃってちょっと残念だな、と思うのだった。
怪盗少女「やっぱ音楽は自由が一番だよね。」
リーゼ「そうだけど自由すぎない?」




