第8話 正義とは
~~~ 裏路地 ~~~~~~~~~~
相手は4人。
4人とも刃渡り10cmほどの刃物を持って構えている。
戦闘態勢だ。
対して風雷と沙樹は丸腰。武器を所持してない。
圧倒的に風雷が不利に思えるのだが。
風雷(くっそ。
4人まとめて殺すのが手っ取り早い。
沙樹が見てる手前、それはできんな。
そもそも役人が来たら面倒だ。)
役人は、治安の見回りや犯罪人を引っ捕らえる
役割を果たす。
風雷にとって戦う条件が非常に厳しい。
まづ第一に、刃物で切られる訳にはいかない。
傷口が瞬時に回復してしまうためだ。
少なくとも沙樹殿には知られたくない。
そして彼女を守りながら戦う必要がある。
幸いなことに、風雷は近接格闘術、剣術の心得がある。
武器を持たなくとも何ら問題はない。
風雷の能力は、刺されても傷口は瞬時に回復でき、
尋常でない腕力の持ち主であるため
一見無敵のように思える。
だが、過去の戦で弱点を見破られ12人の同士が
いとも簡単に殺された事実がある。
なので目の前の連中が雑魚とは言え、油断はできない。
風雷 「沙樹殿。この場から離れろ!」
沙樹 「いや。でも。風雷様が。」(.. )
鮫坂2「逃がすかよ。」( ^^)
風雷と沙樹は、地面をこする様にして
ゆっくりと後退りする。
沙樹は沙樹で悩む。
沙樹(逃げてはいけない。
このままだと風雷様が殺されてしまう。)
逃げるべきか、交渉を続けるべきか。
そもそもこうなってしまったのは自分の責任。
自分がなんとかしたいと模索する。
風雷 「沙樹殿!」(--#)
沙樹 「・・・」
風雷の怒鳴り声で、沙樹は決心する。
言われた通り、無心で後ろに走り出す。
風雷もまた沙樹同様、一歩大きく下がり
逃げようと上半身を反転させる。
鮫坂2「待てよ!」
鮫坂2は風雷を逃がすまいと足を1歩踏み出し、
彼の背中へ剣先を突き出す。
これは逃げると見せかけた風雷のフェイントであった。
風雷は体勢を低くしながら半回転ではなく1回転し、
回し蹴りを入れたのだ。
風雷の蹴りが鮫坂2の足首を捕らえた。
♪パキ
どこかの骨が折れたようである。
体勢を崩し倒れることに。
鮫坂2「ああああぁぁぁぁ。」
鮫坂2はあまりの激痛に、刃物を手放し
両手で足首を押さえる。
鮫坂3、4、5は動揺する。
風雷はその瞬間を見逃さなかった。
素早く立ち上がると、横並びの鮫坂3、4と
目を合わせ、2人同時に顔面へ蹴りを食らわそうと
フェイントを入れる。
鮫坂3、4はどの動作につられ顔面を両腕で防御する。
フェイントは成功、鮫坂3の腹へ拳をめり込ませる。
鮫坂3「うっ。」
腹を抱えて地面へと転がる。
その隙に、鮫坂4の手首に手刀を入れると
持っていた刃物が吹き飛ぶ。
鮫坂4は自分の腕を確認すると、手首が人とは思えない
角度に曲がっていた。
鮫坂4「あぁ。」
手首を押さえ、地面へと膝から崩れて行く。
残るは1人。後ろに控える男と目が合う。
鮫坂5は、この光景を目にして背筋に悪寒が走り
後ろへと逃げ出しすことに。
沙樹はというと無我夢中で走る。
とにかく前だけを見て走る。
だけど風雷のことが気になる。
悲痛とも取れる2人の叫び声がこだまする。
沙樹は立ち止まり、振り向く。
ただ1人、立ち尽くす風雷の姿があった。
その周りに4人が倒れてる。
1人は走り去っているところだった。
風雷は薬箱を手に取り、沙樹の元へ。
沙樹「お怪我は?」
風雷「ご覧の通りなんともない。」
沙樹「でも、その腕の傷は?」
風雷自身すっかり忘れていた。
腕に布を巻いていたことを。
風雷「ああ。幸いにも傷口が浅かった。
大丈夫。心配はいらん。」
沙樹「それなら安心ですが。」(--?)
風雷「本当だ。医者の私が言うんだ信じろ。」
沙樹「分かりました。」
風雷「急いでこの場を離れるぞ。」
沙樹「彼らをぽっておけません。」
風雷はあきれる。
先ほどまで殺されかけていたというのに、
この人はいったいどこまで
お人好しのなのだろうと。
風雷「仲間を呼んで来るだろう。
その前に退散するぞ。」
沙樹「分かました。」
2人は帰りながら会話する。
沙樹は改めて自分が自己中心的で
何も考えずに行動してると痛感する。
自分だけならともかく、周りに迷惑を掛けてると
思うと自然と涙が溢れ出て来た。
沙樹「ごめんなさい。」(T_T)
風雷「謝らんでいい。
沙樹殿の考えは間違ってなどおらん。
ご自分の道を信じなさい。」
これは風雷の本心である。
沙樹は外見だけでなく、性格も優紀乃に似ていた。
だから沙樹の行動が痛いほど理解できたのである。
沙樹「わたくし、周りに迷惑を掛けっぱなしです。」
風雷「確かに今回はな。
だが、それ以上に多くの人が救われたのだろう。
私には分かる。
沙樹殿は町の連中に愛されているからな。
だからそのままでいい。」
沙樹「うーー。」(T_T)
~~~ 桐生庭:応接室 ~~~~~~~~~~
武田家頭首が退散後、片腕の時谷と
その下部である生口が応接室しつに呼ばれ、
武田家の処遇について議論を始めた。
生口「私は断固反対を表明する。
武田家がうちに加わりでもしたら相馬と戦になる。」
時谷「それは大げさな。
いくら何でも畠山藩が止めに入るのでは?」
尚隆頭首「揉めることは間違いないだろうな。」
時谷「もし、ことが相馬の耳に入れば
武田家として立場が無くなる。
どの道、我が領に来るしかないかと。」
尚隆頭首「同感だ。話を持ち掛けた時点で、
結果は必然なのだろう。」
生口「遅くない。ここは断るべき。
治安が悪いのもご存じであろう。
相馬による嫌がらせが更に増すかと。」
尚隆頭首「それは真か?
これらの騒動は相馬の仕業と。」
時谷「あり得る。」
尚隆頭首「証拠はあるのか?」
時谷「騒動を起こしてる輩は鮫坂組の
輩と聞く。
相馬が金をばらまいてる可能性は高い。」
尚隆頭首「可能性で話しをするのは危険だ。
これこそ相馬の耳に入れば大事となる。」
生口「頭首の発言は正しい。
築き上げた相馬との関係が悪くなる。」
尚隆頭首「治安も何とかする必要がある。」
時谷「畠山藩に見回りの強化を依頼されては?」
尚隆頭首「なるほど金を納めれば出来そうな話だ。」
生口「どうでしょう。役人を当てにできますかね。」
時谷「一理ある。
言っては悪いが、仕事は適当、
金でどちらにでも味方に付く。」
尚隆頭首「まあまぁ、そう言うではない。
役人の中にも正義はおる。
武田家も含め、畠山藩に相談してみる
こととしよう。
畠山藩から相馬へ働き掛けて頂ければ
我々も悩む必要もあるまい。」
尚隆頭首「その前に時谷。
騒ぎを起こしてる輩の素性を調べよ。
その結果を持って畠山藩へ出向く。」
時谷「かしこまりました。」