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波乱の文化祭

「・・・それではみなさん、ただいまから文化祭、開催です!」

 文化祭実行委員長が高らかに宣言し、文化祭は幕を開けた。

 実行委員である緋花は、午前中は巡回の仕事が入っていたため、溜め息混じりに仕事をこなしていた。

 嬉しいのか困るのかどうすればいいのか分からないが、巡回のペアは流星だった。

 腕の目立つ位置につけられた『実行委員』の文字は、二人で回っているという事実を全否定して、仕事という事実を突きつけていた。

「そろそろ、交代かな……」

 スマホを確認してそう呟いた流星を、後ろについて行く形で巡回していた緋花には、見えてしまった。

 流星の彼女が流星を独占している証拠(あかし)が。

「緋花?」

 固まっていた緋花を心配して声をかけた流星に、洗練された作り笑顔を貼り付け、いたって普通に答えた。

「あ、はい。次の担当に連絡しますね」

 自分もスマホを出し、電源を入れる。

 ロック画面には、幾つかの通知が残っていた。

 その一つには・・・

 《巡回お疲れ。終わったら俺と回ろ。終わったら連絡よろ 大翔》

 一瞬戸惑った。大翔とどう一緒に回ろうか切り出すか悩んでいた矢先にこれだ。

 だが、大翔を待たせてはいけないと、後回しにして次の担当の連絡先を探した。


 少し様子がおかしかった緋花は、スマホの操作も少し遅くなっていた。

 覗いたわけじゃない。視界に入って、というか飛び込んできたのは、花田大翔からの誘いだった。

 自分もブラコン気味の妹から一緒に回れと命令じみた連絡が来ていた。

 一緒に回りたいなと思っていたが、彼氏から誘いが来ているならそれを断って自分と回ることは天と地がひっくり返ってもないだろう。

 引き止めようとする言葉が、喉を突き破らんとの勢いで自分の中で暴れている。

 たとえ仕事でも・・・

 緋花と二人で回れたことは、0から最初の1になる、大切な灯火となって流星の心に残った。


 すれ違うのは、なぜだろう。

 自分の気持ちを口に出せないのは、なぜだろう。

 たとえ相手の心が自分に向いていなくても、近くにいるだけで胸が締め付けられるのはなぜだろう。

 こんなに辛いのに、それでも好きなんて感情が、胸の奥から泉のように湧き上がる。

 他人の心には、カーテンが掛かっているからのぞくことはできない。

 でも、心に掛かったカーテンを開いてくれるときがくれば、そのときは───


 瑠那は、巡回する二人を後ろからみていた。

 焦れったい兄と緋花さんの関係は、見ている側もムズムズするような微笑ましい光景なのだが、一つだけ、問題がある。

 緋花が大翔と仲が良いことだ。

 大翔は、異次元のレベルでもてる。

 そんな彼の一番近くにいる女の子に、他の女子にどんな風に見えるのだろう?

 実際、大翔に淡い気持ちを抱く琉那にとって、早く兄とくっついて、大翔を解放してほしいという黒めな感情だってない訳じゃない。

 ねえ、早く告っちゃってよ、お兄ちゃん・・・

 大翔先輩が、緋花さんのことを諦められるように・・・

 黒めな感情を引きずりながら、肩を落とす兄に声を掛けるべく、兄の後ろ姿を追った。

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