醜い嫉妬
委員会の入った学生が直面する困難。
年に数回の大イベントの前後は、委員たちに休みはない。
「おーいっ、こっちにそれよこしてー!」
「今忙しいんだ、あとにしてくんない?」
がやがやと騒がしい雰囲気は、学校という酸素で、学生という若さの燃料を、完全燃焼させることで上がる“青春”という名の炎が燃えさかっている証拠なのだ。
「あと一週間で文化祭かぁ・・・」
誰かがぽつりと呟いたその一言は、委員たちの愚痴を誘った。
「そーだよ、あと一週間だよっ?絶対終わんないって!」
「やべえ、今の今まで忘れてたわ」
「「ちょっと、無駄口叩いてないで仕事しなさいっ」」
顧問と委員長の注意がぴったり重なり、ますます委員たちは笑った。
ざわざわと騒がしい室内で、せっせと手を動かす緋花に後方から声がかかった。
「ねえ、緋花ちゃん、・・・あいつのことはどうすんの?」
同じ委員の里奈先輩がこっそり聞いてきた。
あいつ、とは花田大翔のことだ。
この学校にいたときからモテていた大翔は、いまでも里奈のようなファンがいる。
そして、幼なじみであり、大翔のお気に入りである緋花に取り入って、大翔の気を引こうという女子は後を絶たない。
もっとも、大翔はそのような浅薄な考えは0.1秒で気づき、緋花にも会わないように指示するため、その作戦は失敗に終わるのだが。
「大翔は今は勉強に集中するって言ってたので、どうもこうもないと思います・・・」
だからこのときも、大翔に教えてもらったテンプレの返答をした。
の、だが。
「あ、大翔じゃなくて、・・・流星のこと。緋花ちゃん、あいつのこと、好きなんでしょ」
ズバッと言い切られて、何も返せなくなってしまう。
「ふふ、やっぱり。・・・あいつのこと好きなら、大翔はただの幼なじみ、でしょ?・・・これで、あなたは私が何しようとなぁんにも言えない。そうよね。緋花、ちゃん?」
「…~~っ」
「おい、里奈。後輩いじめて遊んでんじゃねえよ」
一際通る声が響き、それまで騒がしかった室内がシン、と静まりかえる。
その空気に耐えきれなくなった緋花は、鞄を掴み、顧問に小声で帰ります、とだけ言い、走り去ってしまった。
緋花が出て行った室内では、なお流星の尋問が続いた。
「何話してたんだよ。あいつと」
「別に。・・・ただの恋バナだけど?」
「お前・・・っ」
途端、委員長が手を打ち鳴らし、終了の合図をする。
「二人とも、そこまで。今は文化祭に向けて大事な時期でしょ?くだらないことで喧嘩してないで、作業して。それと、女子はそうやって追いつめるまで意地悪するのはやめて。・・・全員だよ。意地悪なんかしてない、なんてしらを切ってもここには証人がいくらでもいるから、無駄だよ。お願いだから、仕事に集中して。・・・今日はこのまま続けても意味ないから、解散。今日できなかった分は、明日から頑張って取り返してもらうから。」
委員長の言葉に、流星は悔しそうに顔をしかめた。
クスクスと笑みすら浮かべる里奈に、怒りをぶつけようとした、ら。
「里奈さん。ちょっとこっちに来なさい」
顧問の声だ。いつもは落ち着いた大人の雰囲気をもった声に、今は少し怒りが滲んでいる。
不本意そうにはぁいと言い返し、里奈は尊大な態度で歩いていった。
そのとき流星ははっと気がついた。
傷ついた緋花を追わなければ。
無造作に道具を詰め込み、風のように追いかけた。
大きな窓のある階段から、とぼとぼと歩く緋花が見えた。
急いで昇降口に滑り込み、靴をはきかえてでた瞬間に見てしまった。
思わず校舎の陰に隠れ、ちらとそちらを再確認する。
──緋花が、花田大翔に抱きしめられている。──
つきあってるんだから、当然か。と納得したふりをする。
ふりを、しているのに・・・
喉まででかかった嫉妬の言葉は、無理やり飲み込んだ。
もう、俺は、どうしたらいいんだよ・・・
目の前で好きな人が他の男に頼って、自分には見せてくれない顔をしているのに、嫉妬しない男なんて、この世にいんのか?
いや、いるわけがない。だって、嫉妬しないと思っていた自分でさえ、どす黒い感情が心の底で渦巻いている。
それぞれがいろんな感情を抱えたまま、波乱の文化祭まで、残り一週間を切ったのだった。
2話目を投稿することができました。
拙い文ながら、見てくださった方がいることに感激中です(>_<)
読んでいただき、ありがとうございました。




