第37話:末路(Side:アデラード④)
サンフィオーレ王国の宮殿、"国王の間"。
大魔境の襲撃に失敗した私はお父様から激しい叱責を受けていた。
「貴重な厄災魔物を二体とも失い、しかも返り討ちに遭って逃げ帰ってくるとは……どういう了見だ!」
怒号と化したお父様の叱責が響く。
自ら襲撃を志願して成果を上げられず、逆に損失だけもたらした。
責められるのは当然だった。
「申し訳ありません。必ずしや補填させていただきます」
「黙れ。貴様にはもう何も期待しない」
お父様の厳しい声音が私の身体に突き刺さる。
今まで積み上げてきた信頼や信望を全て失ってしまったようだ。
このまま引き下がるしかないかもしれないが、大魔境でのハルトやシャルロッテとの会話あが思い出された。
「"ブルーサン商会"とカサンドラの件について、もう一度調査させていただけないでしょうか。いずれも濡れ衣の可能性が……」
「だから黙れと言っている。貴様の利用価値は消えた。たった今をもって、王位継承権1位は次女のカイラに移行する」
この日一番の衝撃を私は受ける。
ダメ……それだけはダメだ。
「……お、お待ちください。お言葉ですが私はまだ戦えます。お望みとあらば今すぐにでも……」
「おい、鏡を持ってきてやれ」
お父様がぞんざいに言うと、部屋の隅からアンナが布をかけた――おそらく姿見を引いてきた。
相も変わらず無表情で不気味な静けさが漂う。
彼女が淡々と布を取り外した直後、私は呆然とした。
「なに、これ……」
そこには今にも死にそうな老婆が映っていた。
顔は皺だらけで肌はくすみ、眼球は沈み込み、おとぎ話の敵として出てきそうな老婆だ。
なに……なにが起きているの?
混乱しながら自分の手を見ると、鏡と同じ皺だらけの皮膚が目に飛び込んだ。
これは現実だ……幻ではない。
お父様は汚物でも見るような目を私に向ける。
「時魔法を使いすぎだ。自分の余力も管理できない愚か者に王など務まるわけなかろう。……さあ、この老婆を監獄に連れて行け」
両脇を騎士に掴まれどこかに連行される。
時魔法は強力な分、術者に与える影響も強い。
使い方を間違えれば私の時間が奪われる。
わかっていたはずなのに、シャルロッテに対する焦燥感や憎しみに駆られて意識が及ばなかったのだ。
どうすれば……どうすればよかったの?
一つわかるのは、シャルロッテと仲良くしていれば……少なくとも攻撃しなければ、このような仕打ちは受けなかっただろう。
白髪が気持ち悪かろうが、彼女は妹の一人なのだからもっと優しくすればよかった。
美に異常に執着した結果、王位継承権第1位の立場だけじゃなく、私にとって最も大事な美を失った。
胸の中に、どう表現すればいいかわからないほどの黒い感情が噴き出す。
「嫌……嫌あああああっ!」
全てを後悔する私の人生はどん底に落ちた。
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