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第35話:庶子皇子、領地を守る戦いに勝利する

「威勢は良いみたいだけど、私たちの攻撃にどこまで耐えられるかしらね?」


 アデラード王女の笑い声とともに、一斉に攻撃が始まった。

 上空から様々な魔法やドラゴンのブレスが降り注ぐ中、シャルロッテが一歩前に踏み出す。

「私が防ぐわ! 《聖なる防壁》!」


 薄黄色の巨大なバリアが展開され、全ての攻撃を阻む。

 さすが【賢者】スキルでも使えない聖魔法だ。

 腐毒鬼の《トキシック・レイン》すらも完全に防いだが、アデラード王女は不敵な笑みを浮かべた。


「《クロノ・ブラスト》」


 彼女の手からマーブル模様の光線が放たれる。

《聖なる防壁》に当たるとしばらく弾かれていたが、徐々に結界にヒビを入れ始めた。


「アデラード姉さんの時魔法……っ! 結界の劣化が急速に早められているわ!」


 直後、結界は割られて大量の攻撃が降り注いだ。


「今度は俺が防ぐ! 《連撃破》!」


〔幻夢〕を引き抜くたび、魔力が圧縮された斬撃の波動が上空に向かう。

 

「このまま俺たちで魔物を撃ち落とそう!」

「わかったわ! 《聖弾》!」


 俺とシャルロッテはドラゴンやワイバーンの翼を正確に狙い、次々と撃ち落としていき、アデラードは大声で指示を出す。


「分散するのよ! 攻撃を躱しながら領地の結界を攻めなさい!」


 蜘蛛の子を散らすように空中の部隊は散り散りになった。

 一方の攻撃を躱せず落下した騎士たちは、剣を引き抜いて白兵戦を仕掛けてくる。


「落ちてきた敵は我が相手を……!」


 すかさずカサンドラが追撃を仕掛け、反撃を喰らうことなく切り倒していった。

〔幻夢〕の能力のおかげで目で追えているが、そうじゃなかったら光の筋を見ることしかできないほどの速度だ。

 俺とシャルロッテの前には二体の厄災魔物――腐毒鬼と心喰らいが迫る。


「久しぶりの対面だな。だが、あいにくと何回も同じ強敵と戦う趣味はないんでね」

「早々に退場してもらいましょう」

「《光牙一閃》!」

「《セイント・バレット》!」

『『ギャアアアアアッ!』』


 俺は〔幻夢〕で特大の衝撃波を放ち、シャルロッテは魔力が高密度に凝縮された聖魔法の光弾を何発も放つ。

 腐毒鬼と心喰らいは何もせず消し飛ばされ、上空のアデラード王女は顔を歪める。


「くっ、厄災魔物が……。それより、なぜ私の時魔法が効かないの!?」


 彼女は領地を《クロノ・ブラスト》で襲っているが、結界はまるでダメージを喰らっていない。


「大魔境城の結界はその程度の攻撃じゃ突破できない。……《閃撃》!」


 アデラード王女の乗っているドラゴンの片翼を斬り飛ばす。

 彼女はドラゴン毎落下して、地面に激突する前にひらりと舞い降りた。

 そのまま、憎しみと怒りの感じられる瞳で俺を見る。


「手荒い挨拶ね。もっと優しく出迎えてくれてもいいんじゃないかしら?」

「初めまして、だな。俺はハルト。シャルロッテの夫だ」

「あら、そうなの。妹がお世話になっているわ。ムーングランツ帝国では白髪の女性を妻にするのが最大の名誉なのでしょう? せっかくの気色悪い白髪が金髪になって残念ね」


 アデラード王女の視線は鋭いナイフのように俺、そしてシャルロッテを突き刺す。

 この視線の鋭さは俺が王国にとって敵国の人間だから強い憎悪を抱いている……だけではない。

 むしろ、シャルロッテの美しさに対する妬みだと感じられた。

〔クロニクル〕で見た優しい人物とはまるで違ってしまっている。

 シナリオの異変による影響……か。

 できることなら敵対したくはないが、実際に生きるこの世界とゲームの世界は違うのだ。

 何よりもシャルロッテが大事な俺は〔幻夢〕の切っ先をアデラード王女に向ける。


「あら恐ろしい。あなたが私に敵意を向けるのは王国の人間だから?」

「違う。あんたがシャルを傷つけようとするからだ。シャルを攻撃する者は誰であろうと許さない」


 アデラード王女は鼻で嗤うと、この戦いで最大ともいえるほどに魔力を練り上げる。

 

「《時裂咆哮》!」


【時魔法】スキルで使える最も強力な魔法だ。

 触れた生物の時間を奪い、一瞬にして屍に変える。

〔幻夢〕を今一度力強く握った俺は、刀が思うがままに素直に真っ直ぐ振るった。


「《天墜》」


 斬撃はいとも簡単に死の光線を切り裂き、その先にいるアデラード王女に強い衝撃を与えた。

 倒れる寸前、彼女の小さな呟きが聞こえた。


「な、んで……殺さないの……?」

「あんたにはいろいろと聞きたいことがあるからだ」


 アデラード王女が倒れたとほぼ同時、こちらに手を振るカサンドラが見えた。

 周囲には気絶した魔物や騎士たちが転がる。

 居住区からは結界を通じて大歓声が沸き、領民が駆け寄ってきた。


「戦いは私たちの勝利で終わったようね」

「ああ、シャルやみんなに怪我がなくてよかったよ」


 勝利を祝った後、俺とシャルロッテは厳しい顔で気絶したアデラード王女を見る。

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