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第25話:庶子王子、王国のナンバー2の商会と取引を成立させる

 サンフィオーレ王国各地の商会に連絡を取ると、すぐにナンバー2の規模を誇るセレスタン商会から返事が来た。

 実際に大魔境の品々を見たいとのことで、俺とシャルロッテ、ナタリーが〔鴉〕に乗って訪問した。

 大魔境が領地となった経緯は王国中に周知されているためか、特に拒絶されることはなかった。

 そうして訪れた商会の本部は、王国の西の地方都市に位置する。

 建物は石造りの四階建てだ。

〔クロニクル〕の本編でも訪れる機会があり、懐かしさと受け入れられるかという不安との両方を感じた。

 ナタリーは濡れ衣によって指名手配されている身なので、シャルロッテの光魔法によって姿を隠している。

 周囲の光を屈折させて透明にさせる光の結界に囲まれた状態だ。

 商会の人間に挨拶すると、すぐ商会長が現れた。

 くすんだ鳶色の髪と目をした淑女で、〔クロニクル〕通りのキャラで安心した。


「初めまして。セレンスタ商会を運営するアニーと申します。領主夫妻に直々にお越しいただけるなんて光栄です。それにしても珍しい衣服でございますね。初めて見るデザインですが美しいです」

「俺はハルトだ。こちらこそ呼んでくれてありがとう。この服は俺が好きな日本という国の服さ。サンプルもいくつか持ってきた」

「シャルロッテよ。今日は忙しいところ感謝するわ」


 自己紹介した瞬間、アニーは驚きの表情で固まった。


「し、失礼ですが……あなた様がシャルロッテ様なのですか?」

「ええ、そうよ」

「左様でございますか! しかし、ずいぶんとお美しい金髪ですね! 失礼いたしました、御髪の色が変わられたことは存じておらず……」


 シャルロッテは白髪というのが王国の共通認識なので、金髪になったとは思いもしなかった、という弁明がされる。

 彼女の美しさが褒められるたび、俺は誇らしげな気持ちになってしまうのだった。

 俺たちはそのまま最上階の執務室に案内される。

 窓から見える街は家々の屋根が陽光に煌めき、大魔境の和風な街並みとはまた違った美しさが感じられた。

 周囲の目が気にならなくなったところでシャルロッテが光魔法を解除し、ナタリーが現れる。


「やあ、アニー、久しぶり」

「ナタリー!? どこから来たの!?」

「シャルロッテ氏の聖魔法で姿を隠してもらっていたのさ。なんと、彼女は伝説の【大聖女】スキルを覚醒したんだよ」


 唖然とするアニーに、ナタリーは事情を説明してくれる。

 終始、驚きの声が絶えることはなかった。

 来客用の椅子に座ったところでアニーが切り出す。


「しかし、"ブルーサン商会"が取り潰しにあったと聞いたときは驚きました。王国騎士団は禁制品の販売だの何だの言っていますが、私や商会の部下たちはまったく信じていませんよ。だから、ナタリーはあまり気を落とさないでね。私の一番のライバルで友よ」

「ありがとう、アニー君。そう言ってくれる人とボクもありがたい。元気が出る」

「"トライシャイン商会"って名前も素敵だわ。良い人たちに巡り会えてよかったわね」

「ああ、本当にその通りだよ」


 ナタリーの瞳は潤む。

 手紙でも同様に励ましの言葉があったが、やはり直に言われると心が洗われるようだった。 涙を拭うと、彼女は【無限収納】スキルを発動する。


「大魔境で採れた素晴らしい品々は全部ボクが運んできたよ! さあ、好きなだけ見てくれたまえ!」


 亜空間から、レア作物や魔物の素材、和風アイテムの嗜好品の数々が取り出された。

 テーブルに並ぶ様々な物品を目の当たりにして、アニーは感極まった様子でそれらを手に取る。


「SランクやAランクの作物がこんなに採れるなんて、どれほど豊かな土地なのでしょうか……! 王国の肥沃地帯でもここまでの作物が育つ土地はありませんよ! 希少性は元より鮮度も抜群です!」

「作物や素材もいいけれど、私のおすすめはこの異国感溢れる品々よ」

「これはまた見事でございますね!」


 シャルロッテは和風アイテムを並べる。

 茶器や漆器以外に、風鈴、手拭い、扇子、香炉、座布団、和装……思いつく限りの和風アイテムを生成し持ってきた。

 とはいえどれも特別な能力はなく、等級としては最も一般的なDランクだ。

 サンフィオーレ王国の戦力が増強され、大魔境に攻め込まれるリスクを避けるためである。


「このガラスは非常に美しい音が鳴りますね。どのような使い方をするのですか?」

「それは風鈴と言いまして、窓の近くに吊して使います。風が吹く度にこの音で涼しい気持ちになれるというわけでして……」


 質問されたのが嬉しくて早口で説明してしまったが、途中からはどうにか興奮を抑えることができた。

 説明を受け目を輝かせるアニーの前に、シャルロッテは数枚の資料を置く。


「王国の地理や産業を鑑みて、作物や素材、和風アイテムの特徴毎に需要が見込まれるであろう地域をまとめたわ。魔物の素材なんかは冒険者ギルドや鍛冶の発展している街に優先的に送りたいものね。私がいた頃と王国の状況に違いがなければいいのだけど」

「ありがとうございます! では、さっそく拝見して……素晴らしい。どれも今の基幹産業の隆盛に即した内容でございます」


 一転して、アニーは真剣な表情で資料に目を通す。

 事前に見せてもらったが非常にわかりやすいまとめ方であり、商売の素人である俺でもすぐに理解できてしまった。

 やはりプロにとっても相当に良い資料だったようで、机に戻したアニーはため息交じりに話す。


「……シャルロッテ様は大変聡明でいらっしゃいますね。このまま商業計画に使えてしまいます。各地で売買を始める準備の時間が大幅に短縮できるので感謝してもしきれません。ハルト様も見事な商品の提案を誠にありがとうございます。良い物を売る。みな様と取引することで商人の一番の幸せを味わえそうです」

「「じゃ、じゃあ……!」」

「ええ、ぜひ我が商会と取引をしてください」


 俺たちは硬く握手する。

 これを機にセレスタン商会に留まらず、他の商会とも次々と取引成立が始まったのだった。

お忙しい中読んでいただき本当にありがとうございます


【読者の皆様へ、青空あかなからのお願いでございます】


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