第11話:悪役モブ皇子、裏ボス王女と遊ぶ
「……負けました」
「今回も良い戦いでしたね」
わずか十局で完全に打ち負かされるようになった。
俺が。
敗戦の衝撃が覚めやらぬ中、俺はどうにかシャルロッテに尋ねる。
「あの、どこが悪かったのでしょうか……?」
「ハルト氏の攻め筋は飛車角が主軸になっているようなので、もっと歩を活用した方がいいと思います。前線を上げるより後衛の厚みを増すことをおすすめします」
「……なるほど」
的確な指摘に何度も頷く。
いったいどういうことだ、と静かに感想戦を始めた彼女を見て思う。
正直なところ、最初の数局は余裕で勝てた。
おかしくなったのは五局目くらいだ。
徐々に戦いづらくなり、気がついたら圧倒的敗北を喫するまでになった。
「シャルロッテ嬢はお強いですね」
「そうですか? あなたの教え方が上手なのだと思います」
「ありがとうございます……」
すでに俺の実力を上回っている。
これが裏ボス王女のポテンシャル……恐ろしい子。
そんな彼女が楽しそうに駒を触る光景は微笑ましく、俺は素直に嬉しかった。
さらに一局終わったところで、彼女から普段はないそわそわとした態度が感じられる。
「よかったら、もう一局やりますか?」
「しかし、そろそろ作業の時間が……」
シャルロッテは窓の外をチラチラと見ていた。
真面目な彼女はいつも領地開拓を気に掛けてくれる。
少しでものんびりしてほしい俺はにやりと笑いかけた。
「今日は……お休みでもいいんじゃないですかね?」
魔法の言葉を伝えたら、シャルロッテもまたにやりとした微笑みを浮かべた。
「そうですね。今日はお休みにしてしまいましょう。では、今度は私が先手でやらせてもらいます」
パチパチと駒を置く音が静かに響き始める。
対面に座るシャルロッテは相変わらず淡々とした表情だ。
でも、それは楽しそうな笑顔だと俺にはわかった。
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