おまけ【計算機の最悪解】
【▲ 閲覧注意!〜おまけエピソードをお読みになる前に〜 ▲】
先ほどの「幻奏(IFストーリー)」、最後までお読みいただき本当にありがとうございました。
美しい雪解けの夜から、朝の爽やかな見送りの余韻……。 「あの純粋で切ない気持ちのまま、IFストーリーを読み終えたい!」という方は、絶対にこの先を読まず、どうかここでブラウザバックをお願いいたします。
ここから先は、「もしあの朝、誠さんの理性が完全に吹き飛んでいたら?」を描いた、作者の出来心による【IFのIF (おまけエピソード)】です。 常に完璧な『人間計算機』である誠さんが、自らの◯◯を満たすために大真面目に屁理屈をこねて暴走する、極甘で少しポンコツなラブコメ(キャラ崩壊)となっております。
「せっかくの美しい感動を返して!(笑)」となっても責任は負いかねます!「理性を失って大慌てする誠さんが見たい!」「どんな手を使ってでも◯◯◯◯を作ろうとする彼のギャップを楽しみたい!」という、心の広い方のみお進みください。
※なお、明日は雰囲気を戻し、通常の【IFストーリー】を更新いたします。ここで引き返す方も、ぜひ明日からのエピソードを楽しみにお待ちいただけますと幸いです!
それでは、覚悟のできた方のみ、計算機の「最悪解」へどうぞ。
その夜は、ただお互いの体温を確かめ合うように抱き合ったまま、何もせず、朝まで静かに寄り添い続けた。
◆ ◆ ◆
翌朝。
唇に落ちた熱い感触に、私はゆっくりと目を覚ました。
視界が鮮明になると、佐藤先輩が至近距離で私を見下ろしている。その表情は、いつもの冷静沈着な彼そのものだった。
「あ……おはようございます」
「おはよう、真由子ちゃん。……昨日は勢いだったとはいえ、嫁入り前のお嬢さんとベッドで一晩を過ごしてしまった。僕の責任は非常に重い。今すぐ君のお父さんに謝罪に行こうと思う」
極めて真面目なトーンで告げられた言葉に、私は慌てて身を起こした。
「い、いえ! 何もしてませんし、謝る必要なんて……」
「うん、そこなんだ。それが一番の問題だと気付いたんだよ」
「……はい?」
「こんなに綺麗な女性と一晩を共にしておいて、手も出さないなんて男としてあまりにも失礼だ。そんな不自然な状態では、お父さんも到底納得しないだろう? だから、これからきちんと『事実』を作る。準備はいいかい?」
「ええーーーっ!?」
「完璧な計算だ。どこにも矛盾はない」
眼鏡の奥の瞳は、一切の淀みなく澄み切っている。本気だ。この人、とんでもない飛躍を大真面目に最適解だと思い込んでいる。
「いやいやいや、論理おかしいですから! ……はぁ」
呆れ果ててため息をついたものの、私を見つめる彼の瞳の奥に隠しきれない熱と焦燥が滲んでいるのに気づいてしまうと、途端に愛おしさが込み上げてきた。
私は彼の眼鏡を外してベッドサイドに置いた。
「……しょうがないなぁ。一回だけですよ」
私が小さく笑って頷くと、彼はひどく安堵したように、けれどあくまで慇懃な態度で答えた。
「ありがとう。……誠意を持って、対応させてもらうよ」
(……言い方っ!)
◆ ◆ ◆
一時間後。
「はっ……! ぼ、僕としたことが……っ!」
ベッドの端で、乱れた髪もそのままに、佐藤先輩が頭を抱えていた。
「朝、目を覚まして、隣で無防備に眠る真由子ちゃんの顔を見た途端、僕のメインシステムに未知のウイルスが侵入したとしか思えない……! なんて強引な言い訳を……いや、行為自体は最高だった。……いやいや、そうじゃなくて! 僕の計算機が完全に破綻してしまったことが問題なんだ。まだ気持ちも伝えてない、正式に付き合ってもいないのに……ブツブツ……」
いつもの完璧な姿は見る影もなく、一人で猛烈な自己エラー分析を繰り広げている。
私は毛布を引き寄せながら、その背中を見て堪えきれずにクスクスと笑い声を漏らした。
どうやら『人間計算機』に侵入して深刻なバグを引き起こしたのは、”virus MAYUKO” だったらしい。




