第十七話「神々のいない灰色の夜明け」2
第二章 神殺しのシンフォニー
「アタシが……全部繋げる! ……おい、リーリン! 聞こえるか!?」
辰巳響が、天に向かって咆哮した。彼女の呼びかけに応えるように、アストエルの空に一陣の風が巻き起こる。 それは、ユーガリア大陸を越えて届いた、虹海の守護竜からの返答。
『……ええ。届いているわ、響』
王 麗琳の声が、響の脳内に直接響く。 『血の交換』による絶対的なパス。 大陸の東と西、二匹の龍が完全にリンクする。
「よっしゃあ! ……行くぞ、テメェら!」
響は、祈の杖から溢れ出す灰色の光と、自身の身体から迸る蒼い雷、そしてリーリンから送られてくる青い風を、一つに束ね始めた。 三つの力が螺旋を描き、互いを増幅させながら、巨大なエネルギーの杭を形成していく。
「ルシウス! アンタも手伝え!」
久遠灯が叫ぶ。瓦礫の上で立ち尽くしていたルシウス・クロウリーは、一瞬躊躇した。 目の前で崩壊していく天使王。 それは、彼が人生を捧げてきた信仰の対象であり、絶対的な正義の具現化だったはずだ。 だが、その光はあまりに冷たく、そして人を救わない。 彼が見てきた真実――灯たちの泥臭い足掻きや、シスター・ノアの献身の方が、遥かに「人間」として尊いものに思えた。
「……神よ、許したまえ」
ルシウスは、十字架を構えた。 その銃口が向く先は、悪魔ではなく、天使王メタリオン。 彼の瞳には、組織への忠誠ではなく、己の信念に従う決意が宿っている。これは叛逆ではない。神の名を借りた虐殺システムに対する、聖職者としての異議申し立てだ。
「私の弾丸は……迷える魂を救済するためにあるッ!!」
ルシウスの聖銀弾が、響の作り出したエネルギーの杭に融合する。科学、魔術、神気、そして聖遺物の力。 全ての属性が、祈の「灰色」によって調律され、一つの巨大なベクトルへと収束していく。
「調律……開始ッ!!」
祈が杖を振り下ろした。 それが、指揮者のタクトだった。
「喰らえェェェェッ!!」
全員の攻撃が一点に集中した。 灯の放つM500の神気弾。 響とリーリンの風雷。 白雪美流愛と双子の斬撃。 鉄鏡花の最大出力レーザー。 そして、ルシウスの聖なる杭。
すべての力が「灰色」に統合され、螺旋を描く光の槍となって、メタリオンとルーファスと融合したアヴァゼブブを同時に貫く。
ズンッ……。
爆発音はない。 世界が一瞬、真空になったかのような静寂が訪れた。あらゆる色が消え、音も、時間さえも止まったような感覚。
次の瞬間。
パリン、パリン、パリン……。
天使王メタリオンの黄金の装甲に、亀裂が走った。その亀裂から、光が溢れ出す。 それは、破壊の光ではなく、解放の光。 メタリオンは、悲鳴を上げることもなく、ただ静かに崩れ去っていく。黄金の羽根が舞い散り、光の粒子となって天へと昇っていく。 それは、神話の終わりを告げる美しい光景だった。
一方、魔王アヴァゼブブの泥の肉体もまた、ひび割れ、崩壊を始めていた。 だが、こちらは静寂とは無縁だった。
『グオオオオオッ!!』
アヴァゼブブが、断末魔の咆哮を上げる。 その巨体から、どす黒い瘴気が噴き出し、周囲を汚染しようとする。 だが、祈の灰色の光がそれを許さない。瘴気は中和され、ただの泥へと戻っていく。
そして、泥の中から、一人の男が弾き出された。
ルーファス・アザリエル。
彼は、泥にまみれ、ボロボロになりながらも、狂喜の笑みを浮かべていた。
「素晴らしい! ……これこそが、私の求めていた混沌だ!」
彼は、崩れ落ちるアヴァゼブブの肉片に手を伸ばす。だが、その手は空を掴むだけだった。 魔王の力は、彼の手をすり抜け、魔界へと還っていく。
光の粒子と、闇の粒子。 それらが渦を巻き、天界への門と魔界への門へと吸い込まれていく。 強制送還。 この世界に顕現するための「理」そのものを否定され、彼らは元の次元へと弾き出されたのだ。
ギギギ……ガシャン!
二つの巨大な扉が、軋みながら閉ざされていく。黄金の光が消え、漆黒の瘴気が晴れる。二つの太陽が消滅し、アストエルの空に、本来あるべき静かな「夜」が戻ってくる。
神話の戦争は、人間たちの拒絶によって、唐突に、そして完全に強制終了させられた。
自分が読みたい物語を書いています。
可能な限り更新できるようにしていきたいなぁと思っています。
(制作に関してAIを利用しています)




