第十一話「四騎士の鉄槌」2
第二章 死と飢餓の舞踏
「みんな、いくぞ!」
久遠灯の叫びと同時に、戦場の空気が弾けた。6人の魔女たちは散開し、それぞれが得意とする距離で敵に対峙する。
だが、目の前の敵は、これまで戦ってきたどの勢力とも質が違った。 『黙示録の四騎士』。 彼らは、単なる強力な個体ではない。 ドクター・メイの狂気によって設計された、歩く「軍隊」だ。
「アタシが道をこじ開ける! どきなッ!」
辰巳響が、雷を纏って突撃する。 彼女の拳が、重火器で武装した巨漢――『戦争の騎士』の装甲を捉えた。
ドォン!!
衝撃音が響くが、アルギュスは微動だにしない。逆に、彼の全身に埋め込まれた無数のハッチが展開した。
「ガトリング、ミサイル、レーザーキャノン……!? おいおい、詰め込みすぎだろ!」
灯が援護射撃を行うが、アルギュスが放つ弾幕の厚さは桁外れだった。一斉発射。 暴風雨のような砲火が、響と灯を釘付けにする。
「くっ……!」
灯は、自らの手首を噛み切った。 固有能力『血の晩餐』。噴き出した鮮血が霧となって広がり、ミサイルの熱源探知を狂わせ、弾丸の軌道を逸らす防壁となる。
「血のカーテンだ! 響、今のうちに懐へ入れ!」
「おうよ! 『竜王顕現』・迅雷ッ!」
響が血霧の中を駆け抜ける。雷気を脚部に集中させ、電磁加速による超高速タックルを敢行する。
一方、後方では別の悲劇が進行していた。不在の祈の代わりに、鉄鏡花が防御を担当していたが、彼女のシステムが警告音を上げ続けている。
「エネルギー残量、急激に低下。……なんだ、この現象は」
彼女の視線の先には、痩せこけた長身の騎士――『飢饉の騎士』が立っていた。 彼が杖を振るうたびに、周囲の空間から魔力、電力、そして生命力までもが消失していく。
「腹が……減った……」
響の動きが鈍る。 エネルギー枯渇のデバフ。レヴィアスは、戦場そのものを「枯れ地」に変える環境兵器だった。
「警告。毒素濃度、危険域を突破」
さらに、黄色いガスが戦場全体に充満し始めていた。散布しているのは、防護服に身を包んだ小柄な騎士――『疫病の騎士』。
「センサーにノイズ発生。……このガス、ただの毒ではない。電子回路を腐食させるナノマシンを含んでいる」
鏡花の義手が痙攣し、照準が定まらない。 彼女は、背中のサブアームを展開した。固有能力『機械仕掛けの神』。四本の腕が、それぞれ空気清浄フィルター、解毒剤散布機、そして高周波メスへと変形する。
「環境浄化、開始する。……私のテリトリーで、汚染は許さない」
物理的な破壊力、エネルギーの枯渇、そして環境汚染。 三つの災厄が連携し、リコリス・バロックを追い詰めていく。
そして、戦場の中央。 最も静かで、最も濃密な死の気配が漂う場所があった。
白雪美流愛と、双子の妹たち。彼女たちの前には、リーダー格の騎士――『死の騎士』が、幽鬼のように立ちはだかっていた。
「……貴女たちの命、軽いですね」
ネクロスは、大鎌を無造作に振るった。風切り音すらしない。 死神の鎌は、物理法則を無視して美流愛の首筋に迫る。
「ッ!」
美流愛は、本能的な悪寒に従って身を沈めた。 数本の髪の毛が、音もなく切り落とされる。回避したはずの空間に、遅れて衝撃波が走る。
「刈り取り甲斐がない」
ネクロスの声には、感情も殺意もない。 ただ、収穫時期を迎えた麦を刈る農夫のような、淡々とした義務感だけがある。
「舐めないでよ!」
美流愛は、ドレスの裾を翻して踏み込んだ。 袖口から射出されたマイクロフィラメント・ワイヤーが、銀色の蛇となってネクロスの四肢を狙う。鋼鉄をも断つ、必殺の糸。
だが。
ジュッ……。
ワイヤーがネクロスの装甲に触れた瞬間、赤錆びて崩れ落ちた。切断されたのではない。 ワイヤーそのものが、数百年分の時間を一瞬で経過させられ、風化してしまったのだ。
「物質の時間を加速させる能力……!?」
美流愛が驚愕する。 触れたものを腐らせ、老いさせ、死へと導く呪い。武器も、防具も、そして肉体さえも、彼に触れれば塵となる。
「お姉様!」
白雪亞莉愛と白雪華琉愛が、左右から飛び出した。固有能力『真愛幻影』。 空間が歪み、数十体の美流愛の幻影が出現する。彼女たちは実体と同じ質量を持ち、ネクロスを取り囲んで撹乱攻撃を仕掛ける。
「無駄です」
ネクロスは、幻影には目もくれなかった。彼は大鎌を回転させ、正確に「本物」の美流愛だけを狙って振り下ろした。
「なっ……!? なぜ!?」
アリアが叫ぶ。ネクロスには、視覚など必要ないのだ。 彼は、対象が放つ「死の気配」――寿命や生命力の輝きだけを感知している。 幻影には命がない。だから、彼にとっては存在しないも同然だ。
「お姉様! こいつ、相性が悪すぎます!」
カルアが悲鳴を上げる。 美流愛は、固有能力『殺戮舞踏』を発動し、超高速のステップで大鎌を回避し続けるが、その距離は徐々に詰められている。 武器は通じず、欺瞞も効かない。 触れれば即死の鬼ごっこ。
「……チッ。可愛くない死神ね」
美流愛は、冷や汗を拭いながらニヤリと笑った。だが、その瞳の奥には、焦燥の色が濃く滲んでいた。このままでは、ジリ貧だ。何か、打開策を見つけなければ――。
だが、メイの冷徹な計算は、彼女たちに考える時間すら与えない。四騎士の包囲網が、さらに狭まっていく。絶望的な消耗戦が続いていた。
自分が読みたい物語を書いています。
可能な限り更新できるようにしていきたいなぁと思っています。
(制作に関してAIを利用しています)




