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実は仲良いだろ

オオスは妹紅と輝夜との会話の後、何故か永遠亭に連れて行かれることになった。

妹紅は輝夜と一緒に居られるかと帰って行った。帰れ帰れと輝夜が煽ってまた喧嘩になりそうだったのでオオスは無理やり止めた。それと鈴仙拘束してしまったから妹紅に解いてきて欲しいとお願いした。

…何故か輝夜と妹紅の二人にオオスは滅茶苦茶怒られた。二人とも実は仲良いだろうとオオスは思った。




連れて行かれた永遠亭は何かの能力によるものなのか異次元化していた。

分かりやすく言えば外装も広いのだが、それ以上に内装が広い亜空間と化していた。


その中の和室の一室にオオスは案内された。どうにかして帰れないものだろうか。


二言三言会話をして輝夜の印象を和らげることに成功したオオスは割と寛いで今ここでひょっとしたら死ぬかもなと思っていた。


「良くあの結界を通り抜けられたわね」

輝夜がオオスに改めて言う。何故くぐり抜けたのか知りたいようだ。

いい加減適当に誤魔化すのも良くないと思ったオオスはヒントを出すことにした。


「クァチル・ウタウスってご存知ですか」

あまり口に出すと不味いモノなのだが、名前を呼ぶだけならセーフとオオスは割り切って話す。


「何それ?」

輝夜は知らないようだ。オオスは拍子抜けした。輝夜の能力と限りなく近い能力の持ち主なのだが、親戚か何かでもおかしくないくらいに。最も容姿は化け物だ。オオスは対策の上で見たことがあるが、普通は見るだけで一気に老化し、秒も経たずに塵になって死ぬ。


「あー。時間を操れる邪神です。それに近い力だったもので」

オオスは投げやりに説明する。聞き耳立てている誰かに説明するように話を続ける。


「他に量子論的な術式等ありましたが、量子PC並みの解析技術があれば可能かと」

オオスは結界とやらをくぐり抜けることはできたが、解析までは不可能だった。

明らかにオーバーテクノロジーだった。辛うじて外の世界の秘密結社ならワンチャンあるかもしれないが多分それを上回る。あれは純粋な学術的な物だ。


「答えになってないわよ」

かぐや姫はどうも理系が苦手らしい。一から説明するとなると数日はかかる。

オオスは永遠亭の頭脳担当が化け物染みた怪物だと改めて認識した。


「人間の里にはネクロノミコンの写本まであるのです。

 私程度、普通の里人ですと言いたかったのです」

オオスははぐらかすことにした。

答えようにも多分輝夜には理解できませんよと言って気分を損ねたくなかった。


それに嘘ではない。オオスの本を貸出、販売している鈴奈庵では何と漢字写本のネクロノミコンまであった。

なお、オオスが明らかにヤバい妖魔本を買い取って焼こうとしたら本居さん家の小鈴に泣かれたので止めた。仕方がなくオオスが偶に借りる程度に止めている。

更に言えばオオスは独自に妖魔本を集めてもいる。特に現在の天狗が読めない古代天狗語を解読するのがマイブームだ。既に何冊か解読済みである。射命丸文に天狗の癖に読めないのかといつの日かマウント取るためだった。


だから、オオスがナコト写本の時間遡行薬の知識やその他諸々を知っていても不思議ではないと考えている。それらがなければくぐり抜けることはできなかっただろう。


そのとき、オオスは喉が渇いた。お茶がない。

「鈴仙さん。お茶ください」

オオスは先ほど拘束が解かれて帰って来た鈴仙にお茶のお替りを所望した。


「ひっ、只今」

鈴仙は化け物でも見るかのような反応だ。酷い、悲しいとオオスは思った。


「一体何したのよ」

輝夜がオオスに問いかける。

だったら鈴仙までこの場に連れて来なければ良いのにとオオスは思った。


「ちょっと調子に乗っていたので脅しただけです。それに正当防衛ですあれは。

 私は障子紙より弱いので次は簡単に殺せますよとフォローしたのですが」

オオスは精一杯フォローした。自分は正当な権利を翳しただけで悪くないと言う。


「フォローになってないわよ。それ」

輝夜が呆れた顔でオオスを咎めた。


「妹紅さんいないのでここには正直用がないのですが、帰って良いですか?」

何だか居たたまれなくなってきたオオスは帰りたいと言い始めた。

なお、輝夜はこれほどまで―特に男に―ぞんざいに扱われたことはない。

輝夜はどうにかして気を引くことにした。


「良いわけないでしょう?何故ここに来られたのかわからないのに。次あったら怖いじゃない」

輝夜は暗にまた来いと言う。


「ああ、安心してください。誰にも話さないので。要件があったら私一人できます。

 ここは遠いので偶にしか来られない思いますが」

オオスは来たくねぇめんどくせぇと暗に言う。



そこからしばらくオオスと輝夜との京都市民ばりの迂遠なやりとり、攻防が続いた。



「いや、あのねぇ…」

輝夜がもう直接言うべきか悩み始めた頃。


「初めまして。お客様かしら」

援軍が来た。輝夜は思った。だが、同時に不味いとも思った。


それは長い銀髪を三つ編みにした前髪は真ん中分けの女性だった。

左右で色の分かれる特殊な配色の服を着ている。上の服は右が赤で左が青、スカートは上の服の左右逆となっている。袖はフリルの付いた半袖。全体的にやや中華的な装いをしていた。


「私は八意永琳と言います。オオスさんと言ったかしら?」

永琳は暗にオオスと輝夜の話を盗み聞きしていましたよと言った。

同時にお茶が来ないのは永琳が鈴仙を下がらせたからだとわかった。

何て地味な嫌がらせだとオオスは思った。


「八意永琳…なるほどあの高貴な方でしたか」

オオスは永琳の名前から本名を類推した。目の前の女性は日本神話上の神だ。

暗に永琳の正体はわかったと伝える。


「そちらは既に捨てた名ですわ」

永琳はさらっと言う。神の名は捨てた、と。


「それは素晴らしい…失礼しました」

オオスは思わず本音が出てしまう。そして、オオスの永琳に対する好感度は爆上がりだ。


「不老不死が悪いことなのですか?まぁ、私は寿命で死ぬつもりですが」

だからこそオオスは敢えて踏み込んだ。

不老不死になったから月から追い出されたのか暗に聞く。


「知り過ぎると碌なことがなくてよ?」

永琳は答える気がないようだ。オオスにあからさまな警告をした。


「ああ、貴方なら私を即座に殺しそうですね。普段なら」

だから、オオスもあからさまに答え返した。

オオスが見た限り、永琳は実際そういうことを選択するタイプの人間だ。


「…あらやだそんなことないわ」

永琳は図星を突かれて少々困惑した。初対面に見抜かれるほど甘くはないつもりだったが。


「万学の祖とお見受けします。学問を志す若輩者としてはお会いできて光栄です」

日本神話上のあの神ならば他の神すらその知に頼った神である。

オオスは敢えて万学の祖と形容した。


「深淵を覗きこむ時、その深淵も貴方を覗いている。…過ぎたるは身を滅ぼしますよ」

永琳はオオスに言った。まるで無感情に。


「全くおっしゃる通りです。安心してください。率直に申し上げて貴方達に興味等ない」

オオスも永琳に言った。まるで無感情に。


「その言い方は不遜とは思わなくて?」

永琳はオオスにニコリと笑っていった。


「その方が心配の種が減るでしょう?」

オオスも永琳にニコリと笑っていった。


なお、この会話を聞いていた輝夜はドン引きしていた。

鈴仙がこの場に入れば泡拭いて倒れていたかもしれない。それくらい緊迫した空気があった。


「…フフフ。十六年足らずの人生でどうやったらそこまで減らず口を叩けるのかしら?」

沈黙を破って永琳がオオスに問いかけた。


「ああ、やっぱりそういうのわかるのですね。年の甲ですか?」

オオスはそう永琳に言い返した。



「フフフ」「ハッハハ」

永琳とオオスは笑い合う。目はどちらも笑っていない。



「ちょっと二人して怖いわよ」

輝夜が思わず二人の間に入り込む。これ以上この空気が嫌だった。


「すみません。輝夜さん。私今結構楽しいです」

オオスは本心からそう言った。永琳は中々良い話し相手だ。


「最近の若者は礼儀を知らないのね。嫌になっちゃうわ」

そう言った永琳も本心から楽しそうに笑っていた。


「…ええー。貴方達仲良いの?悪いの?」

さっきとは打って変わって楽しそうな二人に対して輝夜は思わず唸る。


「初めて会ったのだからわかりませんよね?」

オオスは輝夜にそう言った。


「そうですわ。姫様。わかりませんわ」

永琳も同意して輝夜に言う。


「…実は仲良いでしょ。貴方達」

輝夜は顔を引きつらせてそう呟いた。

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