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12/24

レベル12

 眠れない……。


 シャワー室で会ったフレイアの事を思うと、身体中が熱くなり目が醒めるばかり……。寝るためには、他の事を考えないといけない。

 強制的に、明日からの旅に意識を向ける。


 朝日区のボスを倒しに行くまでに、いくつかのクエストができる。道中なので、わざわざ遠回りする必要もないし、オレとクレオの戦闘訓練にもなる。


 電車などの交通機関は、狭い空間に魔物が出ると危険なので歩くしかない。というか、電車は運行していない気がする。そう考えると1日では行けないので、インターナショナルハイスクールで一泊した方がよさそうだ。

 それから、……




「マサト朝よ。ご飯を食べたら出発するんでしょう?」


「母さん……?」


「マサトは寝ぼけているの? 今の私はクレオでしょう?」


 ……?

 あ、そうだった。夜明け前まで起きていたので……。


「昨夜、あまり眠れなくて。エリーは?」


「朝シャンに言ったわよ。女の子の身だしなみだって言って。

 マサトが正解だったわ。今朝起きたら、身体中が筋肉痛。床で寝たような痛みが残っているのよ。

 これからは、マサトの意見も尊重するから、よろしく!」


 マサトの意見も……?

 それって、全面的にオレを信じてないって事?

 でも、仕方ないか。父さんが亡くなってからは、クレオ1人がオレとエリーを養っていたし。クレオから見れば、オレはまだ半人前なのかもしれない。


 あ、そうだ。サラに朝ごはんをあげないと。

 画面を操作して、生きている芋虫を出した。まだ飛べないサラを膝の上に置くと、オレは1匹ずつ芋虫を食べさす。


「ピィー、ピィー」


 サラは芋虫を食べ終わると、元気な声で鳴いた。

 頭を軽く撫でると、サラはまぶたを閉じて気持ちよさそうにしている。


 エリーが朝シャンから帰ってきて、よからぬ噂を聞いたと言い始める。


「昨夜遅く、シャワー室で覗きがあったみたい。近くに泊まっていた人達が言っているのを聞いたわ。

 マサトが入っていた時に、怪しい人物はいなかった?」


 ……、オレだよ。


 フレイアが大声を出したから、近くで寝泊りしていた人達に聞こえたんだ。フレイアとの約束もあるけれど、本当の事は言えない……。


「いや。怪しい奴は誰も見なかったよ」


「これから犯罪が増えそうね。

 警察に連絡しようとしても、画面からは繋がらないし。そもそも、警察が機能しているかどうか……」


 エリーから聞いて、クレオがそう言った。

 警察が機能していない可能性の方が高い気がする。魔物を殺すにはゲーム内での武器か、包丁などのナイフ系が必要だから。


 と、言うか。オレが犯罪者みたいになっているんですけれど……。


「フレイアが『あ、美味しいじゃん』で、既に待っているかもしれないから、そろそろ行くわよ」


 フレイアが……?


「フレイアが待っているって、どう言う意味クレオ?」


「私が朝早く連絡して、ボス攻略に誘ったのよ。彼女、喜んで同行しますって言ったわ。

 二人ともそれでいいわよね?」


 事後報告かよ……。

 エリーはオレの顔をチラッと見て言う。


「私は……、賛成かな。マサトもいいわよね?」


「同じ部屋に泊まる可能性があるのに、どうするの?

  オレ、男なんですけれど?」


「それは予め聞いたわ。マサトだったら構いませんだって。

 信頼されているわよ、マ・サ・ト」


 そう言う問題ではない気がするんだけれど。

 昨夜の事をやっと忘れかけていたのに……。毎夜、寝不足になる気がする……。


「いいよ、それで……。

 彼女、オレより戦力になるのは間違いないから」




 旅じたくを整えて『お、美味そうじゃん』に行くと、既にフレイアは座って待っていた。

 3人の男達が離れた所からフレイアの方を見ており、肘を突きあっている。


「お前行って、話してこいよ」


「お前が行けよ。彼女美人すぎて俺は話せそうにない」


 どうやら彼等は、フレイアをナンパする相談をしているみたいだ。

 オレ達は彼らの横を通り過ぎると、クレオがフレイアに声をかける。


「おはよう、フレイア。

 かなり待ったの?」


「皆さん、おはようございます。

 私もさっき来たんですよ」


「おはようございます、フレイア

 寝袋持っているんだね。昨夜は寝袋で寝たの?」


 エリーが、アレイアの荷物を見て言う。


「気持ちよさそうなベットだったんですけれど、怪しいので寝袋で寝ました。誰か、直接ベッドで寝たんですか?」


 オレの方を見たフレイア。

 手を振って、お互い朝の挨拶をする。彼女の目線が泳いでおり、何かしら恥ずかしげ。

 昨夜の事をやはり気にしているみたい。


 オレは、クレオを指差した。


「クレオが直接ベッドで寝たんですか?

 それで、どうでした?」


「身体中が痛かったわ。

 マサトが忠告をしてくれたんだけれど、余りにもフッカフカのベッドだったから騙された。

 老いては子に従えって言うけれど、今朝は痛いほど骨身にしみたのよ」


 その言葉って、オレに言ったのと随分と違う気が……。


「クレオさんは、まだまだ若いですよ。

 それに、マサトは正確な判断をするんですね」


 そう言ったフレイアは、オレを見て微笑む。

 彼女の笑顔に、オレは思わず微笑み返していた。



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