4話 ごめんなさい。でもやっぱダンジョンに行きたいよ。え?母さん認めさせたら行っていいんですか?それなんて無理ゲー
「覚醒者」と「探索者」は同じ意味です。
「塔の出入りはできそうでよかった。10分くらい待ってから入るか。」
もしこれからずっと出待ちされてたら困るしいずれ確認するなら今確認した方がいいからね。
「にしてもゴブリンにあんな知能あるなんてなあ。もしかしてあれがボスか?いやでも他のゴブリンと姿に差はなかったし、特殊個体の可能性もあるね。」
そもそもあのゴブリンが何もないところからやってきたのか、ゴブリンキング(推定)とか上位の魔物に命令されてあそこにいたのかわからないし、要検証しないとな。
「息を整えた後に2つだけ確認して帰ろう。結構夜も遅いしね。」
確認したいことは1つが外に出ていったときに塔の中は完全に復元されるのか、それとも変わらずに時間が動いているのか、はたまた静止しているのか。復元されているかは塔に入った瞬間に捨て置いた服を確認することで判別可能。あとは入った瞬間、さっきのゴブリンがいなかったら時間は動いている、襲い掛かってきたら確定はしないけど時間が止まっている可能性もあるってことね。
「今確認するのは外の世界で力が使えるのかどうか……せい!……いった!」
木を思いっきりぶん殴ってみたけどちょっと揺れる程度か。これじゃ判別できないな。しゃーない。走るか。
「俺の50mが6.3秒。まずは歩幅合わせで50mを大体で測定してと。」
「……全力ダッシュ!」
「結果!5.5秒!これ、ステータス反映されてるな。」
いくら何でも6.3から5.5まで早くなるのは大まかな測定にしては早すぎる。スキルはまだ持ってないから検証できないけどこれ世界全体でも大きく変わるかもしれないな。
「オリンピックってどうなるんだろ。来年だっけ?ニューレコード!0.5秒!とかサッカー空中戦とかしだしたら噴き出すかも。」
ま、さすがに出禁だよなあ。それか探索者専用のオリンピックとか出てきたらいいな。
「よし、息も整えたし、もう一度塔に入ろう。最大限警戒しなきゃだから……よし。四つん這いで行くか!」
周りに人いたらあんまり見られたくない格好だけど避けるならこの体制がいいんだよね。遠距離とかしゃがむだけで当たる確率下がるし、頑張れば跳躍できるから何とかなるし。
「雅人カエルモードいっきまーす!突撃!」
「うん、いない!服もそのまま!プラスチックのゴミもそのままだから塔内部の時間は動いてることで確定!帰ろう帰ろう!……カエルだけに」
しょうもなくて一周回って笑ってくれるかも……いやないな。普通につまらん。
「一応誰にも見られないように……よし家に着いた。」
ドアのカギは、空いてるな。電気もついてるし、うっすらドアの先に人影が見える気がするな。
「……腹くくるか。た、ただいまー……ゴベラッ!」
「こんのアホんだらーーー! 危ないとこに向かって! どんだけ心配したと思ってるの! バカバカ!」
「ご、ごめん! 痛ッ痛いよ母さん。」
「それが母の心の痛みなんだから甘んじて受け入れなさい!」
……おかしいな。全然痛くないはずなのにゴブリンの棍棒受け止めたときより痛い気がする。
「ごめんって! 無事だったじゃん!」
「結果論でしょ!」
声が震えてる。本気で心配させちゃったんだな。
「ご、ごめんなさい……」
「ニュース見たのよ!救急車もいっぱい出てたし!怪我した人もいっぱいいるの! 死んだ人だっているかもしれないのよ!」
「うっ……」
「なのに連絡もなし! 電話も繋がらない! お父さんと二人でどれだけ探したと思ってるの!」
スマホ確認するの忘れてた。塔の中じゃ圏外だったし、全然確認してなかった。着信37件……
「うわぁ……」
「うわぁじゃない!」
「ごめんなさい!」
「母さんもその辺にしよう。雅人」
「……はい。」
「……無事でよかった。」
「父さん。」
「これからは急に飛び出したりするな。俺も母さんも心配でしかたなかったんだ。」
「……ごめんなさい。次はしっかり許可貰うことにする。」
「……」
「そこはいかないって言いなさいよ!」
いてっ。また叩かれちゃった。
「ニュースを見ながら警察に電話するべきかずっと考えてたんだ。だがお前がいろいろ考えていることを知っているからこそ今回は何もしなかったんだ。」
「父さん……」
「勝手に行くのはやめてくれ。今日みたいな思いは俺も母さんも二度としたくない。」
「……うん。」
「……疲れただろう。風呂に入ってこい。沸かしてある。そのあとあの中であったことを聞かせてくれ。」
「わかったよ。ありがとう。……勝手に出ていってごめんなさい。父さん母さん。心配かけて……ごめん。」
本当に悪いことしちゃったな。もう悲しませないようにしないと。
*****
「風呂から上がったか。これを観ながら話そう。」
テレビ特番?【世界各地で塔の出現を確認】【死傷者多数】【政府、立ち入り禁止を発表】
「大変だね。」
「当たり前だろ。ほら見ろ。」
なになに?『政府は本日、全国に出現した塔への立ち入りを禁止すると発表しました。危険性が不明であり、一般市民の侵入は極めて危険との見解です』至極全う過ぎてなんの反論もできないな。
「まあ普通そうなるよな。」
「お前はその禁止された場所に真っ先に入ったわけだが。」
「返す言葉もございません。」
「本当にな。だが見る限り悪いことだけじゃないこともわかる。ほら、」
『続いて海外の情報です。アメリカでは探索者と見られる人物が魔物を討伐する映像がSNS上で拡散しています』
「オオカミ型の魔物だ。」
目が3つあったりするオオカミか。うわ、鉄パイプで殴り倒してるじゃん。さすがアメリカン。やることなすこと全部派手だな。
「すごいね。」
「お前もコレできるのか?」
「僕は刀使ってやってたからできるかはわからないな。」
「そういやなくなってたな。」
『中国ではレベルアップを行ったと主張する男性が重量挙げの世界記録を大幅に更新。これを記録とするかは議論が行われているのが現状です。』
「うわ。すっご」
「まるでバケモノだな」
「絶対ステータスのせいだろこれ。STR特化か?」
「何言ってるのか全く分からんな。」
「あとで説明するよ。」
「何はともあれ世界が大きく変わっていってるんだ。」
「うん。」
「おそらく、軍隊も警察もスポーツも物流も何もかもが変化していく。父さんはそれに適応する必要がある。そう考えているんだ。」
「それって、ダンジョンを攻略するべきだってこと?」
「お前が攻略することや危険な目に遭うことを認めているわけではないがな。」
「はい。」
『ロシアでは軍主導で探索者部隊の編成が始まったとの情報も――』
「死んでも母さんには言えないが。俺はダンジョンに行くことを止めることはしたくないと思っている。お前も高校生だし、もう立派な大人だ」
「うん」
「どうしても行きたいならいくつか条件がある」
「全部守るよ」
「1つ目は学業を疎かにしないこと。まだお前は高校生だからな。しっかりと勉強してくれ。」
「それはまあその通りだよ。分かった」
「次に2つ目。人と争わないこと。お前がダンジョンに行けばどんどん強くなっていくだろう。だがそれを人に向けるのは絶対にしないこと。隠すなとは言わない。守るため、ダンジョンをクリアするため、生き残るために使ってくれ」
「わかった。でももし襲われでもしたら?」
「最優先は『生き残ること』だ。それが判別できないほど子供でもないだろう」
つまり……死にそうなときは遠慮なくしていいってことか。
「最後、3つ目。これが一番難しいだろうな。」
「なになに?」
「母さんを納得させること。」
「母さんを!?」
できるかな?いや超難題だぞこれ。一度決めたことは絶対に覆さない頑固の上を行くあの天下の母上からどうやってダンジョン許可を貰えば……。
「お前がしっかり準備して生き残るための努力をしている。そう思わせれば母さんも納得するはずだよ。」
「わかった。やってみる。」
『次のニュースです。本日、日本で初めてダンジョンを攻略したと名乗る男性が記者会見を開きました。』
『俺の名前は佐藤 天使!初めてクリアした男だ!』
うわめっちゃドヤ顔。むかつく顔だなぁ。
『正直言ってね、もう普通の人間とは違うんですよ』
「はぁ……」
ため息しかでないな。
『見せてあげますよ。俺の力を!ふん!』
『ほら。こんな大きな机も俺にとっちゃ簡単に持ち上げられるんですよ!』
『危ないのでやめてください』
『俺に指図するってんのか!!』
マジかよこいつ。馬鹿すぎるだろ。
『こんなのまだ序の口です。これから俺の力どんどん見せてあげますよ!』
『政府はダンジョンの入場禁止を発表してますが……』
『知るか!俺は人類の先頭を走ってるんだ!覚醒者の代表として活動する俺はそんな力にゃ屈しないぞ!』
『世界を変えるのは俺たち覚醒者です。さあ同士よ!一緒にダンジョンをクリアしよう!』
『……以上が会見になります。今後はダンジョン攻略配信や講演活動なども――』
あ、こいつ絶対そのうちやらかすタイプだ。
「……父さん。」
「なんだ。」
「俺、ああは絶対ならないから安心して。」
「その前に母さんにボコボコにされるだろうな。今日は遅いし母さんももう寝た。また明日説得するんだな。それと学校はしばらく遠隔でするとのことだ。授業はあるが今の情勢を鑑みての結論出そうだ。」
「了解!おやすみー。」
母さん攻略か。今までで一番難しいだろうな。しっかりと納得させてやるぜ!
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