エツィールド家
「では、わたくしはこちらでお待ちしております」
「ありがとう、ルリ。ごめんなさい、迷惑かけて」
「とんでもございません。どうぞごゆっくり、お過ごしください」
魔道術師団長から『『魔力生成能力』が低下している』と言われた二日後
シスツィーアはエツィールド家に来ていた
もちろん、ここへ来たいと言ったとき
「いつ『魔力不足』になるかわからない。せめて、間隔なりわかるまでは控えるように」
と、リーリアの代わりに『魔力測定』をするようになった魔道術士団長に渋い顔をされたし
「行くなら俺も一緒に。一人ではなにかあったとき心配だ」
レオリードにもそう言われたけれど
「どうしても行きたいんです」
「機器は『青』ですもの。一人で大丈夫だから」
と、頼み込んで押しきったのだ。
(ここなら『低下』を改善する手掛かりが見つかるかもしれない)
そんな一縷の望みをかけて
付き添ってきてくれたルリは玄関に待機していて、エツィールド家のなかは空調が整っているからいいとしても、護衛騎士は外を見回ってくれているし、樹々が遮ってくれているとはいえ外は夏の気候で暑い。
だから、できるだけ早く調べ物を終わらせようとシスツィーアは書斎で本を漁るけれど
「みつからない・・・・・・」
去年、アランと調べた一階の部屋にはそれらしい本は見当たらなかった。
だから、歴代のエツィールド家当主が使っていた書斎や、隣にある図書室
そして
(さすがにここは・・・・・・気が引けるけれど・・・・・)
二階にある主寝室と私室
さすがにこの部屋は入るのに躊躇いがあって、それにこれまで調べたかったことは書斎とかで調べられたから、軽く探すくらいしかしたことがなかったけれど・・・・・・
「よし!」
気合を入れて心の中で「ごめんなさい」と謝りながら、シスツィーアは部屋のなかを丁寧に探していく
ベッドの下や机のなかも、隠し扉的なものがないか
(見つからない)
エツィールド家当主以外の立ち入りをほぼ禁じてあるからか、私室にもそんなものはなさそうで
さすがにすぐに見つかるとは思っていなかったけれど、少しくらい手掛かりを期待していただけにシスツィーアの落胆は大きい
「仕方ないわ」
書斎に戻って、エツィールド家当主だった者の手記を手に取る。
「たしか、この方だったわよね」
シスツィーアが参考にした『魔力を自分たちでも回復できるように』との記述
それは二人目の、この世界に召喚されてきた人
「・・・・・・・・あった」
シスツィーアが見つけた記述の、その前後も含めてふたたび読むけれど
(やっぱり・・・・・・・この人も『自分で回復することができる』と思っていたのね)
『祈り』と『祝福』の循環
そして『祝福』と『回復』による『魔力の安定』
書いてあることは、シスツィーアと同じ解釈だ
(誰から聞いたのかしら?)
さすがにそこまでは書いてなくて、いつからはじまったのかも記されていない。
そもそも、このエツィールド家は召喚されてきた『女神の祝福を受ける者』のためにあるから、『女神の祝福を受ける者』の不在期間は記録が残されていない
『空白の期間』
そこでなにが起こったのかが、鍵になりそうで
(王家には残されているかしら・・・・)
シスツィーアも出入りを許されている王族専用の図書室は、これまでは気後れして、行ったことはなかった
「行ってみよう」
行って調べないことには、先に進めない
それに、明日はオルレンとのはじめての授業が行われる
もしかしたら、オルレンならなにか手がかりになりそうなことを知っているかもしれない。
(オルレンさまにも尋ねてみよう)
レオリードも「顔を出す」と言っていたから、改めて図書室を使わせて欲しいと頼もう
(できることは、なんでもしなきゃ)
先送りにしていても、シスツィーアの『魔力不足』が解決することなんてない
レオリードにだって、もう負担をかけたくない
「しっかりしなきゃ」
取り出した手記を片付けて
(とりあえず、王宮に戻って整理しよう)
ルリたちをこれ以上待たせることはできないから、これから先のことは私室でまとめよう
そう考えて、シスツィーアは気合いを入れて部屋をあとにした。
最後までお読み下さり、ありがとうございます。
次話もお楽しみいただければ幸いです。




