目覚め
「ん・・・・・・・・・」
眩しさを感じて、目を開ける
(あさ・・・・・?)
いつもならきっちり閉まっている天蓋付きベッドのカーテンが半分開いていて、夏の陽ざしが差し込んでいる
(めずらしいわ・・・・・・)
眠る前にルリが閉めてくれたはずなのに
それになんだか朝にしては陽射しも強いような?
起き上がると、身体は軽いのにぼーっとしてしまう
どことなくこの感覚を知っている感じがして
「シスツィーアさま!お目覚めですか!?」
声のする方に顔を向けると、驚いた様子のサラがベッドのすぐそばに立っていて
(サラは今日、お休みじゃなかったかしら?)
お茶会の準備を中心にしてくれていたから「翌日はお休み」と聞いた気がしていたけれど、記憶違いだった?
まだはっきりしない思考のまま、シスツィーアはいつものように
「おはよう、サラ。今日もよろしくお願いします」
そう笑いかけた。
「シスツィーア!」
朝食のために食堂へ向かおうとしていたレオリード
シスツィーアの様子を尋ねようと行く先を変えたところで「目覚めた」と従者が伝えに来て、すぐにシスツィーアの部屋に来ていた
ノックもせずに扉を開くと、ベッドに上半身を起こした状態のシスツィーアがきょとんとした顔でレオリードを見つめ
「えっと・・・・・・?」
困惑した様子で首を傾げるシスツィーアにほっとして
「良かった!」
思わず抱きつきそうになるのを堪え、けれどそっと手を伸ばしてシスツィーアの髪に触れ安堵の笑みを溢す。
「どこか身体におかしなところは?」
「えと・・・・ありません」
頬を少し赤くしてシスツィーアが答え、ますます安堵して
「すぐに医師と総長が来る。しっかり診てもらおう」
レオリードの言葉に、シスツィーアの瞳がかすかに揺れた。
「ふむ。異常はなさそうじゃな」
「ええ。いつもと変わりないようですわ」
年配の男性医師が診察をし、リーリアも隣で頷く。
「では次は私だな」
「ええ」
魔道術士団長と医師たちが場所を変わり
(なぜかしら?)
理由も分からないまま、寝衣から着替えることもベッドから降りることも許されず、いつもより入念に診察されているシスツィーア
医師たちと入れ替わるようにレオリードは公務へと行ってしまったし、シスツィーアのことをレオリードが心配してくれたことはわかるけれど理由が分からない。
医師たちに理由を尋ねようにも、そんなことできる雰囲気ではなくて
「右手をこちらに」
「はい」
いわれるまま右手を差し出し
(いつもと機械が違うわ)
魔力測定の機器がいつもとは違うもので、ますますシスツィーアの不安が募り
「ふむ。正常だな」
機器の示す『青色』と魔道術士団長の言葉にほっとするけれど、魔道術士団長の雰囲気はいつもよりかたい気がして
「あの、なにかあったのですか?」
思いきって尋ねるたシスツィーアだけど、魔道術士団長と医師、リーリアは顔を見合せるだけで答えてはくれず
「すまないが、左手も良いか」
「はい」
今度は左手を差し出すと、そちらに機器が付けられて
(魔力測定なのに?)
魔力測定は右手でする決まりがあるのに、左手でも測定する理由が分からなくて
「ふむ。変わらないな」
どことなくほっとしたような魔道術士団長の声
同時に部屋の空気も和らいだ気がして
部屋の扉近くには魔道士のロープを纏った人が別の機器を持ったまま立っていて、魔道術師団長はそちらに向かって声をかける。
「魔道士長、機器をこちらに」
「はっ」
魔道士のロープを纏った人は魔道士長で、シスツィーアに軽く会釈すると機器を魔道術士団長に渡し
「すまないが、今度はこの機器を使う。右手を」
「・・・・はい」
また右手を差し出し、新しい機器を取り付けられ
(この機械は、『魔力生成』の?)
アランとの『切り離しの儀式』が終わってから、数日間測定されたことを思い出す
(なにが、あったのかしら・・・・・・)
どきどきと五月蠅くなる心臓を左手で抑える。
測定結果が表示される場所はシスツィーアから見えない位置にあり、魔道術師団長も魔道士長も表情を変えないからシスツィーアには不安だけが増して
「・・・・・・・・・・・・・・・・」
魔道術師団長が手元のノートになにか書き込み、終わると機器が外され
「あの!・・・・・いったい、なにが」
「質問に答えるのは検査が終わってからだな。いくつか尋ねるが良いか?」
「・・・・・・・はい」
魔道術師団長がノートを見ながらいくつか質問を重ねる
(なにかしら?)
質問の内容は、いつもリーリアに尋ねられることと基本的には変わらない
ただ、少しだけ踏み込んだ質問をされただけ
「アランディール殿下が視察に行かれたときのような、身体の動きが鈍いなどの変調は感じられないのだな?」
「はい」
「ここ最近はアルデス子爵令嬢のことで心労が溜まってもおかしくはなかったが?」
「えっと・・・・・なるべく、考えないようにしていたので」
「そうか。まぁ、それはそうだろうな」
魔道術師団長は会話中はじっとシスツィーアを観察するように見つめて、シスツィーアが答えるたびにノートに書きこんでいるし、その隣では魔道士長が機器を片付けて
「今後の方針を話し合うゆえ、しばらくは部屋で大人しくしておくように」
「あの、いまの検査は」
「すまないが、話は結果が出てからだな」
魔道術師団長は立ち上がると「魔力生成は意識して行うように」とシスツィーアに言い置いて、医師たちと部屋を出ていく。
シスツィーアがこれ以上声をかけることを拒むようなその雰囲気に、シスツィーアの不安が増えるのが止まらなかった。
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