異変
お茶会の翌日
キーサが準備を済ませて部屋に入ると、シスツィーアはまだ眠っていた
いつもなら朝の身支度のためにキーサたちが来ると、シスツィーアは起きていて
「おはよう。今日もよろしくお願いします」
そう言って、笑い掛けてくれるのだ。
「珍しいこと」と思いながらも、昨日のお茶会がシスツィーアにとって負担が大きかったことも理解しているので、キーサは「もう少し」とそっと部屋から出ていき・・・・・
「どうしてまだ目覚めないんだ!?」
お昼すぎ
マーシャル家にいたレオリードは「シスツィーアが目覚めない」との連絡を受けてすぐに王宮に戻ると、シスツィーアの部屋に来ていた。
「分かりません」
王宮医師でシスツィーアの主治医となったリーリアは、青くなりながらも冷静に答える。
キーサがシスツィーアに声をかけたのは、いつもなら授業がはじまるころ
もともと今日は礼儀作法の授業だったのだが、昨日の疲れがあるだろうと授業は休みで、シスツィーアがゆっくり過ごす予定だったのもあり、キーサも最初は起きるまで寝かせておこうと思っていた。
だが、さすがに寝返りを打つことも身動ぎすらなく眠る姿に「おかしいのでは?」と声をかけたのだ。
そして、どれだけ声をかけてもシスツィーアは目覚めず
シスツィーアが起きたら診察することなっていたリーリアにすぐ連絡がいき、診察を行ったのだが・・・・・・
「ずっと機器は『青』を示していますし、身体の異常も見受けられないのです」
「目覚めない時点で異常だろう!」
「レオン兄上、落ち着きなよ」
冷静に言いながらも、リオリースも泣きそうな顔をしている。
朝はレオリードも「昨日の疲れがでて当然だ」と、そこまで心配していなかった。
むしろ「ゆっくり寝かせるように」と指示し、目覚めたら連絡をするように言い置いてマーシャル家へ向かったのだ。
それが
(なぜだ!?)
シスツィーアの顔色は悪くない
呼吸も安定している
それなのに・・・・・・・・
「失礼いたします」
ノックされることなく扉が開き、魔道術師団長そうちょうが入ってくる。
「陛下より魔道具をお借りしてきました。申し訳ありませぬが、シスツィーア嬢に」
「ああ。頼む」
「それと、できれば人払いを」
「ルリ、退室なさい。わたくしは離れております」
キーサは同席していたルリを部屋から出し扉の前へと移動して、誰も入って来れないようにする。
レオリードたちが総長に場所を譲ると、リーリアがそれまで付けていた機器を外し、新たに持ち込まれた魔道具を総長が付けて
「なっ!」
「ええっ!」
「やはり」
総長がつけた魔道具
そこに示されたのは
「黄色!?」
リオリースが悲鳴をあげる
(なぜだ!?)
リーリアが使用していた機器は、レオリードたちも魔力量を図るときに使うものと同じ
それなのに・・・・・・・
驚愕の表情をするレオリードたちのなかで、ただ一人総長だけが納得したようにうなずいている。
「総長!これはどういうことだ!?」
「レオン兄上!いまはそれよりもツィーア姉さまを助けないと!」
レオリードが詰め寄るけれど、リオリースに遮られる。
泣きそうな顔でレオリードたちを見上げるリオリース
レオリードも総長を問い詰めたい気持ちをぐっとこらえ、シスツィーアのそばで跪く
ゆっくりと、シスツィーアの手をとり
(・・・・・・冷たい)
シルジの街での、シスツィーアにつけられていた魔道具の石が『赤』色を示していたときとは違うけれど、シスツィーアの手はレオリードに比べて冷たい。
リオリースも邪魔をしないように数歩ベッドから下がり、総長はリーリアに視線を向けて外へ出るようにと目だけで促す。
リーリアはキーサを促し、ふたりは静かに外に出て行き
そんな部屋の様子に気づくことなく、レオリードは心を落ち着かせるために深く息を吸う
・・・・・・・・・・・・・・・・・
ゆっくりと、シスツィーアの右手へと魔力を流す
『じゃ、魔道具に魔力を流すようにやってみろ。流す量は少しずつな』
はじめてシスツィーアに魔力を流すときに、ルークから言われた言葉を思い出す。
レオリードがシスツィーアに魔力を流すのは、シルジの街から王都へ戻るとき以来
(思い出すんだ)
あのときの感覚を思い出しながら
ゆっくりと魔力を流す
部屋のなかは静まり返り
物音ひとつ
息をする音さえ聞こえない
じわりと、レオリードの額に汗が浮かぶ
魔道具の色がゆっくりと『青』色に変わり
「そこまでです」
レオリードの邪魔をしないようにしつつも、総長が静かに告げた。
お読みいただき、ありがとうございます。
投稿したものの順番を入れ替えた方が良いかと思いつき、入れ替えができなかったので削除いたしました。
お騒がせして申し訳ありません。
次話もお楽しみいただけると幸いです。




