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舞台裏 ⑥ ~リジデリア・ルグラーシュ伯爵令嬢 ①~

リジデリアにとってのシスツィーアは


三歳年下だったこともあって、自分自身の友人と言うよりも


『弟の友だち』だった


初等科と中等科は同じ敷地にあったから廊下ですれ違うこともあったし、実兄のアルツィードと自宅に遊びに来ることもあったけれど、不快に思ったことはない。


人付き合いが苦手なのか、それともその可愛らしさから同性の嫉妬を買ってしまうのか、一人でいるところを見かけることが多かったし、ルグラン夫人(はは)が礼儀作法を教えているから、なんとなく気にかけて話しかけるようになって


会えば話すし、楽しく過ごせる


だけど、シールスほど親しくはない


そんな感じだった


そのシスツィーアの話を久しぶりに聞いたのは、高等科の『香夜祭』のあとにアルデス家から除籍され、行方知れずになったとき


「は!?除籍だなんて、なに考えてんの!?」


未成年の女性を『除籍』して家から追い出すなんて信じられないと腹が立った。


だけど、その反面、アルデス家の人たちの性格やシスツィーアの立場を考えると


「自分たちの利益にならなくなったから追い出す・・・・・・あり得そうね」

「姉さん、外では言わないようにね」


心当たりを探しまわったのか疲れきった(シールス)に窘められて、もやもやする気持ちだけ抱えて


そのあと、知り合いの貴族令嬢から『建国記念の夜会』でのことを聞いて、無事でいたことにほっとして



第一王子から『遅くなったが、昨年の香夜祭の慰労会を行う』と連絡が来たときに、シールスが「ツィーアと会えそう」と言っていたから「良かったわね」と返して



なんとなく、『もう会うこともないだろうけど、元気でいてくれると良いな』と思った。



だから



『ツィーアだけじゃなくて、第二王子殿下にお会いした。で、第二王子殿下がツィーアに姉さん婚姻のために他国に行くし、王宮招いてお茶会したら?って言ってくださって、近いうちに招待状がくるから』


王宮から帰ってきてすぐにシールスに言われたときも


「まさか。招待状なんてこないわよ。社交辞令に決まってるでしょ」


いくら昔からの知り合いでも、シールスの姉であっても、そこまで親しくない平民が王宮に招待されるなんてあり得ない。


リジーはそう思って本気になんてしていなかったけど、ルグラン夫妻(りょうしん)は慌てて登城用のドレスのために布を見繕いはじめ


シールスにせっつかれて持参する手土産を選んで試食して、店の針子たちとドレスのデザインを決めて採寸して


そんな慌ただしい日を3日ほど過ごすと、本当に王宮から使者の方が来られた。




「シスツィーアさまからお預かりしてまいりました招待状です」


『リジデリア・ルグラーシュ伯爵令嬢』


宛名に書かれていたのは、まだ馴染みのない名前


(もう調べたの?)


国に届け出たのは三か月近く前だけど、手続きが済んで正式に『リジデリア・ルグラーシュ』となり、この国への滞在許可がおりてからまだ10日も経っていない


情報収集の早さに驚くけれど、隣にいる母は動揺することなく柔らかな笑みを浮かべ


「息子からお話を伺ったときより、招待状が届くのを心待ちにしておりました」


そつなく答える母に倣って


「ご招待、謹んでお受けいたします」


恭しく手渡された招待状


目上の方への礼をとり緊張しながら受け取ると、それまでより空気が少し和らいだ。


「シスツィーアさまもお喜びになります」


『シスツィーアさま』


もともと貴族だから『さま』付けで呼ばれて当然なのに、耳慣れない呼び方に、本当に雲上人になってしまったと、そんな方からのお茶会の招待状を手にしていることに自然と背筋が伸びて


使者の方をお見送りするために玄関へ向かうと、お店の前がざわめいていて、少し緊迫した雰囲気も


「シスツィーアに会わせてください!会って話せば誤解は解けますから!」


急いで外へ出ると、そこでは見知った令嬢(リューミラ)がお店の前で待っていたらしい、もう一人の使者の方に詰め寄って懇願している。


「いったい、なにごとでしょう?」


招待状をくださった使者の方が進みでで、待っていた使者の方と二、三言葉を交わすと、リューミラに向かって「お店の前で騒ぐなど、こちらのお店に迷惑ですわ」と圧を感じる笑みで言う。


さすがのリューミラもはっとして数歩さがると、使者の方々は「お騒がせして申し訳ございません。では当日、お待ちしております」と、にこやかな笑みと丁寧なお辞儀をして去っていった。


だけど、もちろんリジーたち相手にリューミラが大人しくなるはずもなく・・・・・・





「疲れたわね」

「ええ。店の前でお城の使者の方に詰め寄るなんて、彼女本当に貴族令嬢?」


「ツィーアに会うなら、わたしも連れていって!」と頼んでくるリューミラに、「バカなこと言わないでよ」と内心でうんざりしつつも宥めるけど、もともとリジーたちを軽んじているから大人しくさせるのは簡単じゃない。


他国とはいえ伯爵令嬢になったから「わたしの方がいまでは身分上なんですけど!」と言ってやりたい気持ちを堪えて、穏便に言いくるめて


「客商売に影響した」と「迷惑料を払っていただけますか?」言いたいところだけれど、後々のことを考えるとそんなこともできないから、家族に愚痴を言うことでしか発散させることもできない。


「まさか、この招待が取り消されるなんてことないわよね」

「それはないわ。我が家が問題を起こしたわけではないのですから」


ちらりとそんな考えがよぎるけれど、一蹴される。


「それよりも、お茶会の準備をしましょう。いつあるのかしら?」

「ええ。えっと、ご招待いただいたのは五日後ね。間に合うかしら」


前もって準備をはじめておいて良かったと思いながら、仮縫い中のドレスを試着して


あとはお茶会の日を、どきどきして迎えるだけだと思っていたけれど・・・・・・・






最後までお読み下さり、ありがとうございます。

次話もお楽しみいただければ幸いです。

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