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呪いの支配者  作者: 春香秋灯
戦争派、融和派
55/101

復讐は、一人でやってくれ

 帰りの船は、王族とかはいない。ただ、送り届けられるだけである。意気消沈した魔法使いハサンは、部屋に閉じこもっていた。まだ、母サツキの嘘に気づいていない。自尊心が高いってのも、考えものだなー。

 俺の手勢とか、王都の貧民街から借りた戦力は、王国帝国を繋ぐ定期便で移動である。あの大人数だから、一回二回では終わらないだろう。それに、移動の費用は帝国持ちだから、せっかくの王国に行ったので、観光して帰るだろうな。俺ならそうする。

 帝国から王国への船旅は三日間。それは、王国から帝国への船旅も三日間かかるということである。

 行きに、それなりに海の景色を堪能したので、帰りは寝て起きて食べる、という単調な生活を送っていた。そうして、あっという間に帝国に到着したのだ。

 行く時は静かに、ひっそりとだった。ほら、王国の戦争を手伝いに行くだけで、帝国は関係ないのだ。俺、護衛だし。

 ところが、帝国に到着すると、物凄い数の帝国民が待ち構えていた。

「これは、何?」

「我々もさっぱり」

 船員に聞いても、わからないよな。だって、この人たち、船ごと王族に雇われているのだ。俺たちが王国に滞在している間も、他の仕事をさせない契約となっている。だから、久しぶりの帝国である。

 何故か、皇帝アイオーンと筆頭魔法使いハガルが出迎えで待っていた。集まる民衆を騎士たち兵士たちが抑えているのを見ながら、俺と皇族セキラは船を下りた。皇族セキラは、お行儀よく、皇帝アイオーンに挨拶だ。俺はすぐにハガルの元にいく。

「これは一体、何?」

 俺は小声でハガルに聞いた。もう、どうなっているのか、わからない。

「ちょっと、新聞で呟いただけです」

「何を?」

「ほら、皇族の権威を高めるために、王国の戦争に皇族が参戦した、と新聞で喧伝したんです。皇族だけでは弱いなー、と思って、ロイドが護衛でついと書かせたら、こうなりました」

「何やってくれてんだよ!?」

 筆頭魔法使いハガル、笑って誤魔化してるけど、大変なことだよ。

 文化祭で、俺は不幸な伯爵令嬢の演劇で、貧民出の騎士役をやったのだ。俺は、普通にやったんだけど、この、親父似の顔が、大衆には受けたんだ。そのせいで、文化祭三日間は、追いかけまわされて、大変だった。

 文化祭も無事、終わって、俺もひと段落したはずだった。しかし、そこに、あの、元使用人メグルちゃんとの契約である。あの、資金以外で出来ることなら手伝います、という契約を悪用され、俺の肖像画や、身に着けている物の複製まで販売されたのだ。

 正直、俺は、大して売れないよ、と思っていた。だって、俺、親父のこと大嫌いだから。だから、親父に似ている俺の顔も大嫌いなんだ。ほら、自分が嫌いだと、皆嫌いと思うよね。それだよ。

 だけど、大衆は、親父の顔が大好きときてる。肖像画だけでなく、俺が身に着けていた物の複製品まで、バカ売れしているという。

 まだ、俺という話題は、熱いのだろう。そこに、ハガルが燃料投下したわけである。

 ほーら、お迎えの皆さん、俺が身に着けてる小物とかの複製品をつけてるよ!! 何やってんだよ、ハガル!!!

 あまりのことに、母サツキは道具を使って、魔法使いハサンは魔法で、見事、人の目から隠れた。お前ら、逃げるなんて卑怯だぞ!?

「ど、ど、どどどどど、どうしよう!! こんなに人が!!!」

 そして、皇族セキラは、俺にしがみついた。暗殺者は平気で殺すのに、人前はダメダメだなー。

 俺はもう、面倒臭くなって、皇族セキラを乱暴に持ち上げて、建物の上を伝って、さっさと逃げた。

「あっちに行ったぞーーーーー!!」

「きゃー、待ってーーーー!!!」

「素敵ーーーーー!!」

 色々と叫ばれるが、俺は逃げるの大得意だ。皇族セキラを連れて、さっさと人目のない場所へと逃げ込んだのだった。そして、妖精の目を発動させ、道具を使って転移だ。最初から、道具使えば良かったんだよ!!






 帰国早々、俺は筆頭魔法使いの屋敷に行った。呼ばれてないよ。文句をいうために、俺自らが向かったんだよ!!

 不機嫌な俺が案内された先で、もう、態度最悪に座る。筆頭魔法使いハガルは、人の思考を読める素晴らしい頭脳の持ち主だ。もちろん、俺が来るとわかっていて、俺の好物のデザートを机に並べやがった。ちくしょー、机に足を乗せてやりたかったのに、出来ない!!

「俺にいうことあるだろ、ハガル」

 普段は敬称つけて呼んでいるが、今日はしない。こいつ、俺の知名度使って、皇族の権威をあげやがって。

「私も、ここまでロイドの知名度が高いとは思っていませんでしたよ。王都周辺だと思っていましたが、噂が帝国中に出回ってしまいました。よくよく考えたら、王都の貴族の学校は、不幸の伯爵令嬢が実際にいた場所ですから、観光客も押し寄せていたのですよね。文化祭の間、王都はお祭り騒ぎでしたよ」

「そーゆーこと、聞きたいんじゃないんだよ!!」

「認識阻害の道具、しっかり持っていてくださいね。大丈夫、その道具は、逆の作用を起こしてくれます。会いたいという強い認識を阻害してくれますから。街を歩いていても、ロイドだとバレません。ただ、ロイドのことをよく知っている人たちには役立たずですから」

「謝罪しろよ!!」

「筆頭魔法使いは謝罪しません。反省はしますが、それだけです」

 開き直りやがったよ、ハガル。期待してなかったけどな。ハガルは謝罪しない、そういう立場だから。

「だいたい、あの、戦争許可? の石っころ、仕掛けしてるなら、先に言ってくれよ!!」

「サツキには話しましたよ。聞いてませんか?」

「あの女、俺に黙ってやがったな!!!」

「まず、サツキが言い出したことです。まず、あれもまた、魔道具の一種です。私一人で出来ることではありませんよ。サツキの協力があったから、出来たことです」

 こわっ!! 笑顔の裏で、敵も味方も陥れることをしてたのか、あの女!? 母親だけど、息子にも容赦ないな。

「俺は気づいたから逃げられたけど、運が悪いと、あの岩の雪崩に巻き込まれてたぞ!?」

「そうはならないでしょう。ハサンだっていましたし、皇族には妖精の守護がありました。あなたは絶対、セキラを置いて逃げませんからね。逃げ遅れたセキラを抱きかかえてでも連れて逃げるでしょう。あなたとセキラだけは助かりましたよ」

「いやいや、王国側の兵士や騎士は巻き込まれて死ぬよ」

「帝国には関係ありませんから」

 笑顔でいうハガル。うわ、王国、可哀想。捨て駒扱いだよ。こいつ、帝国第一主義だから、それ以外はゴミにしか見えていないな。

「リスキス公爵の血縁サンセが、お前を殴る、と宣言してたぞ」

 俺は絶対に止めない。ハガル、殴られたほうがいいよ。

「それは楽しみです。受けてあげましょう。私も黙って殴られませんよ」

 あ、サンセ、吹っ飛んだな。もう見える。サンセは絶対にハガルを殴れないよ。

 お詫びのデザートに手をつけると、ハガルはいつもの通り、茶を給仕する。俺は味にこだわりがないけど、薄いのが好きなんだよな。ほら、綺麗な水が一番おいしい、というのが貧民だから。俺も味のない水のほうが好きなんだ。

「それで、魔法使いハサンはどうなんだ。合格か?」

 今回の王国の戦争に派遣された魔法使いハサンは、今後も、筆頭魔法使いの予備でいられるかどうか、の試験もついでにされていたのだ。

 魔法使いハサン、王国では、これといって活躍していない。いや、新聞では活躍した、みたいな一文が入ってたな。侯爵マキラオに見せてもらった。情報伝達は、道具を使うし、喧伝は筆頭魔法使いハガルがやっているから、戦争終了の翌日には、新聞の記事になっていた。一面だよ、一面。帝国が派兵して、奇襲したことまで書いている。さすがに、派兵が貧民だとは書かなかったな。そこのところは、金で貧民を黙らせたのだ。貰うもの貰えれば、貧民は黙っているよ。帝国を敵に回しても、損だしな。

 というわけで、現実では、ハサンは立っている棒だった。俺もそうなんだけどね。だけど、ハサンは魔法使いだから、それが許されないのだ。

「不合格ですよ。ですが、サツキの気が晴れたので、見逃してあげましょう」

「やっぱ、壊れたんだ」

 母サツキは容赦がない。魔法使いハサンの裏切りをどうしても許せないから、精神的に追い詰めたのだ。それがわかっていて、ハガルはなんで、サツキを出したのやら。

「ハサン、大丈夫?」

 最後に見たハサンは、もう、抜け殻のようだった。

「老いが進んできています。寿命も近いですが、これから、どんどんと見苦しくなりますよ」

「力のある妖精憑きだから、死ぬまで若作りというわけじゃないんだ」

「賢者テラスだって、最後はしわしわでしたよ。お世話は楽しかったです」

「テラスのこと、好きだったんだな」

「………そうです」

 寂しそうに笑うハガル。

 力の強い妖精憑きは、ともかく執着が強く、欲張りだ。お気に入りだっていっぱいだ。ハガルのお気に入りは家族と今は亡き皇帝ラインハルトだけではない。ハガルはたくさん、お気に入りがいる。死んだ後も、お気に入りのままだ。

 その中に、俺まで入っているのは、驚きだ。お気に入りだから、俺がハガルに会いに行くと、いつも好物を出してくれる。こうやって、お気に入りを囲うのだ。

「ハサンは兄弟子なんだろう。ハサンも弱ってきたら、世話するのか?」

 師匠でもある賢者テラスを世話したのだ、兄弟子である魔法使いハサンも世話するだろう。

 ところが、ハガルは、イヤそうな顔をする。

「なんで、私がハサンの老後の世話をしないといけないのですか。あんな欠陥品、最後くらい、役に立つように死んでもらいますよ」

「兄弟子って言ってたよな!?」

「だからなんですか。百年の才を持っていながら、中途半端なことばかり。好きな女に対しても中途半端、筆頭魔法使いの予備としても中途半端、復讐も中途半端、王国での戦争なんか、ただの木偶の棒でした。どこに、尊敬する要素がありますか」

「年長者だろう!!」

「どこに年長者らしいとこが見られますか。幼い娘を復讐の道具にしている時点で、尊敬出来ませんよ」

 言われてみれば、確かにそうである。

 復讐は、魔法使いハサンが単独でやればよかったのだ。魔法使いって、色々と優遇されている。その立場を利用すれば、母サツキが苦しむことなく、復讐は出来ただろう。それをサツキのことも気に入らないから、とサツキが一番苦しむ方法で、復讐を行ったのである。

「ハサン、昔は、聖域間を飛べたんです。ところが、私が筆頭魔法使いとなってから、私が抜き打ちで命じてみれば、出来なくなっていました。その事実をテラスにも隠していたのですよ。だから、私はハサンが聖域間の移動が出来なくなったこと、テラスに黙ってあげました」

 それは、つまり、ハサンの弱味をハガルが握ったということである。そんな恩着せがましいこと言ってるが、ハガルの目論みは別にある。

 ハサンは、ハガルに絶対に逆らえない。弱味を握られているのだ。だけど、ハガルは復讐しているわけではない。だって、ハガルはハサンに対して恨みを持っていない。ただ、尊敬出来ないだけだ。

 ハガルはいつの日か、友人である俺の次兄ルキエルに、ハサンを差し出すため、筆頭魔法使い予備として不合格であっても、側に置いておくのだ。








 認識阻害の道具は役に立った。帝国に戻ってからは、道具を常に身に着けているお陰で、人前に出ても、どうにか走り抜けられた。

 ただ、貴族の学校では、その道具の効果が薄れるらしく、色々と言われた。

「見て見て、買ったんだ」

「無駄遣いするなよ」

 次席のユナンが、俺関係の小物の複製を自慢気に見せてきた。

「半分は寄付なんだから、慈善活動だよ。ほら、貴族だから」

「商人の儲けになってるぞー、騙されてるぞー」

「ロイドは今、人気者だからなー。家でも羨ましいと言われてる。次席で良かった」

 次席に、こういうので喜ばれるのは、なんともいえない。次席だから、俺も話しかけたんだから、間違っていないな。

 一年とはいえ、上級クラスなんだから、それなりに頭がいいはずなんだ。それでも、俺関係の物を身に着けて、喜んでいる。これ、一年後にはゴミなんだよなー。

 そういう騒ぎとなっているので、実は、大変なこととなった。俺目当てに、貴族の学校に侵入しようとする不届きものが出てきたのだ。

 さすがにこれは危ない、ということで、貴族の学校なんだけど、皇族様が通っているので、騎士団が配備されることとなった。

 そして、皇族の護衛、俺の他に増えたのだ。

「メッサ、大変だなー」

 休憩時間に俺が皇族セキラと廊下に出ると、待機している騎士団副団長メッサに遭遇する。

「立ってるだけって、辛いな」

 メッサ、皇族セキラの直属の護衛に抜擢された。ほら、俺とメッサは仲良しだ。団長も「よし、メッサに決めた!」 と叫んだとか。面倒だから、メッサに押し付けたんだな。

「メッサも、一緒に学生しようぜ。ほら、試験の写し」

 これはいい、と俺はメッサを誘ってみた。俺一人が真面目に学生なんて、不公平だ。

 メッサ、俺が掲げる試験の写しを目を細めて見た。

「俺、本当に勉強はできなくて、筆記試験、ギリギリ合格だったんだよ。面倒見のいい奴に泣きついて、教えてもらって、それでやっと合格したんだ」

「あーそーなんだー」

 俺にとっては、貴族の学校の試験なんて片手間だ。難しくない。だけど、出来ない奴にとっては、難解なんだよな。

「情けないことに、副団長の書類仕事、部下に手伝ってもらってるんだ。俺、どうして副団長になっちゃったんだろう。平に戻りたい」

 さめざめと泣きながらも、護衛はしっかりするメッサ。そういうとこだろうな。この男、不幸体質なんだが、妙に人に好かれるんだ。

「今度、王国から使者が来るという話、聞いたか? 戦争の協力の感謝のために、わざわざ、使者が来るんだって。偉い人って、面倒くさいことやるよな」

「へー、そうなんだー」

 来るんだ、リスキス公爵の血縁サンセ。きっと、サンセだ。ほら、筆頭魔法使いハガルを殴るって、宣言してたから。絶対に使者になる、と立候補するよ。

「王国も大変だよなー。王族の男子二人も戦死だってなー。今の国王の息子は二人だけ。それで、王妃と愛妾が心の病になって、公務にも出られないとか。あとはお姫様が残っているだけだし、かといって、国王は高齢だから、今更男子を作るのも難しいときてる。婿をとるのか、女帝にするのか」

「詳しいな。メッサも勉強してる?」

「勉強会が開かれたんだ。ほら、王国の使者がまた来るから、と勉強させられたんだよ。知らないで、余計なこと言わないように、て。誰が王国の使者に話しかけられるかわからないからな」

「確かに、騎士が一番、皇帝の近くにいるからな」

 戦勝のお礼だから、今度は、公式の場だろう。戦争前は、密談みたいに狭い会談室だったが、戦後は大広間だな。帝国、戦争に協力しただけなのに、お祭り騒ぎだから。ちょっとしたことを大袈裟に喧伝するのは、大事な情報操作である。

 移動途中、なんか、毛色の違う騎士服の集団がいた。その先頭に、王国でよく見た顔がいた。

「見つけたぞ、ロイド」

「あー、お久しぶりです、サンセ様ー」

 リスキス公爵の血縁サンセである。なんで、俺を呼ぶかな? 俺の側には、皇族セキラがいるよ。まずは、皇族に挨拶だろう。順序、間違っているよ。

 だけど、サンセ、形相に好意とかはない。凶悪に笑って、俺の肩を掴んだ。

「一緒に、ハガルに復讐しよう」

「いや、無理だから」

「お前だって酷い目にあっただろう!!」

「サンセ様、諦観だよ、諦観。ハガル様に対しては、諦観が大事」

「えっと、ロイド、このお方は、誰?」

 普通に皇族への接近を許しているから、メッサは気になって、質問してくる。

「ほら、さっき話題になってただろう。王国のリスキス公爵の血縁サンセ様だ。この方、貴族なんだけど、王位継承権持ってるんだよ」

「失礼しましたーーーーー!!!」

 すぐにメッサは跪いた。近くで聞き耳たてていた学生諸君も、慌てて跪く。王国の王位継承権持ちということは、帝国でいえば皇族である。

 俺も右に習えで跪きたいのだが、サンセは力いっぱい、俺の肩をつかむし、皇族セキラは俺にしがみついて震えているし、動くに動けないよ。

「ロイド様、置いていかないでください!!」

 そこに、ちょっとお花摘みに行っていたお嬢さんサリーが俺とリスキス公爵の血縁サンセの間に割り込んだ。サンセの手が俺から離れたよ。

「これはまた、可愛らしいお嬢さんだな。ロイドの婚約者か?」

「そうです!!」

「違うよ!!」

 しまった、俺とサリーの声が重なった。それを聞いたサンセはニヤニヤと笑う。

「そうかー、婚約者がいるのか。王国では随分と世話になったことだし、贈り物を出そう。えっと、名前を教えてくれ」

「わたくし、男爵の娘サリーと申します」

 婚約者扱いされたサリーは上機嫌で、綺麗な礼をする。それに、サンセは感嘆とする。

「男爵とは思えない、素晴らしい礼だ。サリー嬢、婚約者を借りるが、いいか?」

「はい!!」

「婚約者じゃないよ!! 勝手に俺を貸し出さないでーーーーー!!」

 早速、サリーが裏切った。いや、裏切ったわけではないんだ。サリーは俺をサンセに貸しただけである。

 そして、残るは皇族セキラである。サンセはセキラにニコニコと笑顔を向ける。

「セキラ、今度、ロイドと一緒に、王国に招待しましょう。王国を隅から隅まで、私が案内します」

「え、本当に!?」

「戦争では随分とお世話になりましたからね。その事も話し合いたいので、ロイドを貸してください」

「わかった。ぼ、ボクには、騎士団副団長がいるから、大丈夫だよ」

 そして、皇族セキラは、寄生先を騎士団副団長メッサに変えた。

「さあ、ハガルの元に案内してくれ。私は帝国では道一つわからないからね」

 んなわけないだろう。よりによって、俺がいる貴族の学校に来たんだ。俺の案内なんかなくったって、サンセは城に行けるよ。

「これから、謁見なんだ」

「まだ、挨拶もしていない。奇襲だ、奇襲」

 もう、俺の前にいる時点で、筆頭魔法使いハガルにはバレてるよ。皇族セキラには、筆頭魔法使いの妖精が守護でくっついている。今頃、妖精がハガルに告げ口しているだろう。

 こうして、俺は無理矢理、リスキス公爵の血縁サンセの復讐に巻き込まれた。仕方がない。これも大事な外交だよ。






 リスキス公爵の血縁サンセ、本当に、宣言通り、筆頭魔法使いハガルを見るなり、殴りかかったのだ。サンセ、ただ、来たわけではない。しっかり妖精除けやら色々と身に着けて、対策とってたんだ。

 並の魔法使いなら、サンセの対策、通用したんだ。しかし、相手は千年の才能の化け物である。持っている妖精も化け物だ。そんな対策、玩具だよ。

 多くの人の目の前で、リスキス公爵の血縁サンセは、ハガルの妖精によって吹き飛ばされた。俺に出来ることといったら、サンセを怪我させないように、妖精の目を使って、野良の妖精さんにお願いすることである。

 こうして、リスキス公爵の血縁サンセの復讐は失敗したのだった。

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