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呪いの支配者  作者: 春香秋灯
王国の聖女
56/101

力が欲しいか!!

 俺の一日は決まっている。朝起きて、メシ食って、お嬢さんサリーと一緒に馬で学校に登校して、皇族セキラの護衛しつつ勉強して、合間に生徒会役員の手伝いをして、学校終わったら、セキラを城に送り届けて、そのまま、直帰である。

 俺は、貧民だから、日陰で生きてるんだ。侯爵家の食事は苦手である。だから、さっさと退散したいのだが、最近は、捕まっている。

「サンセ様、不便はありませんか?」

 侯爵家で一番偉いはずの侯爵マキラオは、上座に座っている人に笑顔で話かける。そんなマキラオの食事は消化によいもので、かつ、薬が常備されている。また、吐血したんだな。

 上座には、王国からの賓客であるリスキス公爵の血族サンセが座っている。

「不便なんてとんでもない。友人のお宅にお邪魔してるのですから、気にしないでください。なあ、ロイド」

 真っ赤なワインが並々と入ったグラスを掲げて、俺に話しかけてくれる。ちなみに、俺は貧民なので、末席だよ。下座の下座だよ!! 話しかけんなよ!!!

 俺が無言でいると、侯爵マキラオが血走った目を俺に向ける。やば、また吐血されちゃうよ!!

「サンセは、今日はどこに泊まるんだ?」

「友人の所だよ、なあ、友人ロイド」

 友人連呼するから、俺はもう、サンセのことは呼び捨てだよ。貧民には、身分なんかくそくらえだ。友人っていうなら、そう扱ってやるよ!!

 そして、侯爵マキラオはお腹をおさえる。もう、気楽にしてくれればいいのに。

「ほら、友人、他にいるだろう。皇族セキラ様も友人友人」

「私はほら、王位継承権を持っているといっても、正確には貴族だから。皇族とは対等にはなれないよ」

「俺、貧民だから、貴族様とは対等にはなれないなー」

「お前は私より下だからいいんだよ」

 ニヤリと笑うリスキス公爵の血族サンセ。本性、どんどんと出してきたな!!

「旦那様、薬を」

 甲斐甲斐しく使用人たちが、侯爵マキラオを世話する。王国の賓客の前では失礼なんだが、もう、日常だから、どうしようもない。サンセも気にしない。ほら、友人の宅にお世話になってるんだからな。むしろ、サンセが気を遣え。

 俺はさっさと食事を終わらせる。中座じゃないよ。きちんと食べきったから。

「今日も残さず食べてくださいましたね」

 たまたま、様子を見に来た料理長が俺を誉めてくれる。

「あんたの料理だからな」

 料理長の料理は完食することにしている。料理長、俺の味の好みをよくわかってくれてるから。

 俺が席を立つと、リスキス公爵の血族サンセまで席を立つ。

 何か言ってやろうか、と見たら、サンセ、きちんと食事を終わらせていた。こいつも、すっかり料理長と仲良しになったな。

 食堂を出る時は、俺とサンセが並んで歩くこととなった。

「あんた、さっさと王国に帰れよ。マキラオがまた吐血したぞ」

「あれで侯爵なんだから、この家、大丈夫か?」

「仕方なく、侯爵になったんだよ。跡継ぎになれる人材がいなくて、マキラオがなったんだ」

「よし、ロイド、この家を乗っ取ろう」

「しないよ!! お前、こんなトコで変なこというなよ。俺は、ここの家臣に命狙われたことがあるんだからな。波風たてたくないんだよ」

「お前が侯爵になれば、あの男だって楽になるだろう」

「逆だ。心神喪失になる。それ以前に、あんたがいなくなれば、ここも平和になる。さっさと帰れ」

「ハガルを殴るまでは、帰らん」

 リスキス公爵の血族サンセは、まだ、筆頭魔法使いハガルを殴ることを諦めていなかった。





 ちょっと前、王国が敵国と戦争することとなった。王国には魔法使いが存在しないので、帝国が助力することとなったのだ。

 戦争するってのに、王国は内輪もめで平和なんだ。開戦派と融和派、なんて出来て、戦争賛成反対と言い争い。タチが悪いのは、第一王子と王太子は融和派、国王は開戦派なのだ。その国王は、病気で倒れているから、第一王子と王太子が勝手に外交しよう、なんてしていたけど、それを黙って見ていないのが、貴族の中の王族と呼ばれるリスキス公爵家である。

 どっちにしても、不可侵条約の解除をしないといけないので、開戦派も融和派も、それが出来る帝国に泣きついたわけである。

 結局、不可侵条約の解除のための石? を敵国側に投げつけて、これで不可侵条約はなくなったー、となるはずだったんだけど、筆頭魔法使いハガルが、この石に何かを仕掛けたのだ。投げたら、なんと、岩の雪崩が起こったのだ。これにより、開戦とか融和とか、どうでもよくなったわけである。

 結果、帝国側の奇襲で、王国は勝利したのだ。王国は融和派を排除し、再び、不可侵条約を締結し、敵国とは縁を切ったわけである。

 しかし、筆頭魔法使いハガルの所業に、怒り狂ったリスキス公爵の血族サンセは、ハガルを殴る宣言をした。そのために、わざわざ、戦争に助力のお礼の使者に立候補して、帝国にやってきたのである。

 まあ、筆頭魔法使いハガルを殴るって、無理なんだよね。サンセは色々と準備して、ハガルに向かっていったのだが、結局、吹き飛ばされて終わったのだ。

 外交関係は、心の広いハガルが許して、円満に終わったのだ。

 が、リスキス公爵の血族サンセは諦めなかった。王国の他の奴らはさっさと帰して、サンセだけ帝国に居座ったのである。






 筆頭魔法使いハガルと、リスキス公爵の血族サンセは謁見室で向かい合っていた。上座には、皇帝アイオーンを座らせ、末席には貧民である俺が座らされていた。

 たくさんの目撃者の前でやらかしたサンセ。ハガルを殴ろうとするなど、明らかに外交問題である。しかし、サンセはハガルの妖精によって吹き飛ばされた。天高く、と表現するほど、高く吹っ飛んだのである。どうにか、俺が妖精の目を行使して、サンセを助けたが、いい音をたてて床に叩きつけられた時は、悲鳴があがったものである。

 どっちが悪い、なんて言ってられなくなった。サンセが無事、立ち上がったが、すぐに拘束である。サンセと一緒に来ていた王国の者たちは真っ青である。口で言ってるけど、本当にやるなんて、思ってもいなかったんだよな。

 俺はサンセに道連れにされていたので、そのまま、サンセと連行である。そのまま、皇帝アイオーンの前に連れて行かれ、事情を説明した。

 皇帝アイオーンは温和な男だ。およそ、争い事とは無縁な優しい人なんだよね。だから、ハガルとサンセの話し合いの場を設けたのだ。

 そこに、俺はいらないと思うんだよなー。事情説明で解放されるかと思っていたが、強制的に、また、連行される俺。えー、俺、外交のために従っただけなのにー。

「ロイドから聞いたよ。王国相手に、なんてことをしてくれたんだ」

 一応、この場では最年長の皇帝アイオーンが筆頭魔法使いハガルを叱った。

「国王には、書状で伝えましたよ。あの石にどんな仕掛けをしたのか」

 どうだろうか? 確かに、皇族セキラから王国の国王へ、筆頭魔法使いハガルの書状は手渡された。しかし、内容は知らないんだよなー。知っているのは、国王のみである。

「私は聞いていない。だいたい、期限もあんなに短くして、どういうつもりだ!?」

「長くしたら、戦争は難しくなるでしょう。時間を与えなかったから、戦争が出来たといっていいでしょう」

 そうなると予想していたから、ハガルはあえて、石の期限を短くしたのだ。

 この場で問題となったのは、筆頭魔法使いハガルが王国と敵国が戦争をするための、神からの戦争許可である。王国と敵国は、神を介した契約により、不可侵条約を結んでいた。この不可侵条約は、わざと穴が作られている。敵国から戦争やりたい、と訴えれば、不可侵条約は解除出来るのだ。

 ただし、神を介した契約なので、きちんと神の許可をとらなければならないという。

 神の許可をとるなんて、そんじょそこらの人では出来ない。力の強い妖精憑きが可能という。王国では、妖精憑きを支配する土壌がないので、仕方なく、帝国に頼るのだ。

 帝国では妖精憑きを支配し、魔法使いとして使役している。その中で最強と呼ばれるのが、筆頭魔法使いハガルである。ハガルは、王国からの依頼を二か月も放置したあげく、やっと戦争許可の石を作ったのだが、その期限を短くしたのだ。さらに、実際に使用したら、戦地を岩の雪崩を起こす、なんて仕掛けを加えたのである。そのせいで、敵国は大損害となった。

 王国は、敵国に言われるままに後退していたから、岩の雪崩から逃げられたのである。

 いくら言いなりの王国といえども、我慢の限界であった。リスキス公爵の血族サンセは、筆頭魔法使いハガルに復讐するために、わざわざ、帝国に来たのである。

 しょうもない。俺は心底、そう思っている。長くハガルと付き合っていればわかる。この男には何言ったって無駄だ。だって、化け物なんだもん。言葉が通じないよ。

 しかし、王国は、そんなこと知らない。被害はなかったが、酷い目にはあったのだ。結果は良かったが、何も知らされていなかったので、リスキス公爵の血族サンセは、その事に怒っていた。

「国王からは聞いていなかったのですか?」

 ハガル、きちんと順序を守ったのだから、国王に罪をなすりつける。

「期限を読んで、その先を読み進めてなかった、と聞きました。わざと、期限のところだけ、大きく書いて、あの石にされていた仕掛けは小さく書かれていましたね。気づいた国王は、戦場に行くサツキに頼み込んで連れて行ってもらったそうですが、その時は、終わった後だと言ってました」

 それで、国王が戦場に居たのか。体調万全でない国王が、母サツキと一緒に、敵国の裏から襲った軍勢の中にいた理由がわかった。きっと、サツキも読んでいたな。あの女も、今回の企みに関わっている。

 しかし、筆頭魔法使いハガルは、母サツキの名を言わない。この男は、妙な所で男らしい。

「最後まで読んでいると思っていましたよ。やはり、病床の身では、優秀な国王も失敗してしまいますね」

 笑顔でハガルは受け流す。そりゃそうだ。書状、ちゃんと出したし、書いたもんな。全文、読む前に、挙兵を命じた国王も悪いな。

「国王が隠し通していた事実をあの書状に書き連ねるとは」

「背中を押してあげたのですよ。役立たずにの王族なんて、さっさと処分すればいい。帝国だってそうします」

 あの書状には、国王の子である第一王子と王太子が、実は浮気で出来た子、ということまで書いてあったな。ハガルには気を付けよう。どんな秘密を握っているのやら。

「内政干渉だ!!」

「そうなるといけないから、内緒にしてあげます。感謝してください」

 俺もハガルを見習って、貝のように堅く口を閉じよう。俺は口を両手で塞いだ。

 リスキス公爵の血族サンセ、何を言っても、ハガルには勝てない。それをわかっていたから、殴って、恨みを晴らしたかったのだ。

 怒りで顔を真っ赤にして震えるサンセ。その向かいではハガルはいつもの微笑みである。そんな二人を見て、深く溜息をつく皇帝アイオーン。

「ハガル、王国への干渉はほどほどにしなさい。今回のは、やり過ぎだ」

「私は帝国第一です。敵国と王国が仲良く手を結ぶのを黙って見ていません」

「他にやり方があっただろう」

「私は、最善を選びました。王国には時間がありませんでした。国王の食事や薬には毒を盛られ、内政は融和派に乗っ取られていました。病床の国王では、開戦は不可能です。だったら、時間を与えずに、強襲ですよ。その事は、セキラにも話してありました」

「俺は聞いてないよ!!」

 思わず、俺は口を挟んだ。ちっくしょー、皇族セキラに俺は裏切られてたのか。アイツ、俺に内緒にするなんて!!

「ロイドに話すと、滅茶苦茶にされます。あなたは、そういう星の巡りを持っていますから」

「持ってない!!」

「自覚がないのですね。あなたは破格の英雄の運命を持っています。私でも、あなたの存在には振り回されるのですから」

「ち、違うと、思う」

 最近、自信がない。俺は地味に生きたい、と常に願っているけど、どんどんと逆になっていくんだよな。おかしい、俺、多くを望んでないのに。

 皇帝アイオーン、筆頭魔法使いハガル、さらにリスキス公爵の血族サンセまで、俺を呆れたように見た。

「ロイド、自覚持ったほうがいいよ」

「否定しても、これまでの所業が物語っています」

「新聞を見たが、お前が貧民だとは思えないな」

 とうとう、帝国の情報操作のせいで、王国側にまで、俺の情報が流れた!! 俺は両手で顔を覆って、天を仰いだ。俺、生涯、貧民だもーん。

「ですが、このままでは、サンセの気が収まらないでしょう。だったら、私への復讐するための力を授けてあげましょう」

「貴様の施しを受けて復讐だと? 明らかな罠とわかっていて、受け入れるわけがないだろう!!」

 筆頭魔法使いハガルの提案を最後まで訊かずに拒否するサンセ。そりゃそうだ、怪しいもんな。俺もその提案は拒否するな。相手がハガルだけに、絶対に裏がある。

 ハガルは、机の上に、見覚えのある道具を出す。

「魔道具 妖精の目です」

「確か、妖精憑きの力をただの人にも与えるという魔道具」

 さすが、貴族の中の王族と呼ばれるリスキス公爵の血族である。知識を持っていた。

「それは、才能がないと、ただの人は廃人になるという、劇薬だな」

 そして、欠点もよく知っている。

「よくご存知ですね。ですが、この妖精の目は、改良版です。妖精の目を実際にただの人の装着させ、定期的に身体検査をして、それによって、改良されたものです。といっても、改良途中ですけどね。まだ、完全な安全面の確認が途中ですが、欠点は全て解消されています」

 これで、興味を示すサンセ。身を乗り出して、妖精の目を手にする。

「ただの石ころに見えるがな」

「そこに、実際に装着している人がいますよ」

「っ!?」

 ハガル、俺が使用者だと暴露しやがった。俺は一生、秘密にしたかったのにー。サンセは俺の両目をじっと凝視する。

「ただの目に見えるが」

「改良しましたからね。ロイドは、妖精の目を休止出来るという特殊な体質でしたので、実験体としました」

「実験体、だと?」

「貧民ですから」

 笑顔で言い切るハガル。俺は笑うしかない。実際、そうなんだから。

 リスキス公爵の血族サンセとしては、俺に情でも湧いたのだろう。驚いたように俺を見た。

「ロイドのお陰で、妖精の目の欠点は改良されました。妖精憑きとしての力の使用には相当な負担となりますが、休止させれば、ただの目です。逆に言えば、短時間であれば、あなたも妖精憑きになれます。これを使えば、あなたも私に復讐出来ます」

「そんな誘い」

「ロイドは、妖精の目を使って、私に勝ちましたよ」

「言わないで!!」

 どうして、それを言っちゃうかな!! この事実を皇帝アイオーンも知らなかったようで、驚愕していた。

 暴露したハガルはというと、不貞腐れている。負けたことが、悔しいときている。

「あれは、色々と条件がハガル様に不利だっただけだろう」

 詳しくは言えない。ただ、俺に有利だったから、ハガルに勝てただけである。

 ハガルが負けたのは、城の中だったからだ。城はとんでもない妖精除けを施されている。そのため、魔法使いは弱体化されるのだ。城仕えの魔法使いって、実は、かなり強いんだよ。

 そういう、妖精憑きにとって不利となる場所で、俺はハガルの妖精を盗ったのだ。盗ったといったって、一部だ。俺の妖精の目でさえ見えない高位の妖精がいるという。そんな化け物が手加減している時の話である。正確には、勝ってない。

 だけど、ハガルにとっては負けだという。自尊心の高い妖精憑きだから、手加減して負けたから、悔しいのだ。

 俺が否定しないのと、ハガルの表情を見て、リスキス公爵の血族サンセは信じた。

「つまり、これを使えば、ロイドのように、貴様の妖精を奪えるわけだ」

「ロイドのはありませんが、こちらには、安全装置がついています。才能がない場合、すぐに休止するようになっていますよ。さて、あなたは才能があるのでしょうか」

「いいだろう、貴様の企みに乗ってやる。どうせ、実験体が一人では足りなかったんだろう」

「帝国への長期滞在許可を出します。定期的な検査もしますから。あわなかったら、すぐに、あなたの目と交換しますよ。それまで、あなたの目は、私がしっかり保管します」

「至れり尽くせりだな」

「下心あってです」

 リスキス公爵の血族サンセは不敵に笑い、ハガルは嫣然と微笑んだ。

 こうして、サンセは、片目を抉り、妖精の目を装着したのだった。






 というわけで、リスキス公爵の血族サンセは帝国に長期滞在することとなったのである。ただ、滞在させるわけにはいかないので、俺という監視をつけたわけだ。そうなると、サンセは俺がお世話になっている侯爵家で暮らすこととなったのだ。

 俺が離れに移動すれば、サンセも一緒にやってくる。

「あんたさ、屋敷に部屋、用意されてるんだから、そっちで休めよ」

「友人のトコに泊まる許可を帝国からはとってるんだ。ここに泊まる」

 すでに、離れの生活に馴れているサンセ。世話する使用人もいないというのに、勝手に服を片づけて、としている。こいつ、公爵の血族のくせに、生活力あるな。

「貴様も、ベッドで寝たらどうだ」

 毎日、綺麗にされているベッドに座っていうサンセ。

「俺、ここにきたばかりの頃、命狙われたからな。真っ先にベッドを襲おうとしてたんだ」

 それを聞いて、サンセは表情を強張らせた。毎日、サンセは気楽に使っているベッド、実は危ないんだよ。

 さすがに、王国の賓客に、何かすることはない。それ以前に、野良の妖精さんが、そういうのを排除してくれてるらしい。

「今日は、どこにも行かないのか?」

「いつも大人しくしてるよ!!」

 表向きは、そうなっているのだ。ほら、夜遊びしてると、侯爵マキラオがまた吐血しちゃうよ。もう、取返しがつかないほどになってるけど。

「えー、夜遊びしようよー」

「お前、真面目そうな立場なのに、悪ガキだな」

「そりゃそうだ。私は、異端児だからな」

 胸張っていうことじゃないよ。王国では、こいつ、色々とやったんだな。

 そりゃ、王国から、「帰っておいで」なんて使者こないよ。帝国に居座って一か月というもの、何の音沙汰もない。

 それどころではない、ということもある。王国は今、跡目争いで大変なこととなっているのだ。

 戦争で、第一王子と王太子を一度に失った。そして、国王の子は姫しか残っていない。こうなると、婿探しである。姫だって、使えない女を跡目にするわけにはいかないのだ。婿だって、実力のある者をあてがうだろう。

 こんな大変な時だってのに、国王を支える王妃は心の病になって、静養である。国王一人で、大変そうだな。

 そういう表向きの話と内情を俺は知っている。リスキス公爵の血族サンセだって、婿候補になってもおかしくないのだ。本性はともかく、実力はあると思われる。一か月も付き合ってみれば、サンセはただ血筋で胡坐をかいているようなぼんくらではないことはわかる。

 よくある話だ。サンセは優秀すぎるから、周囲から煙たがれているのだろう。むしろ、サンセは帝国で賓客してもらったほうが、王国で権力を握りたい皆さんは嬉しいのだ。

 だからって、俺に押し付けるなよ。サンセもわかっていて、それに乗ってる感じもある。

「ほら、俺とお前は、深い仲じゃないか」

 そう言って、サンセは器用に片目を細める。

 一見すると、サンセの片目は普通の目である。だが、これ、俺と同じ、魔道具 妖精の目を装着しているのである。

「一緒に、ハガルを殴ろう」

「無理だから!!」

 俺はそこの所、強く否定した。どうして、俺の周りって、こんなんばっかりなんだ!?

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