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いともたやすく行われたえげつない行為

 ・・・遡ること約十分。

「さてさて、あの二人はどうなるかね。」

 部屋の中央に机とセットで置かれた立派な椅子に、どっかりと腰掛け両手で頬杖をつくケンジが楽しそうに言う。

「今回も平行線じゃない?」

 スマホの明かりを頼りに本棚の本を物色しながらヒカリは答えた。

 二人は二階の角に位置する書斎を陣取り、タカオとキョウコが探しに来るのを待ち構えていた。

「何でくっつかんかねぇ。あの二人は」

 そう言ってケンジは頭の後ろで両手を組み、座ったままわざとらしくふんぞり返る。

「いやいや、あの二人は本人達が気づかないうちに付き合ってるってパターンだと思うよ。」

 ヒカリは本棚に視線を向けたまま苦笑いした。

「キャー先輩怖いー。・・・大丈夫だ。俺が守ってやる。とまでは行かなくとも、そろそろ付き合わないか?・・・あ、いいッスね。付き合っちゃいましょう。くらいはあってもいいんじゃないかなぁ?」

 ケンジは忙しなく一人芝居をして自らの願望を述べた。

「前者は絶対にないけど、後者も可能生はかなり低いね。」

 本棚から手に取った一冊の本を凝視しながら、ケンジの発言をバッサリと切り捨てる。

「そもそもキョウコちゃんって、何であんなに相良君にべったりなんだろう?」

 本を元の場所に戻したヒカリは、思い出したように顔をやや上に向けた。

「ああ、前に本人に聞いたけど、元々幼馴染で小さい頃、野良犬に襲われそうになってる片桐ちゃんをタカオが助けたって」

「確かにそれはベッタリになるのも納得出来るね。」

 ケンジの話を聞き、ヒカリは何度も小刻みに頷く。

「いや、他にも幼き日に将来を誓い合ったり、前世からの運命だったり、はたまたすれ違ったときに電流が走ったりと・・・」

「ちょちょちょ・・・どれ?」

 凄まじいスピードで話を広げていくケンジに、本当の答えを求めヒカリが視線を向ける。しかし、ケンジは微妙な笑みを浮かべながら頭を抱えていた。

「色々聞かされ過ぎてどれが本当かわかんね。ワンチャン全部だったりして」

 そう言ってケンジは肩をすくめる。

「内容からして全部キョウコちゃんから聞いた話だよね?相良君はなんて?」

「知らん。と・・・」

 信憑性の高そうな情報源からの答えは一言で終わってしまった。

「ああ・・・」

 真実に辿り着くまでに、面倒な道のりを歩まなければならないであろう事をヒカリは悟った。

「・・・ああそうだ、その前に相良君絶対に怒ってるよ。今回はどうやってご機嫌を取る気?」

 変な感じの空気になってしまい、それを打ち払うべくヒカリは話題を変える。

「いつも通り飯奢れば丸く収まるんじゃね?でもまあ、今回ばかりはちょっとやり過ぎたから、今日は奮発して焼肉にするかな・・・」

 ヒカリの質問にケンジは口元に笑みを浮かべ再び肩をすくめた。そして、やり過ぎと認識したケンジは、その後のプランについてぶつぶつと考え始める。

「じゃ、私の分も奢ってもらおうかな。」

 ヒカリは呆れつつもケンジのおふざけに乗っかる。

「いや、それはちょっと・・・」

「ちょっと暗いな・・・」

 難色を示すケンジをスルーし、ヒカリは入口付近の壁に設置されたスイッチに向かった。

「さすがに電気止まってるでしょ?」

 ケンジの言葉を背にスイッチを押す。すると天井の照明が点灯した。

「あ、ついた。」

「電気、通ってたのか・・・?」

 少し嬉しそうなヒカリに対し、困惑するケンジ。

 ガタン。

 不意に天井から物音がし、二人は言葉を発さずに発生源と思われる場所を凝視する。しかし、そこは本棚で死角になっていた。

 ヒタヒタ。

 そして、生物的な物音が続き、それは顔を出した。

「・・・!」

 目が異常に肥大化した奇怪な顔に、二人は絶句し凍りつく。

 その事を気にする様子もなく、奇怪な顔を持つ者は、スルスルと蜘蛛のように本棚を降りると二人に全体像を見せた。

 バサバサの黒い髪に肌色の皮膚。そして、筋肉質な身体つきに両手から生える鋭い爪と恐怖に殺意が混じったようなクリーチャーだ。

 そんなクリーチャーが四つん這いの姿勢で二人を見上げていた。

「な・・・何、これ?」

 両手を口に当て怯えるヒカリ。

「逃げるぞ!」

 しかし、ケンジはそう叫ぶと、ヒカリの腕を引いて書斎を飛び出した。

 ヒカリはバランスを崩しつつもすぐに態勢を立て直し、ケンジとともに走る。

「ねえ!何あれ!?」

 ヒカリが悲鳴のような質問を投げかける。

「わかんねえ!でも、とにかくヤベェぞ!」

 しかし、返ってきたのは答えにならない答えだった。

 背後からはペタペタという不快な足音が追走し、その音は確実に距離を縮めてきている。

「ケンジ!後お願い!」

「え!?ちょっ・・・」

 廊下から二階ホールに到達するとヒカリはそう言い残し、困惑しつつも走り続けるケンジを背に道を逸れる。ヒカリが向かったのは階下へと続く階段だ。

「・・・!」

 ヒカリは躊躇することなく階段の上からした。そして、踊り場に着地すると同時に一回転して衝撃を逃し立ち上がり、そのまま流れるように目の前の壁を蹴って方向転換をする。

「せーのっ!」

 そこから掛け声とともに、さらに階下へとジャンプをし先程と同じように一回転で受け身を取る。

「・・・ふぅ。」

 ケンジにまんまとヘイトを押し付けたヒカリはホッと胸を撫で下ろす。

 しかし、次の瞬間。大きな塊が目の前に降ってきた。

「う、嘘・・・」

 顔面蒼白でへたり込むヒカリを嘲笑うかのように、クリーチャーは口を開け歯を剥いた。

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