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何それ知らない

「・・・で今に至る。」

「おい、何普通にゲスい真似してんだよ・・・」

 いともたやすく行われたえげつない行為にドン引きする。

「とにかくケンジはまだ二階にいる筈。」

 俺のツッコミを強引にスルーしたヒカリは階段の上の方を見据えた。

「お、おう・・・じゃあ、行ってみるか。」

 こいつもこいつで油断出来ないと思いつつ、俺は二階に行くことにした。

「そのまま走って逃げたとしたら、その書斎とは逆の角部屋ですね。」

 キョウコが大まかな予想をつける。

「よし、行こう。」

 そう言って不安と恐怖によって、いつもより重い足を無理矢理持ち上げ階段を登る。


「それにしてもあの化け物は一体何なの?」

 二階に上がりケンジが居るであろう部屋へ向かう道中、沈黙に耐えられなくなったのかヒカリが口を開く。

「ここの住人の怨念とかじゃないッスか?」

「あんな存在感MAXな怨念あるか?あれじゃ海外のB級ホラーだ。それにこの屋敷にいわくはない筈だ。」

 俺はキョウコの意見を真っ向から否定した。

「じゃあ、先輩は何だと思うんですか?」

 キョウコがむくれて答えを求める。

「何らかの薬物をキメた人間。こっちの方がまだしっくりくる。」

 否定したはいいものの答えを用意してなかった俺は、どうにか納得出来そうな解答を絞り出した。

「確かに包丁女はそうかも知れませんが、あのクリーチャーの説明がつきません。」

「普通に考えてありえないけど、一番しっくり来るのはバイオハザードみたいな生物兵器だよね。」

「確かにしっくり来るが・・・有り得なさすぎる。」

 ヒカリが的を得た答えを出すが、現実的に考えていろいろ無理がある。

「でも、あのクリーチャーからして有り得なくもなさそうですよね。」

「なあ、キョウコ、お前なんか知ってるんじゃないか?」

 ふと俺は包丁女との遭遇からの一連のことを思い返し、キョウコに聞いてみた。

「え?先輩、何言ってるんですか。」

「突然どうしたの?相良君。」

 当然のように困惑するキョウコとヒカリ。

「包丁女のときのあの突撃に、クリーチャー相手にあの立ち回り、普通初見で出来るか?・・・いや、出来るな。お前の場合。悪いな疑って。」

 持論を語るが直後に日頃のキョウコを思い出し、早々に発言を取り下げる。

「わかって頂けて光栄です。お詫びは体で受け取りましょう。」

「黙れ。」

 いつも通りの流れになり、いつも通りのオチがついたところで、目標としていた部屋の前に到達した。

「・・・よし、入るぞ。」

 俺は覚悟を決めると音を立てずにドアを開け、室内を確認する。

 中はベッドに勉強机と椅子、タンスといった必要最低限の家具が置かれた居室で、入口から見た限りでは何も居ない。それを確認すると三人でそろそろと入室し、音を立てずにドアを閉めた。

「ケンジー、居るかー?」

 やや抑えめの声量で呼び掛ける。

 カタン・・・。

 微かな物音がしその発生源と思われる場所を凝視する。そこには大きな戸の付いたタンスが一つ。

 それを確認した三人は顔を見合わせ頷き合い、ゆっくりとタンスに近づく。

 そして、キョウコは椅子を持ち迎撃態勢が整ったことを目で伝えた。

 俺は頷きタンスをゆっくり開けると、膝を抱えるような姿勢でがっくりと頭を下げるケンジが入っていた。生きてはいるようだが濃い目の負のオーラを纏っている。

 俺はゆっくり戸を閉めた。

「ふぅー・・・」

 タンスに背を向け大きく息を吐くのと同時に、身体に入った力を抜く。

「入ってましたね。ケンジ先輩。」

 キョウコが椅子を下ろす。

「ああ、とてもじゃないが声を掛けられる雰囲気じゃなかった。多分、みんなやられたとでも思ってんじゃねーか?」

 数秒前に感じたあの重苦しい空気を思い出すが、特級呪物にも似た存在が背後のタンスに入っているとわかるとその威圧感は現在進行系だ。

「あの状態のケンジはそっとしておくのが一番だね。」

「じゃ、このまま三人で帰ろう。」

「うーん・・・それはちょっと・・・」

 俺の提案にヒカリが難色を示す。まあ、そうだろう。・・・いや、待った。こいつさっき普通にケンジを見捨てようとしてたぞ。

 バン。

 背後で戸の開く音がし、振り返るとケンジがタンスから顔を出していた。

「お、お前ら、無事だったのか・・・!?」

 驚愕の表情をしたケンジが口を開く。

「ああ、なんとかな。とにかくここを出るぞ。」

「待て。外には化け物がいる。」

 俺の呼び掛けにケンジは険しい顔をした。

「知ってる。あのクリーチャーならキョウコが追っ払った。」

「片桐ちゃんが?・・・いや、違う。それとは別なやつだ。」

 先程の顛末を手短に話すが、ケンジはなおも食い下がる。

「包丁を持ったヤバい女か?それならキョウコのロケット頭突きでダウンさせたぞ。」

「いや、片桐ちゃん何してんの!?違う違う、両腕が異様にデカい女だ。」

「・・・何それ知らない。」

 初めて聞くタイプの化け物に絶望感が駆け巡る。

「でも、ここに来るまで何もいなかったから今がチャンスじゃない?」

「とにかく早く出よう。」

 ヒカリの一言に全員の決心がついた。

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