表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
19/23

最悪の全員集合

「キョウコ、頼めるか?」

 包丁女の登場に対し、ケンジとともにテーブル運搬中の俺は、戦闘能力が最も高いであろうキョウコに対処を依頼した。

「任せてください。」

 キョウコは胸を張ってそれに答えると、包丁女にマチェットを構える。

 地下で包丁女を薙ぎ倒せたことを考えれば、キョウコは十分対応出来るだろう。

 しかし、そう思ったのも束の間、包丁女は瞬時にキョウコとの間合いを詰め斬りかかった。

「うわっ!」

 今まで見せなかった動きに、キョウコは驚きつつもマチェットで攻撃を弾く。

 弾かれた衝撃を利用し、後ろに飛んで元の位置に戻る包丁女。

「おい、大丈夫か?」

 その様子を見た俺は、思わずキョウコに声を掛けた。

「さすがに舐めてかかったらヤバそうです。」

 こちらに背を向けたまま答えるキョウコの声は、いつになく真剣だ。

 互いに見合い、どちらが先に仕掛けるかという状況に入っている。

「タカオ、止まるな。」

「ああ、わりぃ・・・」

 ケンジに促され、いつの間にか止めてしまっていた運搬作業を再開する。

 しかしその直後、天井の穴からクリーチャーが這い出し床に着地した。

「ひゅ・・・っ」

 変な声とともに一瞬にして息とテーブル運搬がストップする。

 ボコン、バキバキバキ。

 そして、今度は破壊音がし、金縛りのように動かなくなった身体の目をどうにか動かしそちらを見ると、モンスターが壁を破って部屋に侵入してきていた。

 最悪の全員集合だ。

 明らかにキョウコ一人では対処しきれない。かと言って全員総出でぶつかっても戦術次第ではどうにかなるかも知れないが、そんな物を立てているような時間はない。

「キシャアアアア!」

「うぉあっ!」

 傍らにあった椅子を引っ掴み、飛び掛かってきたクリーチャーの攻撃を弾く。

「クッソ・・・!マジか・・・」

 ケンジの苦しそうな声が聞こえ一瞬だけ視線を送る。

 背後ではケンジが、運搬していたテーブルを盾に、モンスターの攻撃からヒカリを守っているのが見えた。

 そして、正面のクリーチャーは再び攻撃態勢に入ろうとしている。

「クソ・・・ッ!やってやんよ。」

 絶体絶命の状況。俺は覚悟を決め、闘争心に火をつけた。

 俺は膝を曲げ重心を低くし、椅子の脚をクリーチャーに向けるような形で構えて迎撃態勢を取る。

「許せ。」

 ガシャーン。

 クリーチャーと睨み合い出方を伺っていると、聞き慣れない声が聞こえ、ワンテンポ遅れて派手な音がした。

 音のした方に振り返ると、入口に居た筈の包丁女が、ガスコンロのある奥の壁に張り付いている。そして、包丁女は糸の切れた操り人形のように、ガスコンロの上に落下した。

「え?」

 困惑しながら視線を入口に向けると、そこには白衣を着た筋肉質な白髪メガネの男が、肩を突き出すような姿勢で立っていた。

 どうやらこの男が包丁女にタックルを決めたらしい。

「やれやれ、何やら騒がしいと思って来てみれば・・・」

 男はタックルの姿勢を崩しながら呟いた。

 ハッとしてクリーチャーに視線を戻すと、その顔は男に向けられている。

「これは一体どうしたことか」

 そして、男はそう言いながら部屋に足を踏み入れた。

「キシャアアアア!」

 クリーチャーが奇声を上げながら男の横っ面目掛けて飛びかかる。

 しかし、男はクリーチャーの頭を片手で掴み受け止めた。

「すまない。」

 詫びの言葉とともに、男はクリーチャーの頭部を壁にめり込ませてしまった。

「おい、何なんだ。こりゃあ・・・」

 その光景から目を離せずにいると、今度はモンスターがデカい両腕を広げて男に襲いかかる。

 男とモンスターは手と手を合わせるようにガッチリ組みつき、真っ向からの力比べを始めた。

「さあヒトミ、決着を着けようか。」

 男は静かにそう言ってモンスターを押し切ると激しい頭突きを食らわせる。そして、怯んだ隙にモンスターを掲げるようにして上へ持ち上げると、力一杯床へ叩きつけてしまった。

「ゆっくり休んでくれ・・・」

 動かなくなったモンスターにそう告げると、男はゆっくり立ち上がり太い指でズレた眼鏡を直し、こちらに向き直った。

「さて・・・ところで君達は?道にでも迷ったかね?」

 男は静かに諭すような口調で聞いた。

「空き家だと思って肝試ししようとしてました。どうもすみませんでした!」

 ケンジは正直に話すと、腰をほぼ直角に曲げて謝罪をした。あんな戦いを見せられた後ではそうするしかあるまい。

「なるほど、そういうことか。まあ、良いだろう。怪我はないね?」

 男は口調を変えることなく納得し、更に聞いた。

「はい、ありません。」

 その質問にケンジはハキハキと答える。

「彼女達に遭遇して無事とは驚いたな・・・」

 周囲に転がる化け物達を一瞥すると男は肩をすくめた。

「あの、一体これは・・・」

 ヒカリが辺りを見回しながら恐る恐る口を開く。

「うーむ・・・話すと色々マズいんだが・・・彼女達を見られてしまった以上、話さねばなるまい。」

 男は腕を組み考え込むが、結論はすぐに出た。

「場所を変えよう。ついて来なさい。」

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ