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あー、バックレてー

「はぁ・・・はぁ・・・」

 モンスターを回避するために今までで一番速かったであろう全力ダッシュをした俺は、大きく息を切らしていた。

「クソが・・・!」

 そして、息を切らしながらも予定が狂ったことに対する怒りも忘れず吐き出した。

「・・・で、ここは?」

 両手を膝についたまま、呼吸を整えつつ周囲を確認する。大分暗いが見覚えのある立派なベッドと、壁に掛けられた複数の絵画から、ここは最初に来た寝室だ。

 そして、誰もいない。

「・・・あれ?やっべ・・・マジか。一人になっちまった・・・」

 もう一度辺りを見回した俺は改めて一人であることを悟った。そして、唐突に自分の置かれた状況を理解し、恐怖が一気に込み上げてくる。

「ヤバいヤバいヤバい・・・落ち着け俺。ここで焦っても碌なことがないぞ。」

 息が整いきっていないことなどお構いなしに言い聞かせるが、自覚できるレベルで俺は焦っていた。

「とりあえず深呼吸!すー・・・とへぇー!」

 息が上がっている状態で無理に深呼吸をしたため、変な声とともに盛大に息を吐きだしてしまう。

「ダメだ。こんな状態じゃ上手く出来ねぇ。何か別の落ち着く方法を・・・」

 俺は僅かな安息を求め、頭を振って部屋中を探した。

「あれだ・・・!」

 そして、遂に見つけた。

 俺はすぐさま視線の先のベッドに近づきそれに腰掛け、ポケットからスマホを取り出す。そのままスマホを操作し、SNSを立ち上げると平常心を取り戻すための現実逃避を始めた。


「・・・よし、大分落ち着いた。」

 情報を一通りチェックし、いくつかの投稿をし終える頃には、息は整い平常心も戻ってきていた。

 俺は無意識にポーチの食べかけのクッキーを取り出し、口に放り込む。

「ぶっふぉ・・・!」

 そして先程と同様、盛大にむせ返る。

「忘れてた・・・」

 まだ平常心は戻り切っていないようだ。

「とにかく何か使えそうな物を探すか・・・キーアイテム的なやつ。」

 ベッドから立ち上がった俺は、メンタルをより鎮静化するため改めて部屋を見回す。すると、壁際に転がる額縁とガラス片が目に入った。

「・・・あれはないな。」

 少し考えはしたが、やはり使えないと視線を外し検索を再開すると、今度は窓に注目する。

「あそこから普通に出れるよな・・・」

 窓に近づき調べてみると、ホラー物でありがちな何らかの方法で開かなくなっているということはなく、普通に開けることが出来た。

「・・・。」

 完全に日が落ちて真っ暗な外はから心地よい夜風が入ってくる。

「あー、バックレてー。」

 窓枠に両手を突き暗闇に本音を漏らす。

 ホントに逃げちまおうか?

 そんな考えが頭を巡る。しかし、それをした場合、自分は確実に助かるが一人で逃げたなどと非難される可能性がある。

「他のやつが生きてた場合、ほぼ確実に人間関係が崩壊するな・・・」

 さらに助けを呼んだとしても不法侵入や器物破損と違法行為をしている以上、社会的制裁は免れない。

「現実的にこれが一番厄介だよな・・・」

 そして、自問自答の末、導き出された答えは・・・

「やりたかねーけど、皆を探すしかないな・・・」

 決断した俺はため息混じりに窓を閉めようとする。

「・・・。」

 窓に手を掛けたままの状態で少し考えた。

「まあ、コーヒー取りに行くくらいならバチは当たらんだろ。」

 答えを出した俺は窓から外に出ると、庭に止めたバイクに向かう。そして、タンクに取りつけられたバッグから、コンビニで買ったコーヒーのボトルを抜き取ると、再び寝室に戻ってきた。

「やっぱこのクッキーは飲み物とセットで持ち歩かねーとな。」

 そんな独り言を言いながらベッドに腰掛け、残りのクッキーを全てコーヒーで流し込む。

「ふぅ・・・満足。」

 クッキーを食べ終えた俺は、空のパッケージとボトルをポーチにねじ込んだ。

「さて、行くか。」

 そして、俺はベッドから立ち上がる。しかしその瞬間、破壊音とともに何かが頭上に降ってきた。

「わ・・・!な、なんだ?」

 ベッドの上に仰向けで倒され、わけもわからずもがくが、何かが腹の上に乗っており身体を起こすことが出来ない。

「せ、先輩!?」

 腹の上から聞き覚えのある声が降ってくる。

「・・・キョウコか?」

 もがくのをやめ身体に乗っているものに目を凝らすと、見慣れたキョウコがそこに居た。

「良かった。先輩だ。・・・とりあえず、いただきます。」

 喜びを見せたキョウコだったが、少しの間をおいて意味深な挨拶をし俺の上着に手を伸ばす。

「おい、ふざけんな!降りろ!」

 再びもがいてキョウコを振り落とし、素早く立ち上がる。

「おっとっと・・・もー、先輩いつになったら私を受け入れてくれるんですかぁ。」

 キョウコは立ち上がり腰に両手を当て不満そうに言った。

「時と場合を考えろ。」

「え?時と場合が合ってれば良いってことですか?」

 俺の言葉にキョウコは目を輝かせる。

「うるさい黙れ。・・・ところで、お前なんで上から降ってきたんだ?」

 会話の流れを一言で断ち切ると、俺は話題を変えた。

 キョウコはホールでの散開のとき、俺と同じ方向に逃げた筈で上の階には行っていない。

「ええ、あの後・・・」

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