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ドヤ顔すんな。指へし折るぞ。

「うおおおおお!!」

 ケンジの合図と同時に、俺達は雄叫びを上げながらロッカーを壊さんばかりの勢いで飛び出した。資料室には何もいない。しかし、俺達は構わず部屋のドアを蹴り開け廊下に雪崩れ込む。

 廊下には驚いたような顔で振り返ったまま、動きを止める包丁女がいた。

「うおおおおお!!」

 しかし、俺達は勢いを緩めることなく包丁女を薙ぎ倒し、先程調査した研究室を通り過ぎる。そして、上へと続く扉の前を右折した俺達は、突き当たりにある培養室に飛び込んだ。

 ここはキョウコが行くのを嫌がっていた部屋だ。

「なんとか突破出来たね・・・」

 息を切らしながらヒカリは言った。

「あーやべ・・・そのまま出口に行けばよかった・・・」

「あ・・・」

 肩で息をするケンジが入ってきたドアを見て悔しそうにする。そこで俺も痛恨のミスに気づき声を漏らした。

 全員の様子を見るに、みんな勢いに乗り過ぎてしまっていて誰も気づかなかったようだ。

「ああ・・・!培養室に来てしまった・・・!」

 キョウコだけ完全にベクトルの違うことにショックを受けていた。

「・・・あ、でもここ何にもいないや。じゃあ、大丈夫だ。」

 しかし、一瞬で素に戻る。

 他の部屋よりやや広めの培養室には、円筒形をしていたであろう培養容器のガラス片と、容器が載っていた台座が奥の壁に沿って四基並んでいた。

「いや、てゆーか、あの包丁女やり過ごせてたじゃねーか。」

 先程の包丁女の様子を思い出し、誰に向けるでもない文句を吐いた。

「結果オーライです。」

 キョウコがドヤ顔で親指を立てる。

「ドヤ顔すんな。指へし折るぞ。」

 標的のない筈だった文句の矛先が一瞬にしてキョウコの方を向く。

「よし、もっかい捨て身の突撃行くぞ。」

 今度こそ出口へ向かうべくケンジは指示を出した。

「その前になんか武器になりそうな物を探そう。」

 しかし、俺はその指示に対し提案で返した。

「確かにそうだけど、この部屋にあるか?」

 納得したケンジだったが、荒れた部屋を見回し難しい顔をする。

「やりようによっては色々ありますよ?私は持ってますが。」

 そう言ってキョウコはマチェットを抜き、刀身を見せつける。

「キョウコちゃんの言う通り。はい、これケンジの分。」

 ヒカリはキョウコの言葉を肯定すると、ケンジに細長いガラス片の端に布を巻いた即席ナイフを手渡した。

「お、おう・・・こんな事、どこで覚えた?」

 受け取ったナイフと、自分の即席ナイフを持つヒカリを交互に見ながらケンジが聞く。

「海外の刑務所に関するドキュメント番組だけど?」

 確かに海外の刑務所では、囚人が脱獄や囚人同士の喧嘩のためにこういった即席武器を作る事例が数多くある。

「意外なのを見るんだな。・・・俺はこれでいいや。」

 雰囲気的に話題のドラマやバラエティを見てそうなヒカリのギャップに感心しながら、俺は床に転がる消火器を拾い上げた。

「それじゃ行くか。もう一度突撃するぞ。」

 全員の準備完了を確認したケンジは、再び声を掛ける。それに応じ態勢を整えるべく部屋の中央に集合する俺達。

 ガタン。

 突然、天井板が外れクリーチャーが扉の前に降ってきた。

「キシャアアア!」

 クリーチャーは甲高い声で威嚇をしながら、こちらにゆっくりと這い寄ってくる。

「おい、マジか・・・」

 硬直するケンジの口からうんざりしたような声が漏れる。

「・・・らぁっ!!」

 その横で俺は怒声とともに手に持っていた消火器をクリーチャーに投げつけた。

「ギャアアア!」

 左肩付近に消火器の直撃を食らったクリーチャーは、仰向けになり奇声を上げながらのたうち回る。

「行くぞ!」

 それを見た俺は、ケンジの背中を叩き指示を出す。

「ああ!」

 我に返り硬直の解けたケンジが返事とともに駆け出し、それをきっかけに全員がスタートを切る。そして、俺達はまだのたうち回っているクリーチャーを踏みつけるように乗り越え培養室を飛び出した。

「あ・・・!」

 廊下に出ると先程薙ぎ倒した包丁女がフラフラとこちらに向かって来ており、それを見たヒカリが声を上げる。

「無視しろ!」

 ケンジが単刀直入に言い放ち、俺達は包丁女の前を速度を落とすことなく素通りし、上の階へと続く扉を開け階段を一段飛ばしで一気に駆け上がる。

「もうすぐだ・・・!」

 近づく階段上の扉を見て、息を切らしながら俺は呟いた。

 ようやく帰れる。このまま街に出て飯を食うか。もちろんケンジの奢りで・・・

 俺は完全に帰宅モードに入っていた。

 そして、階段を登りきるとホールに繋がる扉を開ける。

「おぅ・・・!」

 ケンジが声を上げた。

 理由は簡単だ。俺達の向かうべきホールの先の玄関前に、モンスターが逞しい両腕を広げて待ち構えている。

 俺が先程まで考えていた素敵な夕食計画が音を立てて崩壊する。

「クソッ!マジか!」

 そして、帰宅モードが強制解除になったことにより、俺は怒りのこもった声を上げる。

「散れ!」

 そして、ケンジが咄嗟に飛ばした号令で、ホールに到達した俺達は流れるように散らばった。

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