タローの冒険
夏といえば夏休み!
夏休みといえば冒険だッ!
照りつける日差しが僕の体を貫こうとする。あぁ、暑ちい──ッ‼︎‼︎
二〇二三年八月五日、夏。
僕は蝉の鳴き声だけが響くしずかな田舎道を、帽子をかぶって手ぶらで冒険に出かけた。
「ふん、ふん、ふーん……」
鼻歌を歌いながら、僕はあてもなく道を進んだ。行ったことのない道を歩く。まさに未知の道だ。うっしっし……我ながら面白い。ああきっと、もしこの場に姉ちゃんがいたら、「くだらない事言ってんじゃないよ!」って突っ込まれそうだなあ。
嘘ついてごめんよ。だけどね姉ちゃん、この道は下り坂なんだ。
下った先はアスファルトで舗装された道。僕はがっぽがっぽと胸を張って、腕を大きく振って歩いた。いざゆけ進め! がっはっはー!
……と、ふと足下を見ると、道の端から端へ蟻の行列が横切っていた。
「こんな所にいたら車に轢かれるぞー」
と、この哀れな虫たちに余計な心配をしてみる。蟻ってなんでこんな小さいんだろう。
よく見ると僕の足が蟻んこをぶちぶちと踏み潰していた。
「……くそ。こんな所にいるお前たちが悪いんだ!」
悪態をついて僕は先へと進んでいく。足の裏になにかがついた気がした。
「ふん、ふん、ふーん……おや?」
鼻歌を歌いながらしばらく歩いていると
、水がサラサラと流れていく音が聞こえてきた。うん、きっとこの近くに川があるんだ。
「かわ……、川か……そっか川だ!」
僕は駆け足で音のする方へ走った。
「おおぉ……!」
見つけた川は幅三メートルくらいの細い川だった。
水溜りを見たら飛び込むを信条にしている僕は、迷わず川へと飛び込んだ。
“ドッポン!“
「冷てぇー!!」
水を浴びて体温が一気にぐっと下がった。めっちゃ気持ちいい。鼻に水が入った。
──と、そのとき僕は、川の中で光る何かを見つけた。
(あ、もしや……)
僕は水に顔を突っ込んで光ったものを探した。なんだかプールの授業とかを思い出す。
「ぷはぁ!」
だけど結局見つかったのは、よくわからない金属の破片だった。
「ちぇ……いや、よし」
だけど僕はあきらめない。
僕は第二回川中宝探しを決行することにしたのだ。
よ~し、いっちょ探してみっか!
そして結構な時間、何かないかと探してみた僕。だけれど、結局見つかったのはよくわからないぶよぶよしたものと、銀色のスプーンだけだった。ちぇ、つまんね~……。
僕はもうちょっと奥の方に行って何かないか探してみようかと思ったけど、なんだかウンコがしたくなってきたのでやーめた。
なんだけどトイレが近くにあるわけもなく草むらでするしかなった。クソ暑い中クソをしにクソむら……じゃなかった草むらの中に行くのは、ほんと地獄に行くほうが楽なんじゃないかとさえ思えた。
どうせならキンキンに冷えたトイレが良かったなぁ⋯⋯
まさに冷凍トイレ。
逆さから読んでもレイトウトイレ。うっしっし……
きっと姉ちゃんが聞いたら「しょうもないこと言ってんじゃないよ!」って張っ倒してきそうだ。だけどね姉ちゃん、するのは小じゃなくて大のほうなんだ。
「ん……よし」
スッキリしたところで僕は先に進む。がっぽがっぽと進む。道中さっき見つけたぶよぶよを蹴りながら、あてもなくぶらぶらと歩いた。
「ふん、ふん、ふーん……あ、そうだ! 夏といえば肝試しだよなぁ」
思いつきで行動するなと姉ちゃんから言われていた僕だが、僕はそれを個性と呼ぶことにしていた。
そして僕はあの墓地へと進路を変えた。
なんとなく避けていたあの墓地。怖くて行けなかったあの墓地。
墓地には誰もいなかった。僕はここに一度来たことがある。あれはちょうど三年前だ。
ぶらぶらと見て回る。墓石に触ってみる。ひんやりして気持ちいい。
「幽霊が出たりして……」
そしたらちょっと嬉しいかも。……でもやっぱり嫌だな。幽霊って透けてるのかな? 足ってないのかな?
僕は一つのお墓の前で立ち止まった。
そこは先祖代々のお墓。
「……姉ちゃん」
姉ちゃんは川で溺れて死んだ。僕が駄々をこねたからだ。お祭りで買った光るスーパーボールを川に落としたのを拾ってとお願いして、そして運悪く溺れて死んだ。




