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【書籍化】意味がわかると怖いお話・解説付き  作者: 絢郷水沙


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次回予告

※意味怖ではありません。

 とある会議室に集まっていた十人の男達。

 それをビルの屋上から眺める一人の天使がいた。

「僕には、どうすることもできないのかな……」

 天使は薄いため息を吐き出した。

 そんな天使に、後ろから声をかける者がいた。

「どうしたんだよ。ため息ついちゃって」

「ああ、君か……」

 声の主は、悪魔だった。


 実はこの男たちは皆、明日死ぬ運命にあったのだ。男たちが出張のために乗る飛行機が海に墜落してしまうのだ。そして死んだ彼らが行く先は、地獄と決まっていたのだ。

「彼らの地獄行きをなんとかできないかなってさ」

「おいおい。本当どうしたんだよ。らしくないな。地獄行きが決まってるような奴は大抵現世で相当やらかしてるやつなんだぜ? なんでお前がなんとかしようとしてるんだよ」

 それはそうだった。普通なら容赦しない。だが天使は知っていた。彼らがインフラの整っていない小さな国に赴き、インフラの整備していたこと。その際に、自然を守ろうとする反対派の指導者を事故に見せかけて暗殺したこと。確かにそれは許されざる行為だ。だが、その一人の死により、反対派の力は急激に弱まり、結果インフラ整備は順調に進めることができた。今では以前とは比べものにならないほど豊かな生活が送れる国となっていた。事情を知らない多くの国民が彼らの功績を称えた。彼らは良いことをしたのだ。


 だからこそ多くの者を助けた彼らを何とかしてやれないか、と天使は考えていたのだった。

 そこで、その経緯を聞いた悪魔は、天使にこんな話を持ち掛けた。

「なあ天使よ。オレは今退屈なんだ。そこでだ。あそこにいる男たち、明日俺が地獄に連れていくことになってるんだがこうしようぜ。男たちがそれぞれ会議室を出るまでに、一人につき三回、あくびをさせることができたら、そいつを天国に連れて行ってやってもいいぜ」

「本当ですか!」

「ああ」

「本当の本当ですか?」

「ああ、本当だ」

 願ってもない申し出だった。

 天使はすぐに了承した。

「わかりました。それやりましょう」

「よし! 決まりだ。じゃあ三回目の欠伸をした瞬間に昇天だな!」

 悪魔は不適に笑った。


         ◆◆◆


 ――十数分後(じゅうすうふんご)、一人の男が三回目の欠伸をした。

「ふぁ~、……うっ!」

 男は苦しみもがくことなくこと切れ、体は静かに机に突(つ)っ伏(ぷ)した。

 それもそのはず、天使がそのように手を施(ほどこ)したからだ。それは苦しまずに逝かせてあげようという慈悲(じひ)よりも、周りの男たちに気づかれることを恐れたからだ。悪魔との約束は、男たちが会(・)議(・)室(・)を(・)出(・)る(・)ま(・)で(・)というものだった。

 死んだことが周囲に気づかれれば、当然、会議室を出る者も出てくるだろう。幸い、会議室で行われていたのは会議ではなく企画のプレゼンで、スクリーンが使われるために部屋の中は暗くされていた。

 この調子でいけば全員があの世に連れていけそうだ、そう天使は思った。

 それから十分(じゅっぷん)ほどが経ち、二人目三人目と死ぬものが出てきて、あと残り五人までとなった。まだ一度も欠伸をしていないのは、司会者とプレゼンターと社長の三人のみ。ほか二人にはリーチがかかっていた。

「いけるぞ……」

 そう思っていた矢先、天使の耳元で悪魔が囁(ささや)いた。

「おい天使、あいつ見てみろよ」

 悪魔が言うあいつとはプレゼンターだった。よく見るとプレゼンターは、プレゼンの中で動画を見せている間に、隠れて欠伸をしていたのだ。

「あ、お、おのれぇぇぇっ!」

 しくじった、と天使は内心後悔した。

 実は天使は彼らに欠伸を促そうと、酸素濃度をいじくっていたのだった。が、しかしそれが逆に、裏目に出てしまっていたのだった。

 プレゼンターに死なれれば、さすがの天使もごまかしきれない。

 社長がいる前では死んでも欠伸をこらえるだろう、と高(たか)をくくっていたがとんだ誤算だった。

「くそっ! 天使の私に殺意を抱かせるとは。なかなかやるぞ、あいつ」

 プレゼンターの残機はあと二つ。それまでに残り四人を殲滅(せんめつ)しなくてはならない。

 もはや天使は、自分が何者なのかも忘れ、残り四人を抹殺しようと暗躍しはじめた。

 そばで見ている悪魔も、なんだかおもしろくなってきたと心躍らせた。


 そうして天使は手始めに空調をいじくり、プレゼンターの周囲の酸素濃度を上昇させた。

 反対に気温の方は少し肌寒いと感じるほどに下げた。これにより少しは眠気も覚めるだろう。

 そうこうしていると、リーチのかかっていた二人が欠伸をしてリタイアをした。

「い、よしッ!」

 人の死にガッツポーズする天使。それを隣で嗤う悪魔。

 さあ、残るは三人! どうやってあくびをコントロールするのか!? 天使の手腕が試される。


 ――だがしかし、このとき天使に過去最大のピンチが訪れる。

「ん……あれ?」

 司会者が周囲の異変に気づいてしまったのだ。

 さあぁて、どうする天使ッ!

 果たして残る三人に欠伸をさせることはできるのか?

「アヒャヒャヒャヒャ! 見ろよあれ。司会者気づいちまったぞ」

「うるせぇ! ちょっと黙ってろ糞悪魔が」

 焦る天使に、ケタケタと嗤う悪魔。

 そんな状態で無事に天国へお連れすることができるのか? 天使の性格は元に戻るのか? 本当に本当、一体全体どうなってしまうんだあああぁぁぁぁ!!!!



 次回『社長だけ地獄に行く』お楽しみに。


【後書き】最近色々と忙しく、なかなか執筆が進みません。ネタはいくつかあるにはあるのですが、うーん……。

 今回は意味怖ではないですけど、更新に穴が空かないように載せてしまいました。

 小説家や漫画家さんって本当に凄いんだなって改めて思いましたね。

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― 新着の感想 ―
罪はあっても功績で打ち消したりしてもらえませんかね・・・ 1人殺すことによって万の命が救われるなら地獄は回避させてあげても
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