警告
その日人類は思い出した。あれは紛れもない警告だったのだと……。
それはある日のことだった。
いつも通りの日常がそこにあった。劇的な変化などなく、ありふれていて退屈で平凡な日常。
しかしそんな日常を破壊しに奴らはやってきた。
どこからやってきたのは、そんなのは誰にもわからなかった。奴らはどこからともなくやってきた。
見た目は一見すると可愛らしかった。大きさにして数十センチ。目はくりっと丸く、おさなげなその顔は天使のように、ほのかに笑っていた。
だがその中身は驚愕の事実を孕んでいた。
赤い体の奴らには四肢が無く、胴体と呼べばいいのかわからないそこには、無数と言ってもいいほどの卵が詰まっていた。
奴らは突然やってきた。だが、何かをするというわけではなかった。芋虫のようなその体では何も出来まい。
ただ奴らの数が半端ではなかった。数千、数万ではない。数億……いや数兆、あるいは数京を超えるかもしれない。もはや数えることに意味はないほどのそれが地上を支配した。
軽く握れば、奴らはいとも簡単に中身をまき散らして潰れた。しかしそんなことをしてはならない。なぜならその中身は卵だ。飛び出した卵は、瞬く間に膨らみ元の個体と同程度の大きさへと成長する。そしてあの優しい笑みを浮かべて、その場で上下に跳ねまわる。それしか奴らにできる動きがないのだろう。
何も出来ないひ弱な存在。だが圧倒的なまでの数でもって、この世界を確実に蹂躙していった。
我々人類にはどうすることもできなかった。過去にあれほど警告されていたのにも関わらず、誰一人として真剣に対処策を考えようとするものはいなかった。皆、冗談にしか思っていなかったのだろう。
――そんな事、起きるはずないと。
真面目に考えるなんて馬鹿げていると。
だが現に起きてしまっていた。
ある人間が怒りのあまり、それを手に取りかぶりついた。周りの人間が静止するのも構わず、大口を開けて噛みついた。奴らは悲鳴を上げることも表情を変えることもなく、ただただなす術もなく貪られた。
その後のことは見るに耐えなかった。
ゴクリと飲み込んだそれは瞬く間に腹の中で成長。そして――
“パンッ”
人間が破裂した。一瞬にして上半身が二つに裂かれた。そして中からは、無数の子孫とも呼べる同個体が飛び出してきた。当然ながら食べた人間は即死した。
後には血と臓物を撒き散らした人間の死体と、その血でより鮮やかな赤に彩られた奴らが残った。
人類はまもなく滅亡するだろう。警告を無視し続けた代償はあまりにも大きかった。一時期は皆、その歌を口ずさんでいたというのに。
しかし今はもう誰も歌うものはいない。
それは人類が既に滅亡してしまったからか、それとも……
どこからか、あの歌が聴こえてきた。
……らこ、たらこ、たっぷり、たらこ
たらこ、たらこ、たっぷり
たらこがやって来る……
警告動画 https://www.youtube.com/watch?v=CTQoV3WqFKA




