良いニュースと悪いニュース
刑事は眉をかきながら、深いため息を吐き出した。
「いいから吐けって」
面会室で刑事が対面するのは、一人の男。名はゴットリーブ。無造作に伸ばした顎髭、顔や体にあるいくつもの切傷や銃痕、色黒の肌に深く刻まれた皺という、そのいかにもな姿が、彼が極悪非道の人生を歩んできたことを如実に物語っていた。
彼は今現在、複数の罪状により終身刑を食らっている。
「俺の要求を飲め。話はそれからだ」
ゴットリーブは、決然と刑事をはねつける。刑事はまた溜息をついた。
「あれだろ、息子に会わせろってやつ」
「ああ、それ以外認めん」
ゴットリーブの要求は、自身の息子と面会させることだった。そこS国に死刑はなかった。ゆえに彼は死ぬことはないものの、外に出ることは一切許されていなかった。
そして刑事には、彼の持つ情報が今後の捜査でどうしても必要だった。
「そりゃあわかるよ。俺にだって息子がいるからな。会いたくなる気持ちは十分理解できる」
「だったら──」
「だがその当の本人が、会いたくねえっていってるんだよ」
「知ったことか。さっきも言ったが、それ以外で俺が情報を吐くことはない」
なおもゴットリーブは、譲らない。
「本当にお前は……」
両者の間にしばしの沈黙が続いた。
そして一歩も譲らない奴を睨み、刑事は立ち上がる。
「はぁー……また来るよ」
今日何度目かわからないため息を吐きながら、刑事は一旦諦めることにした。
◆◆◆
それから約二ヶ月後のことだった。
再び刑事は、ゴットリーブの所へとやってきた。
「久しぶりだな。どうした刑事さんよ、息子に会うように説得してくれたか?」
変に陽気な態度のゴットリーブに、刑事は、「ああ、それなんだがな」と、口端をあげ笑みを浮かべる。
「久しぶりに会うお前に土産を持ってきてやった」
刑事は告げる。
「良いニュースと悪いニュースがある」
「ほう……」
その言葉に、ゴットリーブは不敵に笑った。
「終身刑の今の俺に悪いニュースとはねえ……。じゃあその悪いニュースとやらから聞こうか」
なおも余裕の笑み浮かべるゴットリーブに、刑事は言った。
「悪いニュースは、お前──また息子と会えるぞ」
【解説】
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彼の息子が自発的に会いに来ることはない。だからこそ刑事に頼んでいたゴットリーブだったが、ではなぜ息子と会えるのか? そしてなぜそれが悪いニュースなのか? そう考えた時、一つの結論が出てくる。つまりゴットリーブの息子はなんらかの犯罪を犯し、父親同様に収監されることとなったのだった。
おかげさまで最初の投稿から一年経ちました。




