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【書籍化】意味がわかると怖いお話・解説付き  作者: 絢郷水沙


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水洗便所

 この間俺が事務所で一人残って残業していた時のことなんだけどさ。実は俺こう見えてもけっこうビビリで、そのとき事務所の中ぜんぶ電気つけてたんだよね。暗い隅(すみ)っことか何がいるかわかんなくて怖いじゃん。所長からは「節約しろ!」なんて言われてるけど、だったら俺一人に残業させるなってんだよな。

 そうそう、それでその時びっくりしたことがあってさ。みんなが帰ってから三十分くらい後かな、トイレ行ったんだよ。一人でこう小便器に向かって普通に用(よう)をたしてたんだよな。で、そん時はなんもなかったんだけど、トイレ出てデスクに戻ろうとした時、いきなり「ジャー」ってトイレから音がしたんだよ。え? ってなったよね。俺ほんとそういうのダメだからさ。でも調べないわけにはいかないじゃん。わざわざ掃除用具入れから箒(ほうき)取り出してさ、握りしめて行ったわけ。「出てこい!」って叫びながら電気のスイッチ押したのよ。そしたらどうだったと思う? それがさ──


 誰もいなかったんだよ。

 個室もちゃんと調べたよ。奥から順にさ。でも全部調べても誰もいなくて。俺もう怖くてさ。仕事残ってたけどもうその日は帰っちゃったよ。




 ──という話をさ、前に同僚に話したんだよ。そしたらそいつがいうには、それは霊でもなんでもないんだとか。なんでも自動で勝手に小便器から水が流れる仕様(しよう)になってるんだって。臭いや配管工(はいかんこう)のつまりを予防するためにそうなってるんだとさ。

 いやいやほんと、そういうのは先に言っといてくれよって話だよな。


【解説】

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 語り手は事務所中の電気をつけていたはず。当然トイレを出た後も、電気はつけっぱなしにしていたはずだが、戻った時には電気が消えていた。なぜ電気が消えていたのでしょうか? 誰かが電気を消した……?


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