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【書籍化】意味がわかると怖いお話・解説付き  作者: 絢郷水沙


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43/177

禁止

 

 今年、花子は太郎の子を産んだ。──そこに二人を邪魔する者はいなかった。


 半年前、次郎は太郎を殴った。──そのことに次郎は酷く悲しんだ。


 去年、太郎と花子は愛しあった。──次郎はその事実を知らなかった。


 六年前、次郎は太郎を殴った。──太郎は花子に甘えるようになった。


 十年前、太郎は花子を殴った。──そのことに花子は酷く悲しんだ。


 十八年前、太郎は花子を叩いた。──そのことに花子は嬉しくなった。


 二十四年前、太郎は花子を蹴った。──そのことに花子は微笑んだ。






【解説】

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 最後の二文に違和感を覚えたのではないでしょうか? 普通の感覚であれば、叩かれたり蹴られれば、怒ったり悲しんだりします。では花子は普通ではなかったのか?

 実はそうではなく、叩かれたり蹴られたりしても喜ぶ場面だったのです。真相は次のようになります。 


         ◇◇◇


 二十四年前、太郎を身ごもった花子は、太郎にお腹を蹴られた。そのことに花子は、自らの子が元気なんだと微笑んだ。


 十八年前、太郎は母を労い、彼女の肩を叩いた。──そのことに花子は息子の優しさを見て嬉しくなった。


 十年前、反抗期に入った太郎は過保護に接する花子を意味もなく殴った。──そのことに花子は、昔の優しかった息子を思い出し、酷く悲しんだ。


 六年前、父親である次郎はなんらかの理由により、太郎を殴って叱った。──怯える息子に花子はより甘やかすようになった。


 半年前、次郎は、自らの母親を孕ませた息子に怒り、彼を殴った。──信じ難いその事実に、次郎は酷く悲しんだ。


 つまり二人は親子だったのです。二人は禁忌を犯しました。それは近親相姦。


 そして冒頭の部分。


 今年、花子は太郎の子を産んだ。──そこに二(・)人(・)を(・)邪(・)魔(・)す(・)る(・)者(・)は(・)い(・)な(・)か(・)っ(・)た(・)。


 では父親である次郎は何処へ行ったのでしょう。





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