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断末魔の「ホーネット」

エンタープライズに続きホーネットにも航空雷撃が始まります。

「ホーネット」艦上 同時刻

「右舷距離500 敵機魚雷投下!」見張りが絶叫して報告する。

艦橋からも自艦が発する火災煙の間から横隊に広がり海面上すれすれを高速で接近してくるケイトが

黒い弾頭の魚雷を次々と投下し轟音とともにまっすぐに艦上をまたは艦首至近をパスしていくのが見えた。

飛行甲板上を飛び越えようする機などは手で掴めそうな位の距離である。そのうちのまだら模様の塗装と尾翼を赤く塗った派手な一機は中央席の風防を開けた搭乗員がこちらに向かって右手拳を大きく振り上げ何かを叫んでいるのがはっきりと見える。

何機かの日本軍機は艦上を越えると飛行甲板や逃げ惑う兵や艦橋に向かって旋回機銃を撃込んできた、

銃弾があちこちに着弾跳弾し人員を殺傷し機材を破壊していく。

既に敵の過剰とも言える急降下爆撃により十一発もの命中弾と自爆機の体当たりを受け艦容が大きく変わり航空母艦としての機能のあらかたを喪失した今、さらに魚雷を撃ち込んで止めを刺そうする敵の執拗さとそれに対して全くの無力である現状に艦長のマーク・A・ミッチャー大佐は悪夢の様な瞬間を迎えていた。

それでも「両舷停止面舵いっぱい!」と少しでも被雷を少なくするため命じるとともに「魚雷命中の衝撃に備えろ」と指示を出した。

この時「ホーネット」の右舷のキャットウォークやスポンソンにいた将兵達は横一列で物凄いスピードで突っ込んでくる敵雷撃機と投下された魚雷が小さな飛沫を残し海中に没した後、再び横並びに雷跡を曳きながら自分達に向かって来るのをあっけにとられ戦々恐々と見ていたが、誰かが発した「魚雷が当たるぞ!吹き飛ばされるぞ、危ないみんな逃げろ!」の言葉に上官の制止も聞かず我先に持ち場を離れ残骸と化した飛行甲板中央に走り出した。

敵機魚雷投下の見張員の報告から二十秒後、最初の魚雷がゆっくりと回頭を始めた右舷艦首付近に命中しその爆発の凄まじい衝撃が二万トンの艦体を震わせた。

続いて連続して右舷艦腹に次々と九一式改三型航空魚雷が40ノットの高速で舷側に施された2.5~4インチの装甲板に激突もしくは貫通しその衝撃により雷管を作動させ弾頭に充填された200㎏の炸裂火薬の爆発エネルギーを水中または艦内に放出した。

「ホーネット」の右舷に連続して吹き上がる魚雷命中の水柱はまるで串刺しされた魚の様だった」とその時の様子を真近で見ることになった「アトランタ」元乗組員は証言している。

最初の命中の衝撃から最後の六本目が右舷後部で炸裂するまで一分ほどしかなくほぼ同時に命中したと証言している者も多くまさに串刺しであった。

一本目の命中魚雷が右舷艦首で炸裂しその五秒後から三十秒後までに四本の魚雷が最初の命中箇所より50~100メートル後方の艦中央付近に連続して命中爆発した。

一本目は右舷艦首側から10mほどの喫水線下5mに命中しその衝撃により蒸気カタパルト用の配管が外れ高圧蒸気が噴出しそれにさらされた者達は瞬時に大火傷を負う惨事となった。

また艦中央部は魚雷防御のため三層の隔壁により仕切られていたが連続する四発の命中魚雷はいとも簡単にそれを食い破り、巨体を30ノット以上で航行させる12万馬力を生み出す合計4000KWを発する9基全てのボイラーと隣接する200KWのディーゼルタービン室付近を中心に炸裂し猛烈な爆発エネルギーを放出した。

これにより「ホーネット」の動力部周辺は一気に破壊し尽くされ重大な損傷を負うこととなった。

この致命傷とも言える中央部への連続した被雷を艦橋で体験することになった艦長のミッチャー大佐以下艦橋スタッフは、直下の艦内部からの地響きの様な魚雷命中の衝撃と艦橋のすぐ真横に立ち昇るキャットウオークや舷側の船体を引き千切りながら吹き上がる巨大な水柱の轟音とその水圧に圧倒され手摺に掴まり皆歯を食いしばり踏ん張るしかなかった。

しかし次の瞬間信じられない光景が彼らの目の前に映った。

なんと艦橋前部に設置されていた28㎜四連装機銃座二基がその銃座ごと回転しながら魚雷の水柱に跳ね上げられそこに配置されていたその要員をばら撒きながら空中に吹き上がっていくではないか。

人がぼろ切れの様に吹き飛んでいく光景に絶叫する者や神を呪う者と目を疑う光景である、空中高く吹き飛ばされた銃座は最高点に達すると重力により落下し一基は大音響のひしゃげた金属音を発しながら飛行甲板に叩きつけられ、もう一基は右舷側の海中に没した。

ミッチャー大佐はなんとか声を出さず済んだが、艦橋内の空気は一変しており周りを見渡とすと若い航海士が泣いている「しっかりしろ!」と声に出すが渇き切った喉からは声が出ていなかった、

そこに魚雷命中時の水柱が崩れてきて艦橋のなかは突然の濁流津波に飲み込まれた。

ミッチャー大佐は「オーマイガー!」早く終わりにしてくれと心の中で絶叫していた。

右舷に連続して命中した魚雷の巨大な水柱により艦橋前部の機銃座二基が吹き飛ばされた様に張出スポンソンも艦体から引き千切られ退避していなかった乗組員やそこに設置されていた機銃や各種機材もろとも空中高く噴き上げられた。

また飛行甲板に退避した者達も魚雷の連続命中による猛烈な衝撃により弾き飛ばされ先の爆撃による陥没した穴などに落下し残骸に叩きつけられる者やあらたに発生した重油燃料槽やガソリン庫の爆発に巻き込まれ火だるまになるなど艦上のどこにも安全な場所がない状況となっていた。

水面下でも相次ぐ魚雷の命中の衝撃によりボイラーが爆発し隣接する機械室や右舷側の二軸を回すディーゼルタービン室などが焼き尽くされ、さらに海水が逆流し水蒸気爆発を繰り返したあと海水に飲み込まれ海没する壮絶な地獄絵図が現出した。


牧大尉機 同時刻

牧機は魚雷投下後機体の浮き上がりを最小限に抑え込みながら機体を水平のまま右方向への横滑りを行い敵空母の艦首前方約100メートルほどの至近を突っ切た。

後席の石丸二飛は飛び越えると同時に、弾倉にあった先程の高松機を援護射撃した残弾を艦橋に向かって全て撃ちきった、出撃前に工夫し焼夷弾の比率を増やした弾丸は艦橋付近に着弾し盛大に火花を散らした。

彼は空になった弾倉を急いで交換しながら魚雷投下から二十秒後、そろそろかと注視していると敵空母がゆっくり回頭を始めているのが見え魚雷が外れたかと一瞬不安になったが、約1000メートル離れたあたりで突如敵空母の前部右舷に真っ白な大きな水柱が立ち上っていくのが見えた、そしてその水柱の動きが止まったあたりで今度は艦中央のちょうど艦橋付近から三、四本の同じく大きな水柱吹き上がって行くのが見えた。

「あっ 当たった! 命中 分隊士命中しました 魚雷が命中したぞー!」

連続して立ち上がる魚雷命中の水柱がスローモーションの様でいて想像を絶する光景にただただ驚くばかりであった。

牧大尉はいつも元気な石丸二飛のさらに明るい魚雷命中の報告を聞き流しながら、「一気にひっくり返れ」と念じながらも敵空母の状態を詳細に確認していたが、敵空母はヨークタウン級であるが巨大な煙突が崩れており見慣れた形とは若干違和感があることに今さら気がついた。

この魚雷攻撃により「ホーネット」の右舷喫水線下には全長50メートルにもおよぶ巨大破孔ができ、

発電室にも大量の海水の浸水を引き起こし全電源が停止した。

また頼みの応急電源も先の「エンタープライズ」同様に応急防御管制制御盤が魚雷命中の衝撃により故障し稼働出来なくなり消火栓や排水ポンプも動かせない状況となった。

短時間に片側六本被雷の影響は大きく艦の右舷への傾斜は急激に増し被雷五分後には25度にも達しこのままでは早期に転覆する危険が現実的となってきた。

連続六発もの魚雷命中の圧倒的な破壊力とその凄まじい衝撃を艦橋で目の当たりにしたマーク・A・ミッチャー艦長は艦橋内に流れ込んで込んだ油が混じったどす黒い海水にずぶ濡れになりながらも、応急指揮官のジョージ少佐を呼び出し全ての左舷側の注水タンクへの注水と燃料の左舷側への移動を緊急命令として命じた。

これに対してジョージ少佐は「現在手動にて可能な限り左舷側の注水タンクへの注水作業中でありますが、全く釣り合いが取れないため左舷の機関室、機械室にも注水の許可を頂きたい。

とにかく片側六本もの魚雷命中の破孔部分は設計時の被害想定を遥かに上回る大きさである上、頼みの動力ポンプが動かない状況では右舷の無傷の燃料を左舷に移動させる事も不可能であり現状では傾斜復旧の見込みはありません」としわ枯れた声で報告を行った。

これを受けてミッチャー艦長は決断を迫られる事になったが、結論を先に延ばしにして見込みの低い復旧作業を引き延ばし二次被害等によりいたずらに乗組員将兵を失うのは愚の骨頂であり、再起を図る為にもこの激しい戦いの経験者をこれ以上失う訳にはいかないとして遺憾であるが愛着ある「ホーネット」を放棄することを決定し総員退艦を命じた。

残るはヨークタウンですが一航艦にもついに・・・

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