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敵の雷撃機は速いぞ!

久しぶりの投稿です、自分でも前から読み返して書いています。

「ホーネット」に対しての対艦航空雷撃戦です。



いっぽう前方の敵空母を攻撃した牧大尉率いる第一中隊十二機は先攻の江草隊の急降下爆撃で爆弾11発の命中弾と自爆機1機の突入を受け煙突が倒壊し艦のシルエットが大きく変わる程の満身創痍で艦速も大きく低下しよろめく様に進んでいる「ホーネット」を目標に輪形陣への突撃を開始すべく高度を下げていく。

米軍の上空直援機はいまだ江草隊の零戦と空中戦を行っていたり、目の前で味方空母が激しく爆撃されるのを見て激昂し攻撃後の江草隊を必要以上に追尾したりと牧隊に対して組織的な迎撃を行える様な状況ではなかった。

米軍の輪形陣は「ホーネット」を中心に重巡二隻、軽巡一隻 駆逐艦四隻で構成されており、手傷を負った瀕死の母親を守る子供達の様に猛然と牧隊に対し対空射撃を浴びせてきた。

しかしこの時の輪形陣は名ばかりであり「ホーネット」がほとんど停止状態の為、周りの護衛艦は行足を止める訳にもいかず各艦とも艦長、航海長が細かな指示を出し各艦定位置占位に躍起になっていたが、場所によってはかなり間隔が大きく開いている部分も見られた。

牧大尉は素早く状況判断を行い敵空母右後方より突入を図るべく列機を引き連れ猛烈な対空砲火のなか全速の160ノットで突進していく。


敵雷撃機接近の警報にアトランタ艦長のサミュエル・P・ジェンキンズ大佐は戦闘指揮所に「対空戦闘!敵の雷撃機は速いぞ!今度は絶対に阻止しろと!」喝を入れ、輪形陣の隙間を見つけると「まずいぞ後ろを抜かれるぞ!」「取り舵いっぱいいそげ回頭後最大戦速!」と「ホーネット」と敵の間に自艦を割り込ませる様操船指示を出した。

ほぼ同時に同艦の主砲である38口径5インチMk12両用砲が敵機との射距離10,000メートルあたりからまだ艦が回頭中で傾斜が大きく照準精度も低いなか毎分15発の発射速度で激しく撃ち始めた。

ジェンキンズ艦長にも前後から主砲の連続した射撃音と衝撃が響き始め緊急回頭にともない大きく傾き迫る海面とその疾走感が気分を高揚させ「Japの野郎一機も帰さんぞ!」「全機叩き落せ!」と怒気を含んだ大声で吠えた。


「アトランタ」以外の護衛部隊の各艦も直前での投下された爆弾のうち外れて水柱を上げる数の方が少ない程の江草隊の急降下爆撃を防ぎきれなかった責任感と復讐心から「今度は絶対に阻止する」との強い意気込みでかなりの遠距離から射撃を開始した。

この激しい対空射撃は重い航空魚雷を抱えながら突入してくる牧隊には大きな脅威となり、牧大尉自身経験したことがない夥しい数の発射炎と至近に飛来する曳光弾と炸裂する砲弾に動揺したのか僚機に対して両舷雷撃の為に中隊を分離する指示を出し忘れてしまうほどの激しさであった。


しかし結果的にみればほとんど停止状態の敵空母に対して両舷雷撃の意味はあまりなく残存全機での右舷片側からの雷撃で一気に転覆を狙える形となり、副次としても対空火器の目標を分散させ雷撃隊の被害を抑える効果にもつながった。

いっぽう猛烈な対空射撃により牧隊長の判断を誤らせた立役者の「アトランタ」であったが、ジェンキンズ艦長が思い描いた「ホーネット」至近で緊急回頭し真横から正対して有効な阻止射撃を行う目論見は、想定以上の速力で突入してくる牧隊の十機近い横隊が「アトランタ」が占位するより早く同艦の左舷前方から鼻先至近を突きっていく形になってしまった。

これは珊瑚海戦時の教訓から九七式艦上攻撃機の雷撃速度は速いという話は米海軍内でも伝わっていたのだが、自軍のTBD「デバァステーター」雷撃機が100ノットだから早いという日本機でもせいぜい125~135ノット程度であろうと見積もっていたのだ。

実際日本軍機は各艦の砲術長の推定を遥かに上回る160ノットで雷撃を行う「第1射法」を基本戦法として航空雷撃を行っているのだ。

このため珊瑚海やミッドウェー海戦の航空雷撃戦では対空砲火の激しさの割に日本軍機の被害は少なっかたと言われている。

米国海軍の推定速度での照準では見越しが小さく射撃した銃弾は目標の日本軍雷撃機の後方に流れるか通過後に炸裂する場面が多く見られたのだ。

米軍戦史にも「日本機は驚くべことに、魚雷を抱いたまま180~200ノットの高速で接近してきた」と記述が残っている。

「アトランタ」ではこのため一秒間に80メートル位置が変わる高速の目標を至近距離から斜めに見越し射撃する形となり各銃砲座とも敵機に追随する旋回が間に合わず追い撃ち射撃をおこなうのが精一杯であった。

その様ななか牧隊の各機は最後の勇気をふり絞り、砲煙のなかきらきらと明滅させ射弾を撃ちあげてくる「アトランタ」の前方や艦上を横隊のまま一気に飛び越えるとさらに高度を下げ「ホーネット」に肉薄し魚雷投下の最終航程に入った。

だが米軍もあきらめず最後の抵抗を試みている。

ここまでまったく戦闘機による迎撃を受けていなかった牧隊であったが、ようやく艦隊上空に戻ってきたグラマンF4F戦闘機二機が味方艦艇からの同士討ちも恐れずに突っ込んでくると牧隊の編隊後方から取りつき射撃を始めたのだ。

彼らは上空直援機のうちのレオドナル中尉機とアダムス少尉機であった。

彼らは当初江草隊による急降下爆撃を迎撃すべく闘志満々発艦したが、江草隊の迎撃戦では逆に直援の蒼龍零戦隊に追い駆けまわされ多数の被撃墜破機を出し散々な目にあっており、レオドナル中尉機も零戦との真正面からの撃ち合いで被弾し中尉自身も左腕を負傷していた。

レオドナル中尉は前回は上から被せられた劣位戦でありそれ程零戦を強い敵とは認識しておらず、依然意気高く次こそ日本軍機を撃墜するべく同じく一時避退してきたアダムス少尉機と急造のペアを組み攻撃終了後の江草隊を待ち伏せする算段を立てていた。

しかし艦隊を大きく迂回しているところに断末魔の「ホーネット」の惨状と「敵雷撃機接近中 直援戦闘機は至急母艦右舷上空に戻れ」との指示を通信手段を失った「ホーネット」に代わり伝える味方艦艇から受け全力で引き返してきたのであった。

この時牧隊長機の最後席で機銃を構え後方上空を警戒していたのは石丸二飛であった。

敵艦隊の輪形陣の内側に入りここまで来ればもう敵戦闘機からの襲撃はないと気を緩め前方の敵空母の様子を見ようと振り返ろうした瞬間、「石丸!五時に敵機!注意しろ!」と偵察員席の浅野二飛曹が大声で叫んだ。

石丸二飛は素早く状況を確認し敵機はグラマン戦闘機二機で編隊右の一番外側の高松機に攻撃をかけようとしているところであった。牧隊は雷撃の最終航程であり各機とも直進飛行せねばならず回避の余地がない状態である。

石丸二飛が搭乗する牧機から敵機までは600メートル以上あり、かなり距離があるが少しでも威嚇になればと射撃を始めた。

7.7㎜旋回機銃は97発入りの弾倉が6個582発準備されておりこれで敵機を撃退しなくてはならないのだが、出撃前の銃弾装填で彼は独自の工夫を行っている。

ふつう機銃弾の配列は徹甲弾一、焼夷弾一、曳光弾一の割合で組み合わせるのだが焼夷弾を二としてより少ない弾数で敵機の炎上を狙った試みであった。

高松機と付近の機からも7.7㎜旋回機銃がいっせいに射たれているが、敵機はそれに臆することなく両翼から煙が流れ出し銃撃が始まった「当たるな避けろ!」と見ていると次の瞬間「あっ!」と思わず石丸二飛が声を上げた。

なんと高松機の腹下の魚雷がはずれて落下してしまい後方の海面に小さな飛沫を残し貴重な魚雷が海中に消えていったのだ。

敵機の銃弾が懸架装置を破壊したのかこのままでは撃墜されてしまうと高松一飛曹自ら投棄したのか不明だが敵戦闘機は脅威を排除する義務の一つを果たしたのだ。

この攻撃で高松機は相当の被弾数を数え左翼の燃料タンクにも被弾しガソリンが白い帯となって流れ出したが運よく発火せず離脱することに成功し帰艦しているがその時の状況は口にしていない。

いっぽうレオドナル中尉は帰還後の報告で、銃撃した敵機は穴だらけになり炎を発し墜落したと述べたが事実ではなかった。

もう目の前しか見えない牧大尉は敵戦闘機の攻撃が他機に及ぶ前に雷撃を成功させるべく、各機に対しさらに高度を下げる様指示し自身も10メートルをくぐる高度で水柱が立ち並び飛沫があがる海面を這う様に突入していく。

「目標 敵空母 敵速5ノット!」高度が下がりもはや周りの状況など目に入らないが、まだ生き残っている「ホーネット」からの対空砲火と周りの護衛艦艇からの銃撃が前後左右あらゆる角度から風防を覆う様に赤や黄色の派手なアイスキャンデーとなって向かってくる。

自機の発動機の轟音と振動の中でも至近をかすめる銃砲弾の轟音と至近で炸裂する砲弾の衝撃が物凄い。

距離1000 900 800接近するにつれ急降下爆撃により破壊された敵空母の艦上の様子が良く見え、こんな廃艦同然の空母に攻撃価値があるのか他艦を攻撃すべきだったか?と一瞬思うが魚雷発射角を調整しついに500メートルまで近づいた。

「魚雷 発射用意 撃っ!」自分で叫ぶと同時に投下レバーを引いた、同時に機体が軽くなるのを感じ雷撃成功を確信した。

列機も敵空母の至近まで接近し次々魚雷を投下して目の前の「ホーネット」の巨大な艦体を避ける様に艦首前方近くを低高度のまま飛び抜けてくる、中には一気に飛行甲板上空を突きってくる大胆な機もある。

八本の魚雷が「ホーネット」の右舷側の艦腹を目指し雷速40ノットで海中5メートルを驀進していく。

前回の「エンタープライズ」となるべく違う様に書こうと思うが

同じ感じになってしまった。

でもわずか一日の話がこんな物語になるなんて小説ってすごいかも。

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