07
俺はインターホンから男が消えてすぐ中洲座に電話した。
「おい! どうなってる!」
『な、なんのことですか? なにかありましたか?』
「俺の家にあいつが来やがった! どうなってるんだ!」
『あいつ? とりあえず、落ち着いてください。明日、会いましょう? その時に詳しく教えてください』
「後じゃ遅い! 今すぐ来い!」
困惑する中洲座を無視して、殴るように住所を叫んで電話を切った。
「それで……こんな夜中に何が? あと、玄関に靴落ちてましたけど」
中洲座が来たのは、電話してから一時間ほど過ぎた頃だった。
片手に持ったボロボロのトレッキングシューズを玄関に置く。
「それはお前にやる。それより詳しく説明してもらおうか」
「えっと、もう少し具体的に……」
「あのインターホンのやつだよ! それはあいつが置いてったもんだ! なんであの家を出たのに、同じことがここで起こるんだ!」
中洲座は目を見開き、口を手で覆う。
「まさか——起きたのですか? インターホンの怪異が」
「はぁ?」
「あぁ、あの現象の名前ですよ。まぁ私が勝手に付けたものですが」
「どうなってんだ。あの家を出たら平気なんじゃないのかよ」
「それはあくまで私の憶測なので……もしかしたら、ターゲットにされてしまったのかもしれません」
「じゃあなんだ? 俺はこの意味わかんねぇ現象にこれからずっと追いかけられるって?」
俺は中洲座の胸ぐらを掴む。持ち上げられた中洲座は、冷静な目で見下ろす。
「俺はてめぇのおもちゃじゃねぇんだ」
「当然、私も最善を尽くしてどうにかするよう協力します。まずは、生き残ることを考えましょう。感情に流されては、生き残れるものも生き残れません」
「チッ」
俺は中洲座を降ろす。軽く服を払った中洲座は、真剣な目を俺に向ける。
「まずは、今回の話から、起こることを予測しましょう」
「話?」
「えぇ、これまでと同じでしたら、話と同様の現象が貴方を殺しにくる筈です。どんな話だったか、お聞きしても?」
「あぁ」
俺は思い出しながら、話の内容を中洲座に伝えた。動転していたが、意外にも話の内容は頭に入っていた。
「なるほど、とりあえず夜に外に出ないのが一番、ですかね」
コツン、コツン。
外を歩く音が聞こえて来る。普段外を歩く人の音など聞こえたことない。
玄関と廊下を跨いでいるというのに、やけに大きな音。おおよそ普通の現象とは思えなかった。
「おや、お出ましですね」
「おい、どうすればいい」
「なにも。干渉してくる類いのものではないかと」
あくまで冷静な中洲座、次第に俺も落ち着いてくる。
「なぁ、そもそもあのインターホンのやつはなんなんだ」
「そうですね……あくまで私の見解ですが、呪いに似たものかと」
「呪い? 藁人形とか、そういうやつか?」
俺は携帯に掛かってきた電話を切りながら聞く。
「大体はその考えで合ってます。恐らくあれは、怪異に襲われた被害者の未練の集合体。だから誰かの未練を聞いても、消えることはない。逃れるには、完全に消し去るしかなさそうですね」
「んなこと可能なのか?」
「いえ……現実的ではないです。ただ、今付いている呪いをどうにかする方法に心当たりがあります」
中洲座がスマホでとある記事を見せてきた。
そこに書かれた見覚えのある名前に、思わず、俺は中洲座の顔を見る。




