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第5章:嵐の裏側の鋼鉄の閃光

#R15 #サイコスリラー #ヤンデレ #執着 #共依存 #マウンテン・スリラー #因果応報


外の嵐は依然として収まる気配を見せなかったが、テントの内部はそれ以上に息苦しい空気が漂っていた。朱里の足から流れる鮮血の匂いが、たった今開けたばかりのオイルサーディンの生臭さと混ざり合う。


僕は彼女に背を向けて座り、ポータブルガスコンロの火力を調整することに没頭していた。熱いコーヒーが飲みたかった。先ほどの佐藤のスマートフォンを巡る、僕の小さな「勝利」を祝いたかったのだ。


「江戸さん……喉が渇いた……」朱里が囁く。その声は極めて弱々しく、コンロの火が立てるシュという音に掻き消されそうだった。


「ちょっと待って、お前。まだお湯が沸いていないんだ」僕は振り向きもせずに答えた。


僕は落ち着いていた。僕の目には、朱里はただの翼――この場合は足だが――の折れた鳥にしか見えなかった。彼女が立ち上がることはおろか、攻撃してくることなどあり得ない。僕はスイスアーミーの折りたたみナイフを、食料バッグのすぐ隣のマットの上に置いた。彼女に残された気力の限界を試すための、意図的な油断だった。


スリーピングバッグの布が擦れる、微かな音が聞こえた。


ズル……ズル……。


僕は薄く微笑んだ。彼女が這っているのが分かる。薄いテントの床の上で体を擦り、ずれた足の骨が放つ激痛を想像することができた。しかし、僕は黙ったまま、コンロの青い炎に集中するふりを続けた。


「さあ……飲み物だよ……」プラスチックのカップを手に振り返りながら呟いた、その時だった。


ドスッ!


鋭く冷たい衝撃が、突如として僕の左肩を貫いた。


朱里は僕のナイフを使わなかった。彼女はもっと狡猾だった。ザックの側面に固定していた小型のピッケル(アイスアックス)を抜き取っていたのだ。純粋な憎悪に燃える瞳で、彼女はその鋭利な鋼鉄の先端を僕の首へと振り下ろした。しかし、震える手のせいで、その一撃は狙いを外れて肩に突き刺さった。


「死ね! 死ね、この化物!」朱里が叫んだ。その声は裏返り、ヒステリーと苦痛に満ちていた。


僕は後ろにのけぞり、崩れそうになるテントの壁に叩きつけられた。温かい血が肩から溢れ出し、高価な登山用ジャケットを濡らしていく。凄まじい痛みだったが、奇妙なことに、僕は……昂りを感じていた。


「ああ……朱里ちゃん」僕は傷ついた肩を抑えながら、低く呻いた。息を切らし、血に染まった両手でピッケルを握りしめたまま、力なく座り込んでいる彼女を見据える。


「どうして……どうして死なないのよ?!」朱里は再びピッケルを振り回そうとしたが、折れた足が激痛の波を送り、一撃が届く前に彼女は崩れ落ちた。


僕は死にゆく獲物と遊ぶ捕食者のように、ゆっくりと彼女に這い寄った。怒りなどなかった。むしろ、僕は乾いた、恐ろしい笑い声を漏らした。


「素晴らしいよ」弱り切った彼女の手から、一度の乱暴な動作でピッケルを取り上げながら言った。「まだ抗う意志があるなんて。それは君にまだ生気がある証拠だ。ますます君を離したくなくなったよ」


僕は彼女の顎を強く掴み、僕の肩の傷を無理やり見せつけた。


「これを見て、朱里。これは君がつけた傷跡だ。僕たちが永遠に結ばれているという、消えない印だよ。君は僕の血を流し、僕は子供の頃から君の血をこの手に持っている」


僕は先ほど使ったプルジックコードを取り出し、容赦なく彼女の両手をテントの最も頑丈な支柱に縛り付けた。彼女は今、折れた足を冷たい床に投げ出したまま、半吊りの状態に固定されていた。


「お願い……離して……痛い……」彼女はエネルギーを使い果たし、ただ懇願した。


「這いずり回る権利さえ、君は失ったんだよ、朱里」自分の指についた血を舐めとりながら、僕は囁いた。「君の『保護者』を攻撃しようとした報いだ。本当の無力さがどんなものか、今から教えてあげるよ」


僕はガスコンロを消した。完全な闇が僕たちを包み込み、嵐の音と、絶望し始めた朱里の啜り泣きだけが残った。


「明日は大キレットの頂上に着く」闇の中で、僕は冷酷に告げた。「そこで教えてあげるよ。犬神家の裏切り者として生きるより、死ぬ方がずっと甘美だということを」

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