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第11章:北海道の傷ついた狼

#R15 #サイコスリラー #ヤンデレ #執着 #共依存 #マウンテン・スリラー #因果応報


旭メンタルリハビリテーション施設 ― 北海道。


鋼鉄の網が張られた窓の向こうで、極地の風が咆哮していた。外には、凍てついた松の林と広大な流氷の海が広がるだけだ。ここは病院ではない。社会から「消された」者たちの墓場である。


影山海斗は隔離室の隅に座っていた。髪は伸び放題で、かつてのアスリートのような肉体は高用量の鎮静剤による食事制限で枯れ木のように痩せ細っている。しかし、もし誰かが彼の瞳を覗き込めば、そこに狂気など見出さないだろう。そこにあるのは、爆発の瞬間を待つ酸素のような、静かなる炭火だ。


「食事の時間だ、302番」太った看護師が、ドアの隙間からプラスチックのトレイを押し込みながら言った。


海斗は看護師が去るまで動かなかった。彼は硬いパンを手に取ると、枕の下から何かを取り出した。一ヶ月前、レクリエーション室から盗み出した小さな新聞の切り抜きだ。そこには一年前に撮られた江戸と朱里の婚礼写真があったが、海斗が凝視しているのは背景の細部だけだった。秋田にある屋敷の門に刻まれた、犬神家の家紋。


「どこに隠しているか分かったぞ、江戸」海斗が囁いた。その声は嗄れていたが、決意に満ちていた。


海斗はパンをすべて食べはしなかった。それどころか、彼は舌の下に隠し持っていた鎮静剤を吐き出した。神経を研ぎ澄ませておくために、あえて口内を傷つけ、その痛みで意識を保つ――。それは彼が自らの肉体を酷使して編み出した技術だった。


三ヶ月間、海斗は恐るべきルーチンを繰り返してきた。毎晩、毛布の下で、萎縮していく筋肉を痛みを伴う静的な運動スタティック・エクササイズで鍛え直していたのだ。彼は江戸への憎悪を燃料としていた。


コツ、コツ。


海斗は壁を叩いた。隣の独房には、完全に正気を失ってはいるが、古いセキュリティシステムのハッキング方法を覚えている元電気技師の老人がいた。


「じいさん……明日は吹雪でジェネレーターの清掃が行われる日だったな?」海斗が通気口に向かって囁く。


「ヒヒヒ……闇が来るぞ、若いの。六十秒間の完全なる暗闇がな」隣から掠れた声が返ってきた。


海斗は自分の手を見つめた。大キレットの断崖から転落した際の傷跡が、黒ずんで硬く残っている。彼は拳を握りしめ、爪が手のひらを傷つけるまで力を込めた。


「影山の血は……死ぬために流れるんじゃない」彼はその言葉を、悪魔への祈りのように唱えた。「この血は、お前を地獄へ引きずり出すために流れているんだ。犬神江戸」


計画は単純だが致命的だった。明日、ジェネレーターが切り替わる瞬間、彼は数ヶ月かけて研ぎ澄ませた鉄のスプーンを使い、弱まったマグネットロックをこじ開ける。そして北海道の殺人的な吹雪の中を駆け抜けるのだ。常人なら十分で死ぬだろう。しかし、海斗はアルピニストだ。これよりも過酷な極限の寒さに耐える訓練を積んできた。


銃火器など必要ない。ただ秋田に辿り着けばいい。


「待っていろ、朱里」黒い雲に覆われた月を見上げながら、彼は呟いた。「そして江戸……覚悟しておけ。槍ヶ岳の亡霊が、お前の命を刈り取りに行くぞ」


その夜、海斗は目を開けたまま眠りについた。脳内ではすでに脱出ルート、貨物列車の時刻表、そしてかつて自分を突き落としたあのピッケルで、江戸の首を掻き切る方法が描かれていた。

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