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小さなほころび
変化は、ほんの些細な形で現れた。
森での討伐中、素早い魔物と遭遇した時のことだった。これまでと同じように魔法を放ったユウトだったが、わずかに軌道がずれる。
「――ちっ」
直撃はしなかったものの、追撃で仕留めることはできた。問題はない、はずだった。
だが、その一瞬の遅れが別の場所で影響を及ぼす。側面から現れた別の魔物が、騎士の一人に襲いかかったのだ。
「ぐっ……!」
傷は深くはないが、明らかなミスだった。
ミリアがすぐに駆け寄り、治療を施す。
「大丈夫です、すぐ治しますから……」
その必死な声を聞きながら、ユウトは軽く息を吐いた。
「まあ、死んでないならいいでしょ」
その瞬間、空気が変わった。
騎士たちは何も言わない。だが、その沈黙には明確な温度があった。
ミリアは一瞬だけユウトを見たが、すぐに視線を逸らす。
ユウトは気づかないふりをした。
(たまたまだろ、こんなの)
そう思うことで、違和感を押し込める。
だが確実に――何かが、少しずつ狂い始めていた。




