初陣と過剰な力
勇者として召喚された翌日、ユウトはさっそく王都近郊の森へと派遣された。目的は“魔物討伐”。とはいえ、危険な任務ではないと説明されている。あくまで勇者の力を測るための“お披露目”のようなものだ。
同行するのは、王女付きの騎士団と、回復役として紹介された少女――ミリアだった。
「無理はしないでくださいね、勇者様」
柔らかな声でそう言うミリアに、ユウトは軽く手を振る。
「大丈夫だって。むしろ早く終わらせるから、ちゃんと見ててよ」
森に入ってすぐ、低級の魔物が姿を現した。狼のような姿に鋭い牙。普通の兵士なら数人がかりで対処する相手らしい。
だがユウトは、一歩も動かなかった。
「――《フレアバースト》」
軽く手をかざしただけで、爆発的な炎が魔物を飲み込む。断末魔すら上げる間もなく、影は消えた。
一瞬の静寂の後、後方からどよめきが起こる。
「い、今のが……詠唱なしで……?」
騎士の一人が呆然と呟く。ミリアも目を丸くしていた。
(うわ、マジで強すぎるだろこれ)
内心で笑いながら、ユウトは次々と現れる魔物を同じように焼き払っていく。剣を抜く必要すらない。ただスキルを使うだけで、戦いは終わる。
気づけば、森の一帯は完全に静まり返っていた。
「……これで全部?」
「は、はい……通常なら数日かかる討伐が、こんな短時間で……」
騎士団長が信じられないものを見るような目でユウトを見る。その視線が心地いい。
「だから言ったでしょ。余裕だって」
少しだけ誇らしげに言うと、周囲から感嘆の声が漏れた。
その中心にいる自分。称賛され、期待される存在。
――悪くない。
むしろ、かなりいい気分だった。
帰還後、王都ではすでに話が広まっていた。勇者が一人で魔物の群れを殲滅した、と。人々の視線は尊敬と憧れに満ちている。
「さすが勇者様です!」
「これで魔王軍にも勝てる!」
そんな声を浴びながら、ユウトは軽く手を振って応える。
(この世界、ちょろすぎないか?)
まだ誰も気づいていなかった。
その“余裕”が、どれほど危ういものかを。




