選ばれし勇者と拍手の音
目を開けた瞬間、ユウトの視界に広がっていたのは見知らぬ大広間だった。高い天井、赤い絨毯、そしてずらりと並ぶ甲冑の兵士たち。その中央で、自分は光の魔法陣の上に立っている。
「成功しました……勇者召喚は成功です!」
王女と名乗る少女の声が響いた瞬間、周囲が一斉にざわめき、やがて拍手が巻き起こった。まるで最初から自分が歓迎されることが決まっていたかのような空気。ユウトは一瞬戸惑いながらも、その熱気に飲み込まれていく。
「あなたが、この国を救う勇者様です」
差し出された手。整った顔立ち、真っ直ぐな瞳。――ああ、これは現実じゃない。けれど同時に、どこかで理解してしまった。これは“よくある展開”だと。
ステータスの確認を求められ、頭の中に浮かぶ文字を見た瞬間、ユウトの鼓動が跳ね上がる。
レベル:1
だが、全能力値は異常な数値を示していた。さらにスキル欄には見たこともない“伝説級”の文字が並んでいる。
「すごい……こんな数値、文献でも見たことがありません」
王女が息を呑む。周囲の兵士たちもざわついている。その視線がすべて、自分に集まっている。
――なんだよ、これ。
(俺、めちゃくちゃ当たり引いてないか?)
口元が自然と緩む。怖さよりも先に、妙な高揚感が込み上げてきた。
「安心してください、皆さん」
気づけば、そんな言葉が口から出ていた。
「俺が来たからには、魔王なんてすぐ倒せますよ」
一瞬の静寂。だが次の瞬間、さらに大きな歓声が広間を包み込んだ。
その中でユウトは、自分が“特別な存在”になったのだと確信する。
――この世界は、俺のために用意されたんだ。
その考えに、疑いを挟む余地はまだなかった。




