ミリア
その頃、王都では別の動きがあった。
「勇者の消息は?」
王女の問いに、騎士団長が答える。
「不明です」
沈黙。
「……そうですか」
表情は変わらない。だが、その瞳にはわずかな揺らぎがあった。
「代替勇者の準備を進めなさい」
冷静な判断。
だがその裏で、彼女は思う。
(あなたは、本当に終わったのですか……?)
旅の途中、ユウトは見覚えのある気配を感じる。
「……ミリア?」
振り向いた先に、彼女はいた。
以前よりも引き締まった表情。
「久しぶりですね」
淡々とした声。
だが、その目はしっかりとユウトを見ていた。
「……変わりましたね」
一言。
それは否定ではなかった。
ミリアは共闘を提案する。
「近くに強い魔物がいます。一緒に来ますか?」
試されているのは明白だった。
ユウトは頷く。
「ああ」
戦闘が始まる。
以前と同じような状況。
だが今回は違う。
「カレン、左抑えろ!リナ、後ろ!」
的確な指示。
連携。
そして――
勝利。
ミリアは静かに頷いた。
「……合格です」
戦闘後、ミリアは言う。
「でも、前と同じには戻りません」
その言葉は優しかったが、明確だった。
「分かってる」
ユウトも受け入れる。
過去は消えない。
だが――
「それでも、一緒に戦えるなら十分だ」
ミリアは少しだけ微笑んだ。
完全ではない。だが確実に、関係は前に進んでいた。
一方、森の奥。
かつてユウトを倒した存在が、静かに目を開く。
「……面白い」
配下が報告する。
「勇者、生存を確認」
「知っている」
薄く笑う。
「次はどうなるか、見せてもらおう」
その視線は、明確にユウトへ向いていた。
旅の中で、リナがぽつりと呟く。
「なんで私、ついてきたんだろうって思ってたんです」
ユウトは何も言わない。
「でも分かりました」
彼を見る。
「ちゃんと見てくれるからです」
その言葉に、ユウトは少し驚く。
「前は違ったんですか?」
「……ああ」
短く答える。
今は違う。
それが、何より大きかった。




