12/30
一歩
王都を離れてから数日。ユウトは街道を外れた荒野を一人で歩いていた。かつては騎士や仲間に囲まれていたはずの道も、今はただの静寂に包まれている。
魔物が現れる。低級の個体だ。以前なら意識すら向けなかった相手。しかしユウトは立ち止まり、剣を抜いた。
「……まずは、ここからだ」
魔法ではなく剣を選ぶ。それは単なる気分ではなかった。自分の戦い方が“雑だった”と理解したからだ。
魔物が飛びかかる。ユウトは一歩引き、タイミングを測る。そして――振る。
浅い。だが確かに当たった。
「……遅いな」
自分の動きに苛立つ。それでも、逃げない。
何度も斬り、何度も避け、ようやく仕留める。息が上がる。以前では考えられない疲労だった。
(こんな程度かよ、俺は)
だが同時に、初めて実感する。
“戦って勝った”という感覚を。
魔法で押し潰すのではなく、考え、動き、掴んだ勝利。
小さな一歩だった。
だがそれは、確かに“前に進んだ”証だった。




