表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
PR
4/7

04





「お、小川さんっ!」

「あ、ごめん!痛かった?」

「い、いえ」

「…だいじょーぶ?」

「…っ、ありがとう、ございます」





「なにが?」って顔しながら優しく微笑んでくれる小川さんに、救われる。

苦しくて、逃げ出したくて仕方なかったあの場所から、救い出してくれた。

理由も聞かないで、きっと訳わからないだろうに、ただ僕の表情見て救い出してくれた。





「…ほんとにデートしよっか?」

「、え?」

「ふふ。今日バイト休みでしょ?」

「そ、う、ですけど…小川さん勉強は…」

「息抜き息抜き」

「…ふふっ」





優しくて、暖かくて、心が満たされる感じがして。

確かにまだ、友哉のことは好き。

でも、以前よりは好きじゃない。でもやっぱりまだ会うのは辛いし苦しい。

でも小川さんといると、そんな考えがなくなってくる。

多分、小川さんのことは好き。でも、まだ友哉を少しでも好きな気持ちがある今は、この気持ちに気づかないことにする。

こんなに優しい人に対して、失礼なことはしたくない。

ちゃんと、自分の中でケジメをつけてから、心から好きになりたい。そう思ってる。






◇◆◇






小川さんに救い出してもらってから1ヶ月後のこと。

その間に、友哉とも晴人とも会うこともなく、連絡も取ることもなく、穏やかに過ごしてる。

放課後に、図書室で小川さんと勉強したり、バイトしたり。



あれから小川さんとは頻繁に連絡を取るようになった。

他愛もない会話から、息抜きのための買い物に付き合ったり、色々。

友哉のことは、少しづついい思い出にし始めてる。

3人でお揃いで買った物とか、写真とか、それらを処分は出来ないけど、思い出として押し入れの奥の方に仕舞い込んだ。





「ゆうきー」

「…伊織さん!」

「かえろー」

「はい」





小川さんとは、気づいたら名前で呼び合う仲になったけど、それだけ。

何かあるとかは、一切ない。ただの先輩と後輩の関係のまま。





「伊織さんは、S大行くんですよね?」

「うん、そう」

「難しそうですか?」

「どうだろなぁ。そこまで難関大ではないからいつも通り頑張ればいけると思う」

「そうなんですね」

「ゆうきもくる?」

「え?」

「ゆうきもくるなら、俺。頑張るよ」

「え?」

「…ねぇ、ゆうき」

「、はい」

「…好きだよ」

「っ…!」

「ふふ。気づかなかった?」

「は、い…」

「ふふっ。そっかぁ。俺、わかりやすく接してたんだけどなぁ」

「………っ」





待って。待って待って待って待って!

え、このタイミング?こんな…普通のタイミングで、告白って…されるの?

確かに、優しくしてくれたり、他の人に見せるような顔じゃない時もあったけど…でも…このタイミング?





「ゆうきは?」

「えっ?」

「ゆうきは、俺のこと好き?」

「ぇ、あ…、あの…」

「それとも、まだ幼馴染くんが、好き?」

「え?」





なんで、知ってるの…?

僕が彼のこと好きだって…。





「俺ね、ゆうきが入学してきた時からゆうきのこと知ってたんだよ」

「へ?」

「まぁ、一目惚れ?みたいな」

「う、そ…」

「ほんと。入学式の時、体育館裏の桜の木の前で泣いてたでしょ?」

「っ!」

「その時にたまたまゆうき見て、キレイな涙流す子だなぁって」

「………」

「それからずっと気になってた」

「伊織さん…、」

「で、コンビニでバイトしてたらゆうききて、運命じゃない?!なんて思っちゃって」

「………」

「そしたらなんか、緊張しちゃって。上手く話せなくて」

「………」

「だから最初、そっけなかったんだよね」

「…人見知り、じゃなかったんですか」

「ふふ。うん。人見知りじゃない。あれただの緊張」

「っ、ふふ」





ああ…好きだ。僕、伊織さんが好きだ。

屈託なく笑った顔が好きだ。

柔らかくて、優しい喋り方が好きだ。

どうしよう…好きが止まらない。





「ゆうきを目で追うようになってさ、ゆうきが、幼馴染くんのこと好きなのもわかっちゃってたんだよね」

「…はい」

「でもさ、好きの気持ち抑えること出来なくて。どうしたら俺のこと見てくれるか必死で」

「………」

「とりあえず仲良くなろうと思って、ゆうきと同じ曜日にバイト入れて、同じ時間に上がれるようにしたりして。もう必死」

「ふふっ、」

「少しずつ俺のこと意識してもらうようにして、幼馴染くんなんかより俺の方がいいよ!って必死で」

「………」

「そしたらさ、あの日…廊下で2人一緒のところ見ちゃって」

「………」

「もう、心臓がやばいくらいドクドクしてて。取られてたまるか!て思って声かけたら泣きそうな顔してて」

「っ……」

「もう、その顔見ちゃったら早く連れ出したくなってた」





そっか。あの時、そんな風に思ってくれてたんだ。

どうしよう…うれしい。





「…伊織さん」

「うん?」

「…っ、すきです」

「………」

「、確かに…彼のことが好きだったんです」

「、うん」

「子供の頃からずっと一緒で、自然の流れで好きになって」

「うん」

「でも、彼には他に好きな人がいて」

「うん」





苦しかった。辛かった。なんで僕じゃないのって何度も思った。

僕の方が好きなのに。僕の方がずっと近くにいたのに。

でも彼は、違う人を好きになった。

それはきっと、僕が彼を好きになるのと同じ理由で、彼のそばにはカレがいて。自然と好きになったんだと思う。


こんな思いするならもう恋なんかしたくない。好きな人なんか作りたくないって思った。

でも、伊織さんと接してると、心が穏やかになるし、伊織さんの声聞いてると、安心するようになって。

ああ…好きなんだなって。でも、彼のことも吹っ切れてないのに告白なんか出来ないし、しちゃいけないと思ってた。





「っ、でも」

「うん?」

「…でも、伊織さんと話してると、こうやって顔を合わせてると…好きの気持ちが大きくなっていって」

「…うん」

「っ、好きっ、なんです」

「うん」

「いおり、さんがっ…すきです…っ」

「うん…うん。ありがと、優樹」

「ひっ、ぅ…」

「俺も、大好きだよ」





ただ、優しく抱きしめてくれる伊織さんがそこにいて、僕は泣くしか出来なくて。

ああ…暖かい。伊織さんの腕の中は落ち着く。暖かい。しあわせ。





「ゆうき」

「っ…?」

「ちゅーしよっか?」

「っ、!」





伊織さんとする、初めてのキスは、とても優しくて穏やかで、ただただしあわせだと感じるキスだった。





評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ