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「ねぇ、斎藤くん」

「はい?」

「俺、バイト辞めるじゃん?」

「はい」

「でも同じ学校じゃん?」

「そうですね」

「学校でもさ、会ったりしよーよ」

「え?」

「なんか、せっかく仲良くなれたのに、このまま会えなくなるのって寂しいじゃん?」

「……」

「ね?だからさ、学校でもお話ししよーね?」

「…はい」

「ふふ、やった」





どうしよう…なんか…すごくドキドキしてる。

もう誰かを好きになるものか、なんて思ってたのに。

でも小川さんと過ごしていて、実はとても接しやすくて、優しくて、頼りにもなるし。

好きになるな、好きになったらダメだと思えば思うほど気になって、一言言葉を交わすたびにドキッとしたり、屈託なく笑う顔が可愛いなと思ったり。

もうそれは好きなんじゃないか、認めた方がいいんじゃないかと思いながら、でもどこかでやっぱり好きになったらダメだと思ってる自分もいて。





◇◆◇





夏休みも終わって、二学期の始業式。

2人に会うの嫌だなと思う気持ちと、小川さんに会えるかなの気持ちが半々。

2人に会ったら、どう話したらいいのかわからない。

まだ、彼のことは好きだ。でも、前よりかは落ち着いてきてる。

それもきっと、小川さんのおかげ。

小川さんと話したり、ご飯行ったり、一緒にバイトしたりして、彼のことを考えることが少なくなったおかげ。





「優樹!」

「…友哉」





会いたくないな、なんて思ってたのがいけなかったのか、彼に出くわしてしまった。

どんな顔して会えばいい?どんな声で喋ればいい?





「お前、なんで連絡全然よこさねぇんだよ」

「…ごめん」

「晴人も心配してたぞ」

「…ごめん」





ああ…会いたくなかったな…。

苦しいのは嫌だ。顔も見たくない。声も聞きたくない。君の口からカレの名前すら聞きたくないのに。どうして会っちゃったんだろう…。逃げ出したい。ここにいたくない。嫌だ、苦しい。





「晴人もすげぇ心配してたんだぞ?」

「…うん」

「連絡しても返事こねぇし、家行ってもいねぇし」

「うん…」





顔見たくなくて、声聞きたくなくて、下向いて、耳すら塞ぎたくて。

晴人がどうとか、僕には関係ない。いいじゃん。2人で仲良くしてれば。僕なんか関係ないじゃん。

もう放っておいてよ。苦しいよ。泣きたくないのに泣きそうになるんだよ。お願いだから、僕を惨めな思いにさせないでよ。





「なぁ、聞いてる?」

「っ、うん。ごめん」

「謝ってほしいわけじゃねぇけどさ…」

「…ごめん」





お願いだから、もう放っておいて。

逃げ出したいって思いに蝕まれてたら、後ろから聞き覚えのある声が聞こえてきた。





「斎藤くん?」

「っ…!」

「……?」





小川さんだ…小川さんがいる…。

声のする方に向いたらやっぱり小川さんがいて、「どうしたの?」て顔でこっちを見てた。

やばい…泣きそう…。





「…だいじょーぶ?」

「、だいじょ、ぶです」

「…そう?」

「っ、はい」





小川さんの顔見たら、小川さんの声聞いたら、苦しい気持ちが落ち着いた。

ああ…どうしよう…友哉がいるのに、小川さんに会えたよろこびが勝ってきてる。





「…優樹、誰?」

「ぁ、えっと…」

「…斎藤くんのお友達です」

「…そうっすか」

「君は?だれ?」

「…優樹の幼馴染です」

「へぇ。幼馴染にしては冷たい態度取ってるね?」

「は?」





顔は笑ってるのに、目が笑ってない小川さん。

初めて会った時のような顔してる。

いや、その時よりもちょっと怖いオーラ出てる…?





「もういいかな?」

「は?」

「斎藤くん、これから俺とデートだから」

「は?デート?」

「そ。だから、もういいよね?よし、斎藤くん、行こー」

「ぁ、え…」

「ちょっ、おい!」





小川さんがそういうと、僕の腕を掴んで歩き出した。

後ろでは、友哉が叫んでる声がこだましていた。





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